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N1.ブラインドライフ
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「やぁ気がついたかい?」
聞きなれない声、優しい老人、男性の声だ。
ここはどこだ?自分は今、横たわっているようだ。おそらくベットの上だろう、感触に覚えがある。
「えーっと、僕は……あぁぁぁうわあああ!」
あの記憶が蘇る。何故か目を開けられない。手探りで調べると、どうやら頭は包帯でグルグル巻きにされ、目を開けることは不可能なようだ。
誰かに腕を掴まれ、すると、発狂した僕の右腕に痛みが走った。
おそらく鎮静剤か何かだろう。すこし落ち着いた。
すると、静かな環境音が聞こえてくる。なんだかモーターの回る音のようだ。
「あの、ここはどこですか?」
「ここはね、うーんと、病院みたいなところさ」
「なんか曖昧ですね」
一連の流れに体が過敏になっているのか、彼の台詞に不安を覚えた。
「でも安心してくれ、君を保護するような施設だからさ」
顔が見えないと、ここまで不安になるものなのか。
「あの、僕の目は……どうなりましたか?」
「私からは何とも言えない。ただの監視役だからね」
僕は拉致されたのか?それとも人体実験とか?
「これからどうすればいいんだろう……」
「……気分転換に外には出たくはないかね」
「嫌です」
「そうかい……まぁそうだろう」
なんだか残念そうな声だ。
「自己紹介がまだだったね、私の名は赤田 等だ。君の面倒を見ることになっている。よろしく」
「僕は音目 京介です。あの、ありがとうございます。監視でもなんでも、誰かいてくれて」
赤田さんは少し微笑んだ気がした。
「……僕、目を見られたくありませんだから外にはあまり行きたくないです」
「そうだねー、包帯を取るわけにはいかないし……」
「髪でも伸ばします?」
「ははっ、良いかもいれないね」
少しは赤田さんと打ち解けたかもしれない。
その後、目の見えない僕は、赤田さんに連れられて、トイレの行き方、風呂はどこか、一応冷蔵庫はどこかなど、色々なことを知った。
どうやら病院ではなさそうな雰囲気。人の気配が無い。
いつの間にか、頭の中から青羽 なのという人間の名前は消えていた。
就寝後、布団の中で誰にも気づかれないように、散々醜く泣いた。お陰で包帯は濡れてしまったが。
「僕は……もう、目が見えないんだ……」
次の日の朝、包帯を交換してもらい朝食をいただいた。パンとかなら簡単に食べれる気がする。厄介なのは箸だ。
以外とむずかしいのだ。いや、難しいに決まってる。
基本的にベットの上から動かない生活になりそうだ。
朝の鳥の囀りは心地よいものだ。これほど視覚以外の感覚を使ったことは人生でも無いだろう。
たぶん、朝日とか綺麗なんだろうな。
「オトメ君、公園にでも行ってみないかい?」
赤田さんは、ベットの上の僕に訊く。
「えっと、えーっと、行きたくないで……」
すると、僕の手に何か触れた。人肌より冷たく、四角く平べったい何か。これは……音楽プレーヤーだ。
「ある人からのプレゼントだ。是非使って欲しいとのことだから使うといい。それを付けていれば、人目もあんまり
気にならないだろ?」
「確かに……」
これがあれば、多少……気が紛れるかもしれない。
僕は早速イヤホンを付けて、手探りで操作を開始した。
どうやら僕の好きな曲ばかりで、何故、これをくれた人は僕の嗜好を知っているのか、気になる。
聞き入っていると、肩を叩かれた。それに反応し片耳からイヤホンを外す。
「公園、行ってみるかい?」
「……はい」
持ってきた、という僕の私服に着替えさせてもらい、音量全開で外を歩く、赤田さんの右手を僕の左手は離さない。
これだけが僕の命綱だ。
赤田さんの手は、ゴツゴツしていて、頼りになりそうだ。たぶん体も大きいだろう。
ヒトメガキニナル……
僕の精神状態は少しずつおかしくなっていくのがわかった。
今歩いてる道は何色をしている?いや、そうじゃない。身内はこのことをしっているのか?
というか、身内、誰だっけ?
疑問に思うこともなく、公園に着いたらしい。すると、イヤホンを外された。
「空気美味いだろう」
「はい」
「あの部屋にずっといて、その、気分は悪くないかい?」
「そ、そんなことはありません!ぜんぜん!」
「君は優しいな」
「いや、そうじゃなくて、ただ、ほぼ初対面なだけなんで」
「そうかい……気を使わせて悪いね」
そう言いながら、お互い笑っていた。
すこしだけだけど、赤田さんとの距離が縮まった気がする。
「ハッハッハ、そこまで人に物が言えたら元気だな」
「そうっすね……!」
その瞬間だけは、周りが気にならなかった。
未来に希望は無いが、安心を少し手に入れた。と思う。
聞きなれない声、優しい老人、男性の声だ。
ここはどこだ?自分は今、横たわっているようだ。おそらくベットの上だろう、感触に覚えがある。
「えーっと、僕は……あぁぁぁうわあああ!」
あの記憶が蘇る。何故か目を開けられない。手探りで調べると、どうやら頭は包帯でグルグル巻きにされ、目を開けることは不可能なようだ。
誰かに腕を掴まれ、すると、発狂した僕の右腕に痛みが走った。
おそらく鎮静剤か何かだろう。すこし落ち着いた。
すると、静かな環境音が聞こえてくる。なんだかモーターの回る音のようだ。
「あの、ここはどこですか?」
「ここはね、うーんと、病院みたいなところさ」
「なんか曖昧ですね」
一連の流れに体が過敏になっているのか、彼の台詞に不安を覚えた。
「でも安心してくれ、君を保護するような施設だからさ」
顔が見えないと、ここまで不安になるものなのか。
「あの、僕の目は……どうなりましたか?」
「私からは何とも言えない。ただの監視役だからね」
僕は拉致されたのか?それとも人体実験とか?
「これからどうすればいいんだろう……」
「……気分転換に外には出たくはないかね」
「嫌です」
「そうかい……まぁそうだろう」
なんだか残念そうな声だ。
「自己紹介がまだだったね、私の名は赤田 等だ。君の面倒を見ることになっている。よろしく」
「僕は音目 京介です。あの、ありがとうございます。監視でもなんでも、誰かいてくれて」
赤田さんは少し微笑んだ気がした。
「……僕、目を見られたくありませんだから外にはあまり行きたくないです」
「そうだねー、包帯を取るわけにはいかないし……」
「髪でも伸ばします?」
「ははっ、良いかもいれないね」
少しは赤田さんと打ち解けたかもしれない。
その後、目の見えない僕は、赤田さんに連れられて、トイレの行き方、風呂はどこか、一応冷蔵庫はどこかなど、色々なことを知った。
どうやら病院ではなさそうな雰囲気。人の気配が無い。
いつの間にか、頭の中から青羽 なのという人間の名前は消えていた。
就寝後、布団の中で誰にも気づかれないように、散々醜く泣いた。お陰で包帯は濡れてしまったが。
「僕は……もう、目が見えないんだ……」
次の日の朝、包帯を交換してもらい朝食をいただいた。パンとかなら簡単に食べれる気がする。厄介なのは箸だ。
以外とむずかしいのだ。いや、難しいに決まってる。
基本的にベットの上から動かない生活になりそうだ。
朝の鳥の囀りは心地よいものだ。これほど視覚以外の感覚を使ったことは人生でも無いだろう。
たぶん、朝日とか綺麗なんだろうな。
「オトメ君、公園にでも行ってみないかい?」
赤田さんは、ベットの上の僕に訊く。
「えっと、えーっと、行きたくないで……」
すると、僕の手に何か触れた。人肌より冷たく、四角く平べったい何か。これは……音楽プレーヤーだ。
「ある人からのプレゼントだ。是非使って欲しいとのことだから使うといい。それを付けていれば、人目もあんまり
気にならないだろ?」
「確かに……」
これがあれば、多少……気が紛れるかもしれない。
僕は早速イヤホンを付けて、手探りで操作を開始した。
どうやら僕の好きな曲ばかりで、何故、これをくれた人は僕の嗜好を知っているのか、気になる。
聞き入っていると、肩を叩かれた。それに反応し片耳からイヤホンを外す。
「公園、行ってみるかい?」
「……はい」
持ってきた、という僕の私服に着替えさせてもらい、音量全開で外を歩く、赤田さんの右手を僕の左手は離さない。
これだけが僕の命綱だ。
赤田さんの手は、ゴツゴツしていて、頼りになりそうだ。たぶん体も大きいだろう。
ヒトメガキニナル……
僕の精神状態は少しずつおかしくなっていくのがわかった。
今歩いてる道は何色をしている?いや、そうじゃない。身内はこのことをしっているのか?
というか、身内、誰だっけ?
疑問に思うこともなく、公園に着いたらしい。すると、イヤホンを外された。
「空気美味いだろう」
「はい」
「あの部屋にずっといて、その、気分は悪くないかい?」
「そ、そんなことはありません!ぜんぜん!」
「君は優しいな」
「いや、そうじゃなくて、ただ、ほぼ初対面なだけなんで」
「そうかい……気を使わせて悪いね」
そう言いながら、お互い笑っていた。
すこしだけだけど、赤田さんとの距離が縮まった気がする。
「ハッハッハ、そこまで人に物が言えたら元気だな」
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その瞬間だけは、周りが気にならなかった。
未来に希望は無いが、安心を少し手に入れた。と思う。
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