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第1章 出会い
決意
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ロゼはアルたちと衛兵を連れ、家のあった場所へ向かった。
もともと人が寄り付かない場所のためか、あの惨劇が蘇ってくるほど光景は変わっていなかった。
「これは酷い…」
衛兵の中にはロゼに代わって涙を流す者もいた。
「ロゼ、両親はどの辺に倒れてたか覚えてるか?」
「うん。お父さんもお母さんも玄関で刺されて倒れたの。盗賊たちが移動させてなければ玄関先、この辺だと思う」
ロゼはそう言って玄関だった辺りに立った。
「それにしても大事にならないように辺りには水を撒いたのかしら。周りの木はほとんど燃えてないわね」
イザベラが辺りを見渡して呟いた。そう言われてロゼもそのことに気がついた。そしてそのたちの悪さに思わず歯を食いしばった。
「衛兵、ロゼの辺りの倒れた木を動かしてくれ。ゆっくりでいい。下に遺体があるはずだ」
「アル、衛兵さんたち、ありがとう。こんな惨状の遺体なんて見たくないはずなのに…」
見つめることしかできないロゼは小さく呟いた。
「ロゼ、そんなことは気にするな。みんなロゼのために率先して集まってくれたんだ。この中にこんな仕事はしたくないなんて思ってる奴は一人もいないよ」
アルの言葉にロゼは顔を上げた。
「本当にありがとうございます」
そしてはっきりと礼の言葉を述べた。
その時、倒れた木材を撤去していた衛兵から声がかかった。
「一人、男性らしき遺体が見つかりました!」
ロゼはその声に衛兵の方へ駆け寄った。そこには真っ黒になった父の体があった。身長からようやく父だとわかる惨状だ。
「こちらにも一人、女性だと思われます!」
ロゼはすぐさま駆け寄って遺体を確認した。
「間違いないです。お父さんとお母さんです」
ロゼは両親の変わり果てた姿にそっと寄り添った。
「お父さん、お母さん。遅くなってごめんね。今までありがとう。私、今は一人じゃないよ。頑張って生きていくから見守っててね」
その様子をアルたちは後ろから見ていた。
「辛い光景ね…」
「ああ。俺たちには想像できないほど辛いだろうな…」
「ロゼ様はお強いですね」
三人はロゼの後ろ姿をしばらく眺めていた。
「お別れは済んだか?」
「うん」
立ち上がったロゼに悲しみの表情はもうなかった。代わりにあったのは強い意思だった。
「お墓はどこに作るつもりだ?ロゼも城の住人だし城の墓に入れてあげることもできるが…」
「お墓は家の横でいい。両親もきっとその方が落ち着くと思う」
「そうか」
アルは優しく頷くと、衛兵に家の横に墓を作るように命じた。
「あ、私も手伝います!」
衛兵たちに混ざろうとするロゼをアルは止めた。
「ロゼはただでさえ辛いことなんだから無理に動かなくていいって」
「ううん。これは私の両親のお墓だもの。私が作らなくてどうするの」
そう言ってロゼはアルの止める手を振り払い、衛兵たちに混ざっていった。
「かなわないな、ロゼには」
アルはその姿を見ながら呟いた。
****************
しばらくして、二人分のお墓は無事完成した。とはいえ、遺体を埋めただけの簡素なものである。
しかしロゼはそれでいいとお墓の前で手を合わせた。
「お母さん、お父さん、ゆっくり休んでね」
ロゼの後ろでアルや衛兵達も静かに手を合わせた。
「皆さん本当にありがとうございました。これで両親も安らかに眠れます」
ロゼは改めて衛兵たちとアルに頭を下げた。
「ではこれより城に戻る」
アルの声でロゼたちはお墓を背に、静かに歩き出した。
「ロゼ、大丈夫か?」
「うん。大丈夫。私はこんな過酷な運命なんかに負けたりしない」
力強く言うロゼにアルは微笑んだ。と、その時、ロゼはアルを見つめて急に立ち止まった。
「どうした?」
「私決めたの」
「何を?」
ロゼは深く息を吸うとこう告げた。
「お城で働かせてください」
もともと人が寄り付かない場所のためか、あの惨劇が蘇ってくるほど光景は変わっていなかった。
「これは酷い…」
衛兵の中にはロゼに代わって涙を流す者もいた。
「ロゼ、両親はどの辺に倒れてたか覚えてるか?」
「うん。お父さんもお母さんも玄関で刺されて倒れたの。盗賊たちが移動させてなければ玄関先、この辺だと思う」
ロゼはそう言って玄関だった辺りに立った。
「それにしても大事にならないように辺りには水を撒いたのかしら。周りの木はほとんど燃えてないわね」
イザベラが辺りを見渡して呟いた。そう言われてロゼもそのことに気がついた。そしてそのたちの悪さに思わず歯を食いしばった。
「衛兵、ロゼの辺りの倒れた木を動かしてくれ。ゆっくりでいい。下に遺体があるはずだ」
「アル、衛兵さんたち、ありがとう。こんな惨状の遺体なんて見たくないはずなのに…」
見つめることしかできないロゼは小さく呟いた。
「ロゼ、そんなことは気にするな。みんなロゼのために率先して集まってくれたんだ。この中にこんな仕事はしたくないなんて思ってる奴は一人もいないよ」
アルの言葉にロゼは顔を上げた。
「本当にありがとうございます」
そしてはっきりと礼の言葉を述べた。
その時、倒れた木材を撤去していた衛兵から声がかかった。
「一人、男性らしき遺体が見つかりました!」
ロゼはその声に衛兵の方へ駆け寄った。そこには真っ黒になった父の体があった。身長からようやく父だとわかる惨状だ。
「こちらにも一人、女性だと思われます!」
ロゼはすぐさま駆け寄って遺体を確認した。
「間違いないです。お父さんとお母さんです」
ロゼは両親の変わり果てた姿にそっと寄り添った。
「お父さん、お母さん。遅くなってごめんね。今までありがとう。私、今は一人じゃないよ。頑張って生きていくから見守っててね」
その様子をアルたちは後ろから見ていた。
「辛い光景ね…」
「ああ。俺たちには想像できないほど辛いだろうな…」
「ロゼ様はお強いですね」
三人はロゼの後ろ姿をしばらく眺めていた。
「お別れは済んだか?」
「うん」
立ち上がったロゼに悲しみの表情はもうなかった。代わりにあったのは強い意思だった。
「お墓はどこに作るつもりだ?ロゼも城の住人だし城の墓に入れてあげることもできるが…」
「お墓は家の横でいい。両親もきっとその方が落ち着くと思う」
「そうか」
アルは優しく頷くと、衛兵に家の横に墓を作るように命じた。
「あ、私も手伝います!」
衛兵たちに混ざろうとするロゼをアルは止めた。
「ロゼはただでさえ辛いことなんだから無理に動かなくていいって」
「ううん。これは私の両親のお墓だもの。私が作らなくてどうするの」
そう言ってロゼはアルの止める手を振り払い、衛兵たちに混ざっていった。
「かなわないな、ロゼには」
アルはその姿を見ながら呟いた。
****************
しばらくして、二人分のお墓は無事完成した。とはいえ、遺体を埋めただけの簡素なものである。
しかしロゼはそれでいいとお墓の前で手を合わせた。
「お母さん、お父さん、ゆっくり休んでね」
ロゼの後ろでアルや衛兵達も静かに手を合わせた。
「皆さん本当にありがとうございました。これで両親も安らかに眠れます」
ロゼは改めて衛兵たちとアルに頭を下げた。
「ではこれより城に戻る」
アルの声でロゼたちはお墓を背に、静かに歩き出した。
「ロゼ、大丈夫か?」
「うん。大丈夫。私はこんな過酷な運命なんかに負けたりしない」
力強く言うロゼにアルは微笑んだ。と、その時、ロゼはアルを見つめて急に立ち止まった。
「どうした?」
「私決めたの」
「何を?」
ロゼは深く息を吸うとこう告げた。
「お城で働かせてください」
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