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カルと使い魔
カルの名において
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「みなさん、用意はいいですね?では始め!」
実践術学の先生の合図で召喚魔法の呪文が教室を飛び交う。
カルも自らの杖を握りしめ、呪文を唱え始めた。
「インカウンター・バインド・カントゥラークト!」
呪文とともに杖を振るが、魔法は発動しない。
呪文時間がずれたかな…。もう一回…
その時だった。
「やりましたわ!」
聞き慣れた長女の声が響いた。そのよく響く声にクラスメイトの視線が一気に集まる。
「ミレーナさんお見事です。一度で召喚できるなんてさすがですね。宣誓の儀式に移ってください」
「はい!」
宣誓の儀式とは、召喚した者を使い魔として従えさせるものだ。誓いの言葉を向き合って唱え、その後に使い魔となる者が主人となる者の手の甲に敬愛のキスをすることで成立する。この儀式を行うことで使い魔と主人は見えない契りで繋がれるのだ。契りは使い魔が勝手に魔力を使ったり、反抗したりしないようにするためのもので、契りの強さは主人の持つ魔力に相応する。
ミレーナに向き合っているのは金髪に青い瞳、長身の執事エルフであった。確かにミレーナには相応しいかもしれない。
私がよそ見をしているうちに一人、また一人と召喚を成功させていく。
「私だって…インカウンター・バインド・カントゥラークト!」
集中して呪文を唱えるも、一向に魔法は発動しない。
何十回目かの呪文を唱えようとした時、「そこまで」という先生の声が響いた。周りを見渡すと私以外は皆、隣に使い魔を連れていた。
自然と集まってくる哀れみの目に、思わず泣きそうになる。
その後、先生が何かの説明をしていたが、私の耳には入らず、ただひたすら羞恥と悔し涙をこらえていた。
実践術学が終わり、私は一人実践室に残っていた。
呆然と自分の杖を見つめる。
「…っ」
唇を噛み締めた。出てきそうになったため息を深呼吸に変えて吐き出す。目を閉じて全神経を集中させる。
ゆっくり目を開け、杖を強く握りなおし、もう一度深く息を吸った。その息を、
「インカウンター・バインド・カントゥラークト!」
3.20秒の言葉に託した。
その瞬間、目の前に眩しい光が現れた。そしてその光はある形を作り出し、強く輝いて消えた。
「え…」
光の消えた後、白髪に対照的な黒の翼を広げた青年が、澄んだ青い瞳でカルを見つめていた。
綺麗な瞳…幼気はあるけど…かっこいいかも…
「お前が俺を召喚したご主人様となる人?うわっ弱そ!俺がっかり」
見とれていたカルに、それとは不釣合いな声が投げかけられた。そしてその言葉は短気なカルを怒らせるには十分すぎるものだった。
「何よあんた!喧嘩売ってんの?!私が弱い?!あんたなんかに言われたくないわよ!」
「へぇ~。本当は?」
「うっ…」
「しかも使い魔として呪文を唱えてしまったんだから俺が死ぬまで別の使い魔召喚はできないぜ?」
「それくらいわかってるわよ!ほら!宣誓の儀式!」
顔が火照っているのがわかる。怒っているからなのか、気恥ずかしさからなのか、はたまた使い魔を召喚できた嬉しさからなのか。多分全部だろう。
「あんた名前は?」
「ハクガ」
少しだけ緊張する。理想の使い魔とはかけ離れていたがとりあえず今日からこいつとパートナーだ。
「でもお前と契りで繋がれたってあまり意味ないと思うぜ?魔力少ないお前に比べ、俺は上級属とされてる悪魔だし、反抗しようと思えばいつでも…」
「形だけでもいいから!」
ハクガの声を遮って叫んだ。
「はいはい」
呆れたというようにハクガは私の向かいに立った。ただでさえ身長の低い私は自然とハクガを見上げる格好となる。
「カルの名において、ハクガを使い魔とし、共に行動することを誓う。そしてハクガは私の使い魔として従うことを誓う。チェング・リ・バースト」
唱え終わるとハクガがそっと私の手の甲にキスをした。
「なんでお前なんかの使い魔に…」
ハクガの小さな呟きは聞かなかったことにしよう。
「もうすぐ次の授業始まっちゃう!次は…歴史だ!教室戻らなきゃ!」
私は急いで教材を集めた。
「ハクガはとりあえず目障りだから私の影の中、に…」
使い魔が必要でない時間は自分の影の中に眠らせておくことができる。それをハクガに伝えようとした時、視界が歪んだ。声を出す間もなく、私の体は無抵抗に倒れていく。
「おいおいまじかよ!」
しかし体が床に打ち付けられることはなかった。ハクガに支えられたのだ。
「お前本当に魔力少ないんだな。さっきの召喚と儀式に自分の持つ魔力、使い果たしてしまうとか…」
私はそれを聞いて安心した。私は魔力が少ないだけだという事実を肯定してくれたのだ。逆に言うなら魔力がないというのを否定してくれたのだ。
「応急処置だ。ちょっと痛いが我慢しろ」
ハクガが言い終わると同時に首筋にカッターの刃を当てられたような微かな痛みが走った。そして何かが体に流れ込み、いつもの力が戻ってくる。
「これで大丈夫か?」
「うん…って、何したの?」
「ん?首筋に噛み付いて俺の魔力をおすそ分けしてあげました。ったく、魔力が少ないとか面倒だな」
…他に方法はなかったのか?恥ずかしいことこの上ない。
そう言いたかったが救ってくれた相手に文句は言えない。
「とりあえずありがと。だから私の影の中で眠ってて」
「全然お礼を言われた気しねーよ。棒読みだし」
私が丁寧にお礼を言ったのに、ハクガはあろうことか文句を零した。そして何か腑に落ちないという顔をして私の影の中へ消えていった。
使い魔召喚がうまくいき、授業終わりに落ち込んでいたのは何処へやら、私は軽い足取りで教室へ向かっていた。
「カル発見!どうかしら?私の使い魔のクレナよ!かっこいいでしょ!カルの使い魔も見せて?あっ、カルは召喚できなかったんだったわね。ごめんねぇ」
途中でとんでもない壁にぶつかってしまった。自分の使い魔を見せびらかすように横に連れて歩いているミレーナが教室への道を塞いできたのだ。
「もうすぐチャイム鳴るしどいて、邪魔」
いつも通りの対応で切り抜けようとした。しかし今のミレーナは何かが違った。
「クレナ~この子が私に向かって暴言吐いたぁ。ひどい、ひどいわ。どうにかしてちょうだい!」
「はい、ミレーナ様」
その瞬間クレナが呪文を唱え始めた。同時に魔法陣を手で空に描き出す。
あの呪文と魔法陣は…火属性の攻撃魔法?!
「嘘でしょ!」
私はとっさに発動時間を計算で叩き出した。そしてその計算結果を信じ、発動と同時に安全な位置へ避ける。魔法によって生み出された炎は私の真横を通り過ぎ、壁へ当たった。学校の壁は強い結界魔法で守られている。そのため炎が当たった場所には焦げ跡すら付いていない。でも、
「何すんのよ!危ないじゃない!」
「ミレーナ様の命令です」
「クレナ頑張って!カルは魔法が使えないから複数魔法でやっちゃえ!」
複数魔法。それはまずい。
複数魔法とは同時に幾つかの魔法を発動させて攻撃するものだ。さっきのように計算によって避けることはできない。
戸惑う私を嘲笑うかのようにクレナの右手は魔法陣を描いていく。
諦めて綺麗に形作られた魔法陣を見つめた。
クレナが呪文の韻を結ぶ。
迫り来る火の玉を成すすべもなく眺め、心の底で少しだけ怖いと感じた。
一度湧いてしまった恐怖心は消えることを知らず、それに押しつぶされるように目を閉じた。
「カル!なんで俺を呼び出さないんだよ!」
「え…?」
目の前にハクガが立っていた。そしてハクガの手先には防御魔法の魔法陣があった。
「お前は俺のご主人だろうが!なんで守れと命令しないんだよ!まあ命令されなくてもこうして出てきてしまったわけだが」
「…てた」
「は?」
「ハクガの存在を忘れてた!」
「はあああああああ?!」
恐怖心と必死さでそれどころじゃなかったのだ。でも本音を言うなら…いや、やめておこう。これを言ったらハクガの機嫌がいい方向に倒れるか悪い方向に倒れるか分からない。
「カル…?」
意識がハクガの方に飛んでしまっていたため脳内から消えかけていた美少女の声が聞こえた。しかしその声に先ほどの威勢はない。
「その悪魔はあなたの…」
「使い魔よ!」
胸を張って言ってやった。これでミレーナも見直して…
「あはははは!」
「え?」
「カルに使い魔?冗談やめてよ!カルには魔力がないんだから無理…」
ミレーナの声は途中で途切れた。
一瞬のことだった。
ミレーナが笑い、罵倒の言葉を投げている最中でハクガは見たこともないような攻撃魔法を発動し、クレナを壁に叩きつけたのだ。そしてミレーナへの距離を縮めると、首元をつかんだ。
「カルに魔力がないだって?ざけんじゃねぇぞ!現に俺はあいつの使い魔だ!確かにお前は他人よりも魔力があって優秀かもしれない。だけどな、他人を馬鹿にしていい権限なんてねぇんだよ!」
ミレーナの表情はここから見えない。
「んじゃ、お説教ついでに」
「ミレーナ様に何をする!」
よほどの衝撃だったのか、クレナが痛々しそうに起き上がった。そして魔法陣を描き出す。
「ハクガ!」
「うん。こいつの魔力は確かに強いな」
私の声が届いたからか、自ら察してなのかは分からないが、ハクガは口元を拭う動作をしながら立ち上がった。そしてどこからともなく青いダイヤの結晶を出現させ、握り壊した。するとその結晶と成り変わるように見たことのない攻撃魔法の魔法陣が展開された。
魔法陣を描く時間が短縮され、魔法が発動されたのはほぼ同時だった。
クレナの魔法陣からは炎の渦が、ハクガの魔法陣からは水龍が襲いかかった。
しかし炎の渦は水龍に飲み込まれ消失した。そのまま水龍はクレナを直撃し、消え去った。
後に残ったのは体を傷だらけにしたクレナと、そのクレナに寄り添って泣くミレーナの姿だった。
実践術学の先生の合図で召喚魔法の呪文が教室を飛び交う。
カルも自らの杖を握りしめ、呪文を唱え始めた。
「インカウンター・バインド・カントゥラークト!」
呪文とともに杖を振るが、魔法は発動しない。
呪文時間がずれたかな…。もう一回…
その時だった。
「やりましたわ!」
聞き慣れた長女の声が響いた。そのよく響く声にクラスメイトの視線が一気に集まる。
「ミレーナさんお見事です。一度で召喚できるなんてさすがですね。宣誓の儀式に移ってください」
「はい!」
宣誓の儀式とは、召喚した者を使い魔として従えさせるものだ。誓いの言葉を向き合って唱え、その後に使い魔となる者が主人となる者の手の甲に敬愛のキスをすることで成立する。この儀式を行うことで使い魔と主人は見えない契りで繋がれるのだ。契りは使い魔が勝手に魔力を使ったり、反抗したりしないようにするためのもので、契りの強さは主人の持つ魔力に相応する。
ミレーナに向き合っているのは金髪に青い瞳、長身の執事エルフであった。確かにミレーナには相応しいかもしれない。
私がよそ見をしているうちに一人、また一人と召喚を成功させていく。
「私だって…インカウンター・バインド・カントゥラークト!」
集中して呪文を唱えるも、一向に魔法は発動しない。
何十回目かの呪文を唱えようとした時、「そこまで」という先生の声が響いた。周りを見渡すと私以外は皆、隣に使い魔を連れていた。
自然と集まってくる哀れみの目に、思わず泣きそうになる。
その後、先生が何かの説明をしていたが、私の耳には入らず、ただひたすら羞恥と悔し涙をこらえていた。
実践術学が終わり、私は一人実践室に残っていた。
呆然と自分の杖を見つめる。
「…っ」
唇を噛み締めた。出てきそうになったため息を深呼吸に変えて吐き出す。目を閉じて全神経を集中させる。
ゆっくり目を開け、杖を強く握りなおし、もう一度深く息を吸った。その息を、
「インカウンター・バインド・カントゥラークト!」
3.20秒の言葉に託した。
その瞬間、目の前に眩しい光が現れた。そしてその光はある形を作り出し、強く輝いて消えた。
「え…」
光の消えた後、白髪に対照的な黒の翼を広げた青年が、澄んだ青い瞳でカルを見つめていた。
綺麗な瞳…幼気はあるけど…かっこいいかも…
「お前が俺を召喚したご主人様となる人?うわっ弱そ!俺がっかり」
見とれていたカルに、それとは不釣合いな声が投げかけられた。そしてその言葉は短気なカルを怒らせるには十分すぎるものだった。
「何よあんた!喧嘩売ってんの?!私が弱い?!あんたなんかに言われたくないわよ!」
「へぇ~。本当は?」
「うっ…」
「しかも使い魔として呪文を唱えてしまったんだから俺が死ぬまで別の使い魔召喚はできないぜ?」
「それくらいわかってるわよ!ほら!宣誓の儀式!」
顔が火照っているのがわかる。怒っているからなのか、気恥ずかしさからなのか、はたまた使い魔を召喚できた嬉しさからなのか。多分全部だろう。
「あんた名前は?」
「ハクガ」
少しだけ緊張する。理想の使い魔とはかけ離れていたがとりあえず今日からこいつとパートナーだ。
「でもお前と契りで繋がれたってあまり意味ないと思うぜ?魔力少ないお前に比べ、俺は上級属とされてる悪魔だし、反抗しようと思えばいつでも…」
「形だけでもいいから!」
ハクガの声を遮って叫んだ。
「はいはい」
呆れたというようにハクガは私の向かいに立った。ただでさえ身長の低い私は自然とハクガを見上げる格好となる。
「カルの名において、ハクガを使い魔とし、共に行動することを誓う。そしてハクガは私の使い魔として従うことを誓う。チェング・リ・バースト」
唱え終わるとハクガがそっと私の手の甲にキスをした。
「なんでお前なんかの使い魔に…」
ハクガの小さな呟きは聞かなかったことにしよう。
「もうすぐ次の授業始まっちゃう!次は…歴史だ!教室戻らなきゃ!」
私は急いで教材を集めた。
「ハクガはとりあえず目障りだから私の影の中、に…」
使い魔が必要でない時間は自分の影の中に眠らせておくことができる。それをハクガに伝えようとした時、視界が歪んだ。声を出す間もなく、私の体は無抵抗に倒れていく。
「おいおいまじかよ!」
しかし体が床に打ち付けられることはなかった。ハクガに支えられたのだ。
「お前本当に魔力少ないんだな。さっきの召喚と儀式に自分の持つ魔力、使い果たしてしまうとか…」
私はそれを聞いて安心した。私は魔力が少ないだけだという事実を肯定してくれたのだ。逆に言うなら魔力がないというのを否定してくれたのだ。
「応急処置だ。ちょっと痛いが我慢しろ」
ハクガが言い終わると同時に首筋にカッターの刃を当てられたような微かな痛みが走った。そして何かが体に流れ込み、いつもの力が戻ってくる。
「これで大丈夫か?」
「うん…って、何したの?」
「ん?首筋に噛み付いて俺の魔力をおすそ分けしてあげました。ったく、魔力が少ないとか面倒だな」
…他に方法はなかったのか?恥ずかしいことこの上ない。
そう言いたかったが救ってくれた相手に文句は言えない。
「とりあえずありがと。だから私の影の中で眠ってて」
「全然お礼を言われた気しねーよ。棒読みだし」
私が丁寧にお礼を言ったのに、ハクガはあろうことか文句を零した。そして何か腑に落ちないという顔をして私の影の中へ消えていった。
使い魔召喚がうまくいき、授業終わりに落ち込んでいたのは何処へやら、私は軽い足取りで教室へ向かっていた。
「カル発見!どうかしら?私の使い魔のクレナよ!かっこいいでしょ!カルの使い魔も見せて?あっ、カルは召喚できなかったんだったわね。ごめんねぇ」
途中でとんでもない壁にぶつかってしまった。自分の使い魔を見せびらかすように横に連れて歩いているミレーナが教室への道を塞いできたのだ。
「もうすぐチャイム鳴るしどいて、邪魔」
いつも通りの対応で切り抜けようとした。しかし今のミレーナは何かが違った。
「クレナ~この子が私に向かって暴言吐いたぁ。ひどい、ひどいわ。どうにかしてちょうだい!」
「はい、ミレーナ様」
その瞬間クレナが呪文を唱え始めた。同時に魔法陣を手で空に描き出す。
あの呪文と魔法陣は…火属性の攻撃魔法?!
「嘘でしょ!」
私はとっさに発動時間を計算で叩き出した。そしてその計算結果を信じ、発動と同時に安全な位置へ避ける。魔法によって生み出された炎は私の真横を通り過ぎ、壁へ当たった。学校の壁は強い結界魔法で守られている。そのため炎が当たった場所には焦げ跡すら付いていない。でも、
「何すんのよ!危ないじゃない!」
「ミレーナ様の命令です」
「クレナ頑張って!カルは魔法が使えないから複数魔法でやっちゃえ!」
複数魔法。それはまずい。
複数魔法とは同時に幾つかの魔法を発動させて攻撃するものだ。さっきのように計算によって避けることはできない。
戸惑う私を嘲笑うかのようにクレナの右手は魔法陣を描いていく。
諦めて綺麗に形作られた魔法陣を見つめた。
クレナが呪文の韻を結ぶ。
迫り来る火の玉を成すすべもなく眺め、心の底で少しだけ怖いと感じた。
一度湧いてしまった恐怖心は消えることを知らず、それに押しつぶされるように目を閉じた。
「カル!なんで俺を呼び出さないんだよ!」
「え…?」
目の前にハクガが立っていた。そしてハクガの手先には防御魔法の魔法陣があった。
「お前は俺のご主人だろうが!なんで守れと命令しないんだよ!まあ命令されなくてもこうして出てきてしまったわけだが」
「…てた」
「は?」
「ハクガの存在を忘れてた!」
「はあああああああ?!」
恐怖心と必死さでそれどころじゃなかったのだ。でも本音を言うなら…いや、やめておこう。これを言ったらハクガの機嫌がいい方向に倒れるか悪い方向に倒れるか分からない。
「カル…?」
意識がハクガの方に飛んでしまっていたため脳内から消えかけていた美少女の声が聞こえた。しかしその声に先ほどの威勢はない。
「その悪魔はあなたの…」
「使い魔よ!」
胸を張って言ってやった。これでミレーナも見直して…
「あはははは!」
「え?」
「カルに使い魔?冗談やめてよ!カルには魔力がないんだから無理…」
ミレーナの声は途中で途切れた。
一瞬のことだった。
ミレーナが笑い、罵倒の言葉を投げている最中でハクガは見たこともないような攻撃魔法を発動し、クレナを壁に叩きつけたのだ。そしてミレーナへの距離を縮めると、首元をつかんだ。
「カルに魔力がないだって?ざけんじゃねぇぞ!現に俺はあいつの使い魔だ!確かにお前は他人よりも魔力があって優秀かもしれない。だけどな、他人を馬鹿にしていい権限なんてねぇんだよ!」
ミレーナの表情はここから見えない。
「んじゃ、お説教ついでに」
「ミレーナ様に何をする!」
よほどの衝撃だったのか、クレナが痛々しそうに起き上がった。そして魔法陣を描き出す。
「ハクガ!」
「うん。こいつの魔力は確かに強いな」
私の声が届いたからか、自ら察してなのかは分からないが、ハクガは口元を拭う動作をしながら立ち上がった。そしてどこからともなく青いダイヤの結晶を出現させ、握り壊した。するとその結晶と成り変わるように見たことのない攻撃魔法の魔法陣が展開された。
魔法陣を描く時間が短縮され、魔法が発動されたのはほぼ同時だった。
クレナの魔法陣からは炎の渦が、ハクガの魔法陣からは水龍が襲いかかった。
しかし炎の渦は水龍に飲み込まれ消失した。そのまま水龍はクレナを直撃し、消え去った。
後に残ったのは体を傷だらけにしたクレナと、そのクレナに寄り添って泣くミレーナの姿だった。
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