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第12章 帰路
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「まさかあなた、初戦闘が大アルカナだったの?!」
拓人は小さく頷く。
「僕はゲームのルールもよくわからないままフィールドに巻き込まれた。戦闘中も攻撃を防ぐので精一杯だったんだ。その時一度だけ、モルテの指示で切り掛かった。もちろん剣の扱い方なんて知らなかったから、相手にかすり傷を与えた程度だった。でも…その時偶然能力が発動して…」
「あなたの能力は即死攻撃だったわね…」
「うん…」
「なんでそんな悲しそうな顔をするの」
咲は立ち上がって拓人の肩を掴み、顔を上げさせた。
「だって人を殺したんだ。悲しまずにいられるか…」
それを聞いた咲は「はぁ…」とため息をつく。そして拓人に向かって言い放った。
「いい?このゲームで他人の死をいちいち悲しんでちゃ進めない。自分の命を守ったと思いなさい。あなたがいなくなったら悲しむ誰かを守ったと思うの。このゲームは人を殺すゲームじゃない。自分の命を守るゲームなのよ。自分の命を大切に守りきった者が勝つ。辛いのはわかるわ。でも考え方を変えるの。今を生きるために」
咲はそう言いながら心の中で自分を問い詰めていた。彼は普通なのだ。壊れているのは自分の方だと。死に対する感情が麻痺している自分が人として正しい彼を壊そうとしている。
「そうだね…。僕ももっと生きる方に考え方を変えてみるよ。すぐには難しいけど、僕のこの感情が咲を危険な目に合わせてしまうかもしれないしね」
拓人は力なく咲に笑って見せた。しかしその笑顔は咲の心を痛く締め付けるだけだった。
「このカード、咲のケースの中に入れておいてよ」
そう言って拓人は愚者のカードを咲に渡した。咲は頷くとメモに「愚者」と追加したのち、ケースにそのカードをしまった。
「そろそろ帰りましょうか。あなたは明日も学校なのでしょう?」
「あ、うん。っていうか咲も学校来ないと」
「私はいいのよ」
咲のその表情はどこかこれ以上物を言わせないような、そんなものだった。
「あ、最後に連絡先だけ教えてもらっていいかしら?戦闘に巻き込まれそうになったりしたら連絡して」
「わかった」
拓人は端末を鞄から取り出し、咲と連絡先を交換した。
激甘キャラメルマキアートを飲んで満足げなモルテを連れ、拓人たちは店を出た。
「今日は本当にありがとう。これから、よろしく」
「ええ」
拓人は咲とリーチェにそう告げると、別れの挨拶を交わし、帰路を歩き始めた。心は朝より随分軽くなっていた。
「あの咲って子はだいぶ戦闘慣れしてたな」
「うん」
拓人は咲の持っていたメモを思い出す。書かれていたのは小アルカナばかりではあったが、拓人よりは何倍も戦闘経験があるのだと見て取れた。
「回復能力と圧倒的戦闘能力。いいパートナーを持ったな」
「あー…。僕も回復能力とかが良かったなー」
「馬鹿。回復能力だったら自らの手で相手を殺すか戦闘不能にするしかないんだぜ?それに大アルカナを引いただけでも幸運だと思え。小アルカナだったらお前はもうこの世にいなかったかもしれないんだから」
「そうなの?」
「ああ。各カードに能力があると言っても、大アルカナより小アルカナの能力は弱いものなんだ。ないと言っても過言ではないね」
拓人は改めてこのゲームの残酷さを認識した。最初のカードを引く工程でほぼ勝敗が決まっているも同然だ。今の話を聞くに、よほどの実力がないと小アルカナ所持者は大アルカナに勝つことはできないだろう。
一体あのゲーム創始者は何を考えているんだ。人の死がそんなにも楽しいものなのか。
拓人は死神のカードを引いたときのことを思いだした。下手したら自分の生死はあの時決まっていたのだ。
「モルテ、ありがとう」
「な、何だよいきなり気持ち悪い」
モルテは急に抱きついてきた拓人に慌てふためくばかりだった。
拓人は小さく頷く。
「僕はゲームのルールもよくわからないままフィールドに巻き込まれた。戦闘中も攻撃を防ぐので精一杯だったんだ。その時一度だけ、モルテの指示で切り掛かった。もちろん剣の扱い方なんて知らなかったから、相手にかすり傷を与えた程度だった。でも…その時偶然能力が発動して…」
「あなたの能力は即死攻撃だったわね…」
「うん…」
「なんでそんな悲しそうな顔をするの」
咲は立ち上がって拓人の肩を掴み、顔を上げさせた。
「だって人を殺したんだ。悲しまずにいられるか…」
それを聞いた咲は「はぁ…」とため息をつく。そして拓人に向かって言い放った。
「いい?このゲームで他人の死をいちいち悲しんでちゃ進めない。自分の命を守ったと思いなさい。あなたがいなくなったら悲しむ誰かを守ったと思うの。このゲームは人を殺すゲームじゃない。自分の命を守るゲームなのよ。自分の命を大切に守りきった者が勝つ。辛いのはわかるわ。でも考え方を変えるの。今を生きるために」
咲はそう言いながら心の中で自分を問い詰めていた。彼は普通なのだ。壊れているのは自分の方だと。死に対する感情が麻痺している自分が人として正しい彼を壊そうとしている。
「そうだね…。僕ももっと生きる方に考え方を変えてみるよ。すぐには難しいけど、僕のこの感情が咲を危険な目に合わせてしまうかもしれないしね」
拓人は力なく咲に笑って見せた。しかしその笑顔は咲の心を痛く締め付けるだけだった。
「このカード、咲のケースの中に入れておいてよ」
そう言って拓人は愚者のカードを咲に渡した。咲は頷くとメモに「愚者」と追加したのち、ケースにそのカードをしまった。
「そろそろ帰りましょうか。あなたは明日も学校なのでしょう?」
「あ、うん。っていうか咲も学校来ないと」
「私はいいのよ」
咲のその表情はどこかこれ以上物を言わせないような、そんなものだった。
「あ、最後に連絡先だけ教えてもらっていいかしら?戦闘に巻き込まれそうになったりしたら連絡して」
「わかった」
拓人は端末を鞄から取り出し、咲と連絡先を交換した。
激甘キャラメルマキアートを飲んで満足げなモルテを連れ、拓人たちは店を出た。
「今日は本当にありがとう。これから、よろしく」
「ええ」
拓人は咲とリーチェにそう告げると、別れの挨拶を交わし、帰路を歩き始めた。心は朝より随分軽くなっていた。
「あの咲って子はだいぶ戦闘慣れしてたな」
「うん」
拓人は咲の持っていたメモを思い出す。書かれていたのは小アルカナばかりではあったが、拓人よりは何倍も戦闘経験があるのだと見て取れた。
「回復能力と圧倒的戦闘能力。いいパートナーを持ったな」
「あー…。僕も回復能力とかが良かったなー」
「馬鹿。回復能力だったら自らの手で相手を殺すか戦闘不能にするしかないんだぜ?それに大アルカナを引いただけでも幸運だと思え。小アルカナだったらお前はもうこの世にいなかったかもしれないんだから」
「そうなの?」
「ああ。各カードに能力があると言っても、大アルカナより小アルカナの能力は弱いものなんだ。ないと言っても過言ではないね」
拓人は改めてこのゲームの残酷さを認識した。最初のカードを引く工程でほぼ勝敗が決まっているも同然だ。今の話を聞くに、よほどの実力がないと小アルカナ所持者は大アルカナに勝つことはできないだろう。
一体あのゲーム創始者は何を考えているんだ。人の死がそんなにも楽しいものなのか。
拓人は死神のカードを引いたときのことを思いだした。下手したら自分の生死はあの時決まっていたのだ。
「モルテ、ありがとう」
「な、何だよいきなり気持ち悪い」
モルテは急に抱きついてきた拓人に慌てふためくばかりだった。
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