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第2章 メイドとして
地位の差
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ロゼの言葉にアルは驚いたように目を見開いた。
「ロゼは別に働かなくても城内の令嬢たちと同じ待遇にしてあげるし…」
「ううん。私は働きたい。せっかく与えてもらった居場所で何もせずに立ち止まっちゃうのは嫌なの」
アルは困ったようにイザベラたちを見た。
「いいんじゃない?それがロゼの望むことなら」
「私もいいと思います」
イザベラとエドはそう答えた。
「うーん…でも働くとなると地位は下がるぞ?」
「あはは、私地位なんて気にしたことないよ。それに元々は城にも入れないただの町娘だよ?働いてる方がよっぽどあってると思うな」
ロゼは笑ってそう言った。アルはどこか納得いかなようだったが渋々といった様子で頷いた。
「わかった。じゃあロゼ、君をメイドとして雇うことにする」
「はい。ありがとうございます」
ロゼは軽く会釈をした。
「だけど俺たちとは今まで通りに接してくれ。今更敬語を使われても、その…なんだ、距離が遠くなったみたいで…嫌だからさ」
「わかったよ、アル」
ロゼのその返事を聞くと、アルたちは城へ向けて再び足を動かした。
****************
「ってことで明日から新人としてよろしく、アレッサ」
「へ…?」
アルの言葉にアレッサは唖然と気の抜けた声をあげた。
「よろしくお願いします!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいアル様!ロゼ様は令嬢と同じ待遇でもてなすよう仰られたはずじゃ…」
「それはロゼ本人の希望で却下だ」
アレッサはまだ思考が追いついていないのかあたふたと言葉を探している。
「本格的に働くのは明日からだが、今日からロゼに敬語はいらない。他のメイドたちにも伝えておいてくれ」
「は、はい…」
アルは重要なことだけ告げると職務があるからと去っていった。残されたアレッサは微笑むロゼに視線を向けた。
「ロゼさ…じゃなかった。ロゼ、今日からあなたの上司にあたりますメイド長のアレッサです。改めてよろしくお願いします」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
「制服は明日までに準備しておくから朝起きたら取りに来ること。いいわね?」
「わかりました」
ロゼはアレッサに明日の大まかなスケジュールを教えてもらうと、今日はゆっくり休むようにと言われ、部屋に戻った。
「明日は6時起きか…。朝食の準備から始まって、掃除や洗濯…。家で手伝ってたことが役に立てばいいけど…」
その時、スケジュールを見ていたロゼの部屋を誰かがノックした。
「はい」
ロゼはスケジュールを置き、ゆっくりと扉を開けた。
「わぁ!本当に青い目に青い髪!通りでアル様が気に入るわけだわ!」
そこに立っていたのは綺麗なドレスを身にまとった女の子だった。歳はロゼと同じくらいに見える。
「初めまして。私はシャルロット。この城の大臣の娘なの。あなた名前は?」
「あ、ロゼです。初めまして」
ロゼは軽く会釈をした。大臣の娘ということはこの城の令嬢だということになる。
「新しい子が来たっていうから仲良くなろうと思ってきたけど、あなたメイドに格落ちしたそうじゃない?何?王子への色仕掛けにでも失敗したの?」
シャルロットはそう言ってロゼを見下した目で見つめた。いきなりの態度と言葉にロゼは考える間も無く口を開いていた。
「私は自分の意思でメイドになると決めたんです!それに王子への色仕掛けなんて一切してません!」
「そうなの?でもさっきの様子じゃアル様に随分気に入られてるみたいじゃない。ああ、それかアル様はその青い目と髪がお気に入りなのかしら?所詮飾り物ね」
「私への罵倒は許しますけど、王子への罵倒は侮辱だと捉えます」
ロゼはシャルロット見つめて言い放った。初対面でそんなことを言われるとは思ってもいなかったロゼは、内心怒りを押さえつけていた。
「へぇ、令嬢の私によく言うじゃない」
「地位がそんなに大切ですか?」
「地位は大切よ。あなたもいずれ知ることになるでしょうね。メイドと令嬢の地位がどれほど違うのか」
「私にはそんなもの興味はありません。お話はそれだけですか?」
シャルロットは引けを取らないロゼにこれ以上言っても無駄だと思ったのか「以上よ。ではごきげんよう」と言って去っていった。
ロゼはその後ろ姿を軽く睨みつけると部屋の扉を閉めた。そして大きくため息をつく。
「なんか早速色々言われちゃったなぁ…。ただの町娘が城に上がるんだから何か言われるとは覚悟してたけど、こんなにはっきり言われちゃうとは…」
そしてロゼはシャルロットのある言葉に引っかかっていた。
「所詮飾り物…。アルはそう思ってるんだろうか…」
ロゼは鏡を見つめた。澄んだ青い瞳が自分を見つめ返す。珍しさ故に自分をそばに置きたいと思われているなら…ロゼは少し胸が痛んだ。自分がこの目、この髪じゃなかったら見捨てられていたんだろうか。
一つの言葉がロゼの心を悩ませた。一度悪い方向へ考えてしまうと止まらなくなる。ロゼはその考えを止めるために今日はもう寝ることにした。
「明日から私はメイド」
ロゼは自分の決意を確かめるように呟いてそっと目を閉じた。
「ロゼは別に働かなくても城内の令嬢たちと同じ待遇にしてあげるし…」
「ううん。私は働きたい。せっかく与えてもらった居場所で何もせずに立ち止まっちゃうのは嫌なの」
アルは困ったようにイザベラたちを見た。
「いいんじゃない?それがロゼの望むことなら」
「私もいいと思います」
イザベラとエドはそう答えた。
「うーん…でも働くとなると地位は下がるぞ?」
「あはは、私地位なんて気にしたことないよ。それに元々は城にも入れないただの町娘だよ?働いてる方がよっぽどあってると思うな」
ロゼは笑ってそう言った。アルはどこか納得いかなようだったが渋々といった様子で頷いた。
「わかった。じゃあロゼ、君をメイドとして雇うことにする」
「はい。ありがとうございます」
ロゼは軽く会釈をした。
「だけど俺たちとは今まで通りに接してくれ。今更敬語を使われても、その…なんだ、距離が遠くなったみたいで…嫌だからさ」
「わかったよ、アル」
ロゼのその返事を聞くと、アルたちは城へ向けて再び足を動かした。
****************
「ってことで明日から新人としてよろしく、アレッサ」
「へ…?」
アルの言葉にアレッサは唖然と気の抜けた声をあげた。
「よろしくお願いします!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいアル様!ロゼ様は令嬢と同じ待遇でもてなすよう仰られたはずじゃ…」
「それはロゼ本人の希望で却下だ」
アレッサはまだ思考が追いついていないのかあたふたと言葉を探している。
「本格的に働くのは明日からだが、今日からロゼに敬語はいらない。他のメイドたちにも伝えておいてくれ」
「は、はい…」
アルは重要なことだけ告げると職務があるからと去っていった。残されたアレッサは微笑むロゼに視線を向けた。
「ロゼさ…じゃなかった。ロゼ、今日からあなたの上司にあたりますメイド長のアレッサです。改めてよろしくお願いします」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
「制服は明日までに準備しておくから朝起きたら取りに来ること。いいわね?」
「わかりました」
ロゼはアレッサに明日の大まかなスケジュールを教えてもらうと、今日はゆっくり休むようにと言われ、部屋に戻った。
「明日は6時起きか…。朝食の準備から始まって、掃除や洗濯…。家で手伝ってたことが役に立てばいいけど…」
その時、スケジュールを見ていたロゼの部屋を誰かがノックした。
「はい」
ロゼはスケジュールを置き、ゆっくりと扉を開けた。
「わぁ!本当に青い目に青い髪!通りでアル様が気に入るわけだわ!」
そこに立っていたのは綺麗なドレスを身にまとった女の子だった。歳はロゼと同じくらいに見える。
「初めまして。私はシャルロット。この城の大臣の娘なの。あなた名前は?」
「あ、ロゼです。初めまして」
ロゼは軽く会釈をした。大臣の娘ということはこの城の令嬢だということになる。
「新しい子が来たっていうから仲良くなろうと思ってきたけど、あなたメイドに格落ちしたそうじゃない?何?王子への色仕掛けにでも失敗したの?」
シャルロットはそう言ってロゼを見下した目で見つめた。いきなりの態度と言葉にロゼは考える間も無く口を開いていた。
「私は自分の意思でメイドになると決めたんです!それに王子への色仕掛けなんて一切してません!」
「そうなの?でもさっきの様子じゃアル様に随分気に入られてるみたいじゃない。ああ、それかアル様はその青い目と髪がお気に入りなのかしら?所詮飾り物ね」
「私への罵倒は許しますけど、王子への罵倒は侮辱だと捉えます」
ロゼはシャルロット見つめて言い放った。初対面でそんなことを言われるとは思ってもいなかったロゼは、内心怒りを押さえつけていた。
「へぇ、令嬢の私によく言うじゃない」
「地位がそんなに大切ですか?」
「地位は大切よ。あなたもいずれ知ることになるでしょうね。メイドと令嬢の地位がどれほど違うのか」
「私にはそんなもの興味はありません。お話はそれだけですか?」
シャルロットは引けを取らないロゼにこれ以上言っても無駄だと思ったのか「以上よ。ではごきげんよう」と言って去っていった。
ロゼはその後ろ姿を軽く睨みつけると部屋の扉を閉めた。そして大きくため息をつく。
「なんか早速色々言われちゃったなぁ…。ただの町娘が城に上がるんだから何か言われるとは覚悟してたけど、こんなにはっきり言われちゃうとは…」
そしてロゼはシャルロットのある言葉に引っかかっていた。
「所詮飾り物…。アルはそう思ってるんだろうか…」
ロゼは鏡を見つめた。澄んだ青い瞳が自分を見つめ返す。珍しさ故に自分をそばに置きたいと思われているなら…ロゼは少し胸が痛んだ。自分がこの目、この髪じゃなかったら見捨てられていたんだろうか。
一つの言葉がロゼの心を悩ませた。一度悪い方向へ考えてしまうと止まらなくなる。ロゼはその考えを止めるために今日はもう寝ることにした。
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