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第9章 パートナー契約
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何もかもめちゃくちゃじゃない。こんな中途半端に痛みつけて…。一体あの少年は何を考えているの?
少女は自らの剣を手に雪の中を駆け抜ける。
あの少年は初心者でありながら、最強とも言える能力を持っている。しかし、あの少年は「まだ」他人を殺すことに抵抗があるのだ。
願いのために他人を蹴落とすことができない。
それが正常だ。普通の人間だ。
「あなたは間違っていない」
少女は自らの片手剣で、背後から弓実の体を貫いた。
止まった痛みと、背後から聞こえた倒れる音に、拓人は恐る恐る振り返った。
「…?!」
弓実が地を赤く染め、倒れ伏していた。
「あなたが殺ったんですか…?」
「そうよ」
少女は赤を滴らせた剣を手に、当然のように答えた。
「なんでそんなに平然としてられるんですか!」
拓人は少女に怒鳴った後、顔を背け、自らの拳を握りしめた。わかっている。卑怯なのは自分だと。命を救ってくれた相手にこんな八つ当たり…。何一つ恩返しもできなかった。
「感情を殺してでもしないとこの世界では生きていけないのよ」
少女はカードと化したカッロを雪の中から拾い上げた。
「…してくれよ…」
「…何?」
「僕を殺してくれ!」
「…馬鹿なの?」
「どうせどちらかが死なないとこのフィールドから出られないんだろ?!だから僕を殺して君が生き残ればいい!」
叫ぶ拓人の前にモルテが立った。そしてあの赤い本のとある1ページを開いて差し出した。
「なんだよ…」
拓人はそのページに目を通す。
「パートナー契約…?」
「ああ。ゲーム内で共に戦う人との契約だ」
拓人はモルテを睨んだ。
「なんで今まで教えてくれなかった」
「俺も知らなかったからさ。あの少女に言われた瞬間、この本にも記載されたんだ」
「パートナー契約を結べばその相手は敵とはみなされない。フィールド展開もされない」
リーチェが簡単に説明を行う。
「一度パートナー契約を行った者はどちらかが死ぬまでその契約を破棄することはできない。相性次第では戦闘の勝敗が分かれることもある」
拓人は少女を見つめた。
「なぜ僕なんかを選ぶんですか?」
拓人は自分の弱さを痛いほど見せてきた。普通の人なら命をかけた戦いで拓人を選ぶことはないだろう。
「タロット占いで、今日最初のフィールド内で出会う異性とパートナー契約を行いなさいって出たのよ」
「ただの占いじゃないですか」
「おっと、咲ちゃんの占いをなめてもらっちゃ困るなぁ。この子、一応占い師やってるんだよ?君もあの星のかけらを見たでしょ?この子の占いよく当たるんだから。それに、君の能力とこの子の回復能力、いい相性だと思うけど?」
「なんで僕の能力…」
「俺が教えた。も、もちろんパートナー希望だと聞いた上でだぞ!」
「裏切られてたらどうする気だったんだよ…」
呆れたように拓人がため息をつくと、モルテは少しだけ申し訳なさそうに目を伏せた。
「で、あなたはどうなの?契約を結ぶ気はあるの?ないなら今すぐ戦闘を開始するわ。寒さで凍えそうなの。早く決めて」
拓人は顔を伏せ、しばらく考えた。そして三人が見つめる中、拓人ははっきりと告げた。
「パートナー契約、結びます」
少女はその言葉に頷くと、リーチェとモルテにカードへ戻るよう促した。リーチェは赤い本を少女に渡し、女帝のカードへと化した。
少女は手早くほとんど白紙のページをめくると、大きく魔法陣が描かれたページを開き、その上に自らのカードを乗せた。
「あなたのカード、私のカードの上にクロスで重ねて」
拓人は言われた通りに、死神のカードを女帝のカードの上に重ねた。
「カードの上に手を翳して、同時にコントラットと唱える。それで契約は成立するわ」
拓人は少女と同じように手を翳し、互いに頷き、声をそろえた。
『コントラット』
その瞬間、本に描かれた魔法陣が光を放った。拓人は思わず目を瞑る。
次に目を開けた時、光は収まり、本にあった魔法陣も消えていた。
「契約成立よ。カードを見て」
拓人は死神のカードを手に取った。そして裏の下隅に赤い星を見つける。
「それが契約された証。私のカードにも同じものが付いているわ」
少女はそう言って拓人に自分のカードを見せた。そこには確かに同じ位置に赤い星がついていた。
「私は黒薔薇咲。よろしく。名前に突っ込んだら殺すわ」
「僕は宇宮拓人です。よろしくお願いします」
拓人はいきなりの殺す宣言に苦笑を浮かべながら自己紹介をした。
「…おかしいわね。まだフィールドが消えない…」
「他に侵入者がいるとか…」
拓人は慌てて辺りを見渡す。
そしてその声は二人の背後からかけられた。
「いや~、まさか君たちがパートナー契約をするとは」
拓人と咲が同時に声の主を捉える。そこにいたのはどこか人をあざ笑うような顔をして手を叩く、高身長な男だった。吹雪の中でもその赤いダイヤ型のピアスは目立っていた。
「誰?」
咲が真っ先に殺意をあらわにし、リーチェをカードから呼び出し、剣を手に取った。
「やだなぁ。俺は君たちと戦う気はないのに」
「誰だと聞いているの!」
「そんなに俺が何者か気になる?」
その男は嘲笑を浮かべながらその正体を述べた。
「どうも初めまして。このゲームの創始者です」
少女は自らの剣を手に雪の中を駆け抜ける。
あの少年は初心者でありながら、最強とも言える能力を持っている。しかし、あの少年は「まだ」他人を殺すことに抵抗があるのだ。
願いのために他人を蹴落とすことができない。
それが正常だ。普通の人間だ。
「あなたは間違っていない」
少女は自らの片手剣で、背後から弓実の体を貫いた。
止まった痛みと、背後から聞こえた倒れる音に、拓人は恐る恐る振り返った。
「…?!」
弓実が地を赤く染め、倒れ伏していた。
「あなたが殺ったんですか…?」
「そうよ」
少女は赤を滴らせた剣を手に、当然のように答えた。
「なんでそんなに平然としてられるんですか!」
拓人は少女に怒鳴った後、顔を背け、自らの拳を握りしめた。わかっている。卑怯なのは自分だと。命を救ってくれた相手にこんな八つ当たり…。何一つ恩返しもできなかった。
「感情を殺してでもしないとこの世界では生きていけないのよ」
少女はカードと化したカッロを雪の中から拾い上げた。
「…してくれよ…」
「…何?」
「僕を殺してくれ!」
「…馬鹿なの?」
「どうせどちらかが死なないとこのフィールドから出られないんだろ?!だから僕を殺して君が生き残ればいい!」
叫ぶ拓人の前にモルテが立った。そしてあの赤い本のとある1ページを開いて差し出した。
「なんだよ…」
拓人はそのページに目を通す。
「パートナー契約…?」
「ああ。ゲーム内で共に戦う人との契約だ」
拓人はモルテを睨んだ。
「なんで今まで教えてくれなかった」
「俺も知らなかったからさ。あの少女に言われた瞬間、この本にも記載されたんだ」
「パートナー契約を結べばその相手は敵とはみなされない。フィールド展開もされない」
リーチェが簡単に説明を行う。
「一度パートナー契約を行った者はどちらかが死ぬまでその契約を破棄することはできない。相性次第では戦闘の勝敗が分かれることもある」
拓人は少女を見つめた。
「なぜ僕なんかを選ぶんですか?」
拓人は自分の弱さを痛いほど見せてきた。普通の人なら命をかけた戦いで拓人を選ぶことはないだろう。
「タロット占いで、今日最初のフィールド内で出会う異性とパートナー契約を行いなさいって出たのよ」
「ただの占いじゃないですか」
「おっと、咲ちゃんの占いをなめてもらっちゃ困るなぁ。この子、一応占い師やってるんだよ?君もあの星のかけらを見たでしょ?この子の占いよく当たるんだから。それに、君の能力とこの子の回復能力、いい相性だと思うけど?」
「なんで僕の能力…」
「俺が教えた。も、もちろんパートナー希望だと聞いた上でだぞ!」
「裏切られてたらどうする気だったんだよ…」
呆れたように拓人がため息をつくと、モルテは少しだけ申し訳なさそうに目を伏せた。
「で、あなたはどうなの?契約を結ぶ気はあるの?ないなら今すぐ戦闘を開始するわ。寒さで凍えそうなの。早く決めて」
拓人は顔を伏せ、しばらく考えた。そして三人が見つめる中、拓人ははっきりと告げた。
「パートナー契約、結びます」
少女はその言葉に頷くと、リーチェとモルテにカードへ戻るよう促した。リーチェは赤い本を少女に渡し、女帝のカードへと化した。
少女は手早くほとんど白紙のページをめくると、大きく魔法陣が描かれたページを開き、その上に自らのカードを乗せた。
「あなたのカード、私のカードの上にクロスで重ねて」
拓人は言われた通りに、死神のカードを女帝のカードの上に重ねた。
「カードの上に手を翳して、同時にコントラットと唱える。それで契約は成立するわ」
拓人は少女と同じように手を翳し、互いに頷き、声をそろえた。
『コントラット』
その瞬間、本に描かれた魔法陣が光を放った。拓人は思わず目を瞑る。
次に目を開けた時、光は収まり、本にあった魔法陣も消えていた。
「契約成立よ。カードを見て」
拓人は死神のカードを手に取った。そして裏の下隅に赤い星を見つける。
「それが契約された証。私のカードにも同じものが付いているわ」
少女はそう言って拓人に自分のカードを見せた。そこには確かに同じ位置に赤い星がついていた。
「私は黒薔薇咲。よろしく。名前に突っ込んだら殺すわ」
「僕は宇宮拓人です。よろしくお願いします」
拓人はいきなりの殺す宣言に苦笑を浮かべながら自己紹介をした。
「…おかしいわね。まだフィールドが消えない…」
「他に侵入者がいるとか…」
拓人は慌てて辺りを見渡す。
そしてその声は二人の背後からかけられた。
「いや~、まさか君たちがパートナー契約をするとは」
拓人と咲が同時に声の主を捉える。そこにいたのはどこか人をあざ笑うような顔をして手を叩く、高身長な男だった。吹雪の中でもその赤いダイヤ型のピアスは目立っていた。
「誰?」
咲が真っ先に殺意をあらわにし、リーチェをカードから呼び出し、剣を手に取った。
「やだなぁ。俺は君たちと戦う気はないのに」
「誰だと聞いているの!」
「そんなに俺が何者か気になる?」
その男は嘲笑を浮かべながらその正体を述べた。
「どうも初めまして。このゲームの創始者です」
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