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第13章 武器について
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「お兄ちゃん寝ないのー?」
「うん、もうちょっと…」
夜の11時、拓人は机のライトのみをつけ、今日借りてきたばかりの本を読みふけっていた。
「それ、読んでて楽しい?」
モルテが背後から尋ねた。
「楽しいも何も、勝つヒントになるのなら読むしかないでしょ。もう一人だけの勝敗じゃないんだ。咲の命も背負ってる」
「確かにな。俺、先寝るぜ?」
「いいよ」
モルテは眠たそうにあくびをした。食欲は感じないのに眠気は感じるのだろうか。それとも暇だからわざと眠そうなフリをしているのか、定かではない。
「ロングソードか…」
拓人は自分の使用している剣と同じような剣を見つけた。
「え?これ実在するの?」
独り言のように拓人は声を漏らした。ロングソードの写真が載せられたその横には「西欧で広まったスタンダードな刀剣。写真はマクシミリアン一世のもの」と書かれている。
「ねえ、お兄ちゃん。わからないところがあるんだけど教えてくれない?」
「え?あ、優花か。何の教科?」
「数学」
「教えられる範囲なら」
拓人は「寝ないの?」と尋ねた優花の言葉に空返事をしていたため、そこで優花が部屋の中にいるのことに気づいた。どうやら勉強を教えてもらおうと声をかける機会を伺っていたようだ。モルテとの会話は変に思われたかもしれない。
「ここなんだけどね」
そう言って優花が見せてきたのは、見るからに難易度が高い応用の範囲だった。
「優花、高校どこ受けるつもりだ?」
「明陽高校」
優花の返答に拓人は思わず表情を崩す。
「そこ、正直優花の実力じゃ…」
明陽高校は国内でもトップ10位に入るほどの偏差値の高い高校だ。それに対し、優花の学力は部活に専念してることもあってか中学の中でもいい方とは言えない。合格はほぼ絶望的だ。
「わかってる!」
「わかってるなら何で…」
「テニスしたいの!」
優花の張り上げた声に驚きつつも、その一言で納得がいった。
「今度の大会で優勝できたら、もしかしたら推薦でいけるかもしれないの。でも、推薦がなくても私はここに行きたい」
確かに明陽高校はテニス部が有名だ。しかし去年の高校テニスの優勝校は別であった。推薦枠があるならともかく、到底届かない高校に、わざわざ学力を上げてまでそこにこだわる必要があるだろうか。それこそ去年の優勝校を狙ったほうが確実だ。
「何か他に理由があるんじゃないのか?」
「…。お兄ちゃんには関係ないよ」
優花はそれっきり口を閉ざしてしまった。こうなると優花は意地でも口を開かない。拓人はこれ以上追求するのをやめた。
「わかった。もう聞かないよ。ごめんだけど、僕もこれは解けないよ」
「そっか、ありがとう。邪魔してごめんね」
優花はそう言って小さく微笑むと、拓人の部屋を出て行った。その後ろ姿を見送り、拓人は再び本に視線を移した。
「エスパダ・ロペア…これが咲が使っていた剣か。え?これも実在したの?」
レイピアの一種、エスパダ・ロペア。咲が使っていた片手剣だ。これも実在するものだと記載されていた。
その後もパラパラとページを進めていく。
「カットラス…弓実さんが使っていた剣だ…」
カットラス。狭い場所での使用に向いた刀身の短い剣。切ることを重視した実在した剣だという。しかし弓実は最初こそ切りかかってきていたが、後半は突き刺すという使い方をしていた。剣の特徴を知らなかったのか、無我夢中であったのか。今ではもう確認する術はない。
「やっぱり武器についての知識も必要だな。あ、これが沙織さんの…これも実在するのか…。変な形をしていると思ったら、この剣は殺傷が目的の剣じゃないんだな」
拓人の目に止まったのは、沙織が使用していた刃先が鮫の歯のような剣。あの不思議な剣は忘れようにも忘れられない。
「ソード・ブレイカー…」
名前の欄を見て呟く。そして説明欄に目を通す。
「刃の隙間に相手の剣を挟んで折ることができる。盾代わりに使用されることも多い」
それを音読し、拓人は沙織が剣を左手に持っていたことを思い出した。沙織は剣の性質を分かった上で戦っていたのだ。よほどのベテランだったのだろう。
そしてもう一つ、拓人は重要なことを思い出した。
「拓人避けろ!剣が折られる!」
「おい!モルテ起きろ!」
拓人はベッドを陣取り、のうのうと寝ているモルテを揺り起こした。
「キャラメルくれるの…?」
「どんな夢みてんだ…よ!」
「おわ!?」
拓人は布団を剥ぎ取り、寝ぼけているモルテを怒りの表情で見下した。
「な、なんだよ…やんのか?」
なぜかヤンキーモードになったモルテはビジュアルの大鎌を構える。
「…なんでそうなった。それはビジュアルだろ。そんなことより、僕は怒っているんだ」
「…。勝手にベッド借りたこと…?」
「違う。そんなことどうでもいい。お前、剣についても知っていたな?なぜあのゲーム説明の時、戦闘の時、教えてくれなかった?」
するとモルテは当然のように答えた。
「聞かれなかったからさ」
そこにはいつもの笑みが戻っていた。
「お前はマットのカードにゲームの全容を語るように願った。その中に武器についての説明をしろとは含まれていなかっただろ?」
「なんだって?」
拓人は自分の願いが思っていたものと違っていたことに気がついた。
それは弓実にも指摘されたことだ。
自分は甘い。モルテに詰め寄ろうとしていた拓人は、再び机に戻った。
「起こして悪かった。ごめん」
「別にいいけど、このゲームには思考力も必要だぜ。深くまで考えないと隙をつかれる」
「わかってるよ」
モルテは固く拳を握りしめている拓人を見つめ、再びベッドに戻った。そして少し考えた後、モルテは自らカードに戻り、窓際の台に舞い降りた。
その日、拓人は寝る間も惜しんで、武器と自分について思いつめていた。
「うん、もうちょっと…」
夜の11時、拓人は机のライトのみをつけ、今日借りてきたばかりの本を読みふけっていた。
「それ、読んでて楽しい?」
モルテが背後から尋ねた。
「楽しいも何も、勝つヒントになるのなら読むしかないでしょ。もう一人だけの勝敗じゃないんだ。咲の命も背負ってる」
「確かにな。俺、先寝るぜ?」
「いいよ」
モルテは眠たそうにあくびをした。食欲は感じないのに眠気は感じるのだろうか。それとも暇だからわざと眠そうなフリをしているのか、定かではない。
「ロングソードか…」
拓人は自分の使用している剣と同じような剣を見つけた。
「え?これ実在するの?」
独り言のように拓人は声を漏らした。ロングソードの写真が載せられたその横には「西欧で広まったスタンダードな刀剣。写真はマクシミリアン一世のもの」と書かれている。
「ねえ、お兄ちゃん。わからないところがあるんだけど教えてくれない?」
「え?あ、優花か。何の教科?」
「数学」
「教えられる範囲なら」
拓人は「寝ないの?」と尋ねた優花の言葉に空返事をしていたため、そこで優花が部屋の中にいるのことに気づいた。どうやら勉強を教えてもらおうと声をかける機会を伺っていたようだ。モルテとの会話は変に思われたかもしれない。
「ここなんだけどね」
そう言って優花が見せてきたのは、見るからに難易度が高い応用の範囲だった。
「優花、高校どこ受けるつもりだ?」
「明陽高校」
優花の返答に拓人は思わず表情を崩す。
「そこ、正直優花の実力じゃ…」
明陽高校は国内でもトップ10位に入るほどの偏差値の高い高校だ。それに対し、優花の学力は部活に専念してることもあってか中学の中でもいい方とは言えない。合格はほぼ絶望的だ。
「わかってる!」
「わかってるなら何で…」
「テニスしたいの!」
優花の張り上げた声に驚きつつも、その一言で納得がいった。
「今度の大会で優勝できたら、もしかしたら推薦でいけるかもしれないの。でも、推薦がなくても私はここに行きたい」
確かに明陽高校はテニス部が有名だ。しかし去年の高校テニスの優勝校は別であった。推薦枠があるならともかく、到底届かない高校に、わざわざ学力を上げてまでそこにこだわる必要があるだろうか。それこそ去年の優勝校を狙ったほうが確実だ。
「何か他に理由があるんじゃないのか?」
「…。お兄ちゃんには関係ないよ」
優花はそれっきり口を閉ざしてしまった。こうなると優花は意地でも口を開かない。拓人はこれ以上追求するのをやめた。
「わかった。もう聞かないよ。ごめんだけど、僕もこれは解けないよ」
「そっか、ありがとう。邪魔してごめんね」
優花はそう言って小さく微笑むと、拓人の部屋を出て行った。その後ろ姿を見送り、拓人は再び本に視線を移した。
「エスパダ・ロペア…これが咲が使っていた剣か。え?これも実在したの?」
レイピアの一種、エスパダ・ロペア。咲が使っていた片手剣だ。これも実在するものだと記載されていた。
その後もパラパラとページを進めていく。
「カットラス…弓実さんが使っていた剣だ…」
カットラス。狭い場所での使用に向いた刀身の短い剣。切ることを重視した実在した剣だという。しかし弓実は最初こそ切りかかってきていたが、後半は突き刺すという使い方をしていた。剣の特徴を知らなかったのか、無我夢中であったのか。今ではもう確認する術はない。
「やっぱり武器についての知識も必要だな。あ、これが沙織さんの…これも実在するのか…。変な形をしていると思ったら、この剣は殺傷が目的の剣じゃないんだな」
拓人の目に止まったのは、沙織が使用していた刃先が鮫の歯のような剣。あの不思議な剣は忘れようにも忘れられない。
「ソード・ブレイカー…」
名前の欄を見て呟く。そして説明欄に目を通す。
「刃の隙間に相手の剣を挟んで折ることができる。盾代わりに使用されることも多い」
それを音読し、拓人は沙織が剣を左手に持っていたことを思い出した。沙織は剣の性質を分かった上で戦っていたのだ。よほどのベテランだったのだろう。
そしてもう一つ、拓人は重要なことを思い出した。
「拓人避けろ!剣が折られる!」
「おい!モルテ起きろ!」
拓人はベッドを陣取り、のうのうと寝ているモルテを揺り起こした。
「キャラメルくれるの…?」
「どんな夢みてんだ…よ!」
「おわ!?」
拓人は布団を剥ぎ取り、寝ぼけているモルテを怒りの表情で見下した。
「な、なんだよ…やんのか?」
なぜかヤンキーモードになったモルテはビジュアルの大鎌を構える。
「…なんでそうなった。それはビジュアルだろ。そんなことより、僕は怒っているんだ」
「…。勝手にベッド借りたこと…?」
「違う。そんなことどうでもいい。お前、剣についても知っていたな?なぜあのゲーム説明の時、戦闘の時、教えてくれなかった?」
するとモルテは当然のように答えた。
「聞かれなかったからさ」
そこにはいつもの笑みが戻っていた。
「お前はマットのカードにゲームの全容を語るように願った。その中に武器についての説明をしろとは含まれていなかっただろ?」
「なんだって?」
拓人は自分の願いが思っていたものと違っていたことに気がついた。
それは弓実にも指摘されたことだ。
自分は甘い。モルテに詰め寄ろうとしていた拓人は、再び机に戻った。
「起こして悪かった。ごめん」
「別にいいけど、このゲームには思考力も必要だぜ。深くまで考えないと隙をつかれる」
「わかってるよ」
モルテは固く拳を握りしめている拓人を見つめ、再びベッドに戻った。そして少し考えた後、モルテは自らカードに戻り、窓際の台に舞い降りた。
その日、拓人は寝る間も惜しんで、武器と自分について思いつめていた。
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