出来損ないの召喚魔法

ウツ。

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カルと使い魔

優等生の弱点

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「あなたたちは自分のしたことがわかっているのですか?!」

先生の怒声が鳴り響く。
私とミレーナはお察しの通り、お説教を受けていた。
時間は少し遡る。



戦いが終わった時、私たちは周りの状況に気がついた。
私とミレーナが会ったのは休み時間の終わり頃、つまり戦闘になったのは授業中である。
先生たちが何度か注意してきたらしいのだが…正直、記憶にない。
そして先生たちが最終手段として魔法で止めに入ろうとしたらしいが相手が生徒だったため、怪我をさせてしまう可能性からできず、戦闘が終わるのを待ったらしい。
その結果、私たちは先生や生徒の注目を集めた中、指導室へと連れて行かれたのである。
クレナは重症なものの、命に別状はないということなので治療室へ搬送。
そして今ここには半泣きのミレーナ、私、そしてハクガがいる。

「だいたい、使い魔に対して抽象的な命令はダメだと授業で教えたでしょう!」
現在、怒号の矛先はミレーナのクレナに対して下した命令「どうにかしてちょうだい」という台詞に向けられている。
私たちは指導室へ連れて行かれたのち、先生に魔法で戦闘までの記憶を読み取られ、順を追ってお説教されている。もちろん嘘、言い訳は通用しない。
「あやうくクレナはカルを殺してしまうところだったんですよ?!あなたは優勝な生徒だったのに、残念です」
うなだれるミレーナ。私はそれを見て心の中で嘲笑を浮かべた。自業自得だ。
私は戦闘を仕掛けられた側だから怒号の矛先が向くことはないだろう。
「カル、あなたが使い魔を召喚できたのは意外でした。偶然か奇跡か…」
「必然です」
「ハクガ…?」
私に述べた先生の言葉を遮るようにハクガが口を開いた。ハクガの瞳は澄んだ青色をしていた。
「先生までカルには魔力がないと思っていたんですか?もしかしてそうやってカルを特別視して見捨ててきたんじゃないですか?この世界には魔力が現れるのに時間がかかる人もいるんです。だったらそれを促すような助けをしてあげるのが先生というものじゃないんですか?それを勝手にできないからといって軽視し、放置するのはおかしいと思います」
指導室の視線は全てハクガに集まっていた。
「…その通りですね。しかし…」
まだ何かあるのか、とハクガが顔をしかめるのがわかった。
「カルはまだその魔力を使いこなせていない。または…あなたがカルの少ない魔力を殺してしまっているのでは?」
「う…」
「どういうこと?ハクガ」
ハクガを見上げると、先ほどの表情は何処へやら、とてつもなく気まずそうな顔をしていた。
「カルの使い魔であるハクガは悪魔族。悪魔族は魔界の中では二番目に強いとされる種族。だからハクガ自身の魔力がカルの魔力を上回ってしまっている。つまり、カルの今の魔力がハクガの魔力にかき消されてしまっている状態になっている。このままだとハクガが何かの拍子で暴走でもしたら、カル、あなたには止めることができないどころか、最悪、殺されてしまうかもしれないのです。現にハクガはあなたの命令なしに影から出てきてしまっているでしょう」
再び私がハクガを見やると、いつの間にか隅で小さくなっていた。
「ハクガ、別にそんなに気にしなくて…」
「俺悪くないもん…カルの魔力が少ないからだもん…」
さっきの威勢はなんだったのか。とりあえず一発ビンタをかましてやった。

そのことに関して怒られたのは言うまでもない。



   **************



その後、ハクガを影の中へ眠らせ、ミレーナとともに教室へと戻った。
ちょうど休み時間だったため、ミレーナの周りには心配をした友達が集まっていた。
私にはそんなクラスメイトはおらず、聞こえてくるのは私を名指しして話される使い魔のことだった。しかし恐怖心からか疎ましさからか、誰一人私に声をかけてくる人はいなかった。



   **************



今日もあの戦闘以降いつもと変わらぬ日だった。
強いて言うなら周りの視線が変わった気がする。良くか悪くかはわからないが。
そして私は今じぶんの部屋でハクガと対峙していた。
「いい?これからはちゃんと私の命令で行動してよね!」
「えー…。っていうかお前ちゃんと命令しないじゃん。俺が自分で動いた方が…」
「カルううううううう!」
ハクガと言い合いになりかけたその時、部屋の外から私の名を呼ぶ聞きたくない声が聞こえた。走る足音は間違いなくここに向かっている。
そういえば鍵をしていなかったなと思い、私が扉へ向かった瞬間、当の扉が勢いよく開け放たれた。
「ミレーナどうしたの。扉がかわいそうじゃん」
「扉?!それよりも私の心配してよ!」
「なんで私があんたの心配なんか…。用事がないならとっととお引き取りくださ…」
「魔法が発動しなくなっちゃったの!」
「は?」
思いもよらぬ発言に思考が追いつかなかった。ミレーナに限ってそんなことは…。
「あー…。それ多分俺のせいだ」
『え?』
私とミレーナは見事にシンクロした声をあげ、1秒のブレもなく同時にハクガを見た。
「あの戦闘の時、お前の魔力はすごそうだったから味見させてもらった」
そう言ってハクガはミレーナに近づき、あからさまに怯えるミレーナのお下げ髪を掻き上げた。
あらわになる白い首筋。そこに残る二つの点痕。これは私の首筋にもある…。
「魔力吸ったの?」
私の場合は送り込んだと言っていたが、味見といったところを見ると吸うことも可能なのだろう。
「は?!魔力吸ったってどういうことよ!?」
ミレーナは訳がわからないのを誤魔化すかのように声を荒げる。
私は視線でハクガに説明をパスする。
「んー、俺説明は苦手なんだけど…。吸血鬼と似てるって言ったらわかりやすいかな。血の代わりに魔力を吸う、みたいな?」
そう言ってハクガは二本の牙を見せた。それを見たミレーナの顔が真っ青になっていく。
「吸血…鬼…」
「ミレーナ大丈夫?」
そっと声をかけるとミレーナはハッと首筋に手を当て点痕に触れると、ふらふらと部屋を出て行った。
「もしかしてミレーナ吸血鬼が苦手なのかな?」
「意外な弱点だな」
私たちは顔を見合わせ苦笑をこぼした。
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