3 / 18
③
しおりを挟む
それからのことはうろ覚えだった。
その場にいた、キョンの仲間のヤンが家まで送ってくれ、「心配ないから、何かあったら遠慮なくいってください」と言い残し、帰っていった。
玄関のドアを開け、部屋の中に入り時計を見ると夜中の12時をすぎていた。
そっと母さんの寝室のドアを開けると、母さんは穏やかな顔で寝ていた。その寝顔に少しだけホッとする。
ドアをしめて、居間のテーブルに腰掛ける。先ほどあった事がフラッシュバックしそうで怖い。必死で、考えないようにした。
母さんには言えない。今日起きたことは、自分の中にしまっておこう。結果、最悪なことはされなかったし、気にしてはいけない、、。
そう自分に言い聞かせて、風呂場に行き、ボロボロになったワンピースを脱ぎ、無造作にゴミ箱に捨てた。
数日立って、その事件を気にしないようにしていたけれど、私の部屋にある緑色の派手な柄シャツがあのことは現実だったんだと思い出させた。
借りたその派手なシャツは洗濯して紙袋の中に入れてある。会った時に返そうと思っていて、いつでも持ち歩いていた。会ってお礼を言いたかった。キョンが来てくれなかったら、間違いなく最悪な事態になっていたはずだ。
そしてその事件から3日たった日のことだった。
出勤時間の16時ごろに九龍城の前の通りを歩いていると、入口の近くに数人の仲間とタバコを吸いながら立ち話をしているキョンが目に入った。背が高いし、いつも派手なシャツを着ているからすぐわかる。仲間たちと談笑していて、時々笑みを浮かべている。
少し離れたところから彼の顔を見つめた。整った端正な顔立ち。切長の瞳。少し影のあるような、クールな表情。
確かにとても魅力的な男性だと思う。アニタがいうのもうなづける。
、、、どうしようか。話しかけて、お礼と服を返さなきゃいけない。ただちょっと近寄りがたい雰囲気で話しかけづ らかった。キョンと、あと2人の彼の仲間が話していた。ヤンと、名前は知らないが見たことのある彼の仲間だった。
私は意を決して、ズンズンと彼らの輪に近づいた。
「あの、、、っ!!!」
私が掠れた声を上げると、キョンと彼の仲間たちは一斉に私の方を向いた。
私は頭を下げ、紙袋を差し出した。緊張して一気に胸の鼓動が早くなる。
「この前は、ありがとうございました、、!これ、、洗濯したのでお返しします。」
「、、、、」
キョンは黙って私を見つめ、低い声で言った。
「お前か、、、。」
キョンはタバコを手に持ったまま、腕を組んだ。そしてため気をついた。
「まだここで働いてんのか」
「、、はい。ここで仕事があるので」
「辞めればいいだろう。他に仕事はいくらでもある」
「そんな急に辞められません。生活があるので。、、、そして辞める気もありません」
「お前、懲りてないな、、。あんだけ酷い目にあったのに。」
キョンが舌打ちをした。
「、、、馬鹿なのは重々承知してます。でも、、、」
私は真っ直ぐにキョンの目をみて言った。
「母さんが身体が悪いので私が働かなければならないんです。ここはお給料がよくて、私みたいな年齢でも雇ってくれるし。あと、私、九龍城が好きなんです。いい噂はあまりないけれど、でもここに住んでいる人達はいい人も多い。」
私は早口で続ける。
「だから、辞められません。辞めたくありません」
キョンはタバコを持った手を口にやり、タバコを吸った。彼は何かを考えているようだった。煙を吐き出し、厳しい声でいった。
「知ってるだろうが、ここ九龍城は無法地帯だ。政府も一切介入しない、なんでもありの場所。ここにいるってことは、なんでもやっていいという反面、なんでもやられていいっていうことだ。全ては自己責任。わかってるよな」
「その通りです。」
「、、、気をつけろよ。フラフラ歩くな」
私の手から紙袋をパッと取り、「行くぞ」と仲間たちに言った。そしてスタスタと九龍城の中へ入って行ってしまった。その後を2人の仲間が追いかけようとするが、その内の一人、ヤンが私の方に駆け寄ってきた。ヤンは安心させるような笑みを私に浮かべ、こう言った。
「ジェイドさん。この前、大変な目に遭って災難でしたね。また何かあったら、俺らに言ってください。兄貴は、ジェイドさんに起こったようなことはもう起こらせたくないんです。ジェイドさんも、九龍城はいい奴も多いけど、悪い奴らも少なからずいるって頭に入れて、行動するようにしてくださいね。」
私は、彼が私の名前を知っていることに驚いた。
「私の名前、知ってるの?」
ヤンは、もちろんと言わんばかりの顔で笑った。
「あたりまえですよ。ジェイドさんみたいな美人、一度見たら忘れないっす」
そして、ヤンは九龍城内に入っていった。
キョンや13Kのメンバーに対して、私が想像していたイメージに変化が起きてきていたことは間違いない。
キョンは近寄り難いオーラがあって、いつもヤンチャそうな仲間達に囲まれ、愛想もよくない。
でも私を助けてくれた。
13Kとは、意外に悪くない人たちなのかもしれない。
その場にいた、キョンの仲間のヤンが家まで送ってくれ、「心配ないから、何かあったら遠慮なくいってください」と言い残し、帰っていった。
玄関のドアを開け、部屋の中に入り時計を見ると夜中の12時をすぎていた。
そっと母さんの寝室のドアを開けると、母さんは穏やかな顔で寝ていた。その寝顔に少しだけホッとする。
ドアをしめて、居間のテーブルに腰掛ける。先ほどあった事がフラッシュバックしそうで怖い。必死で、考えないようにした。
母さんには言えない。今日起きたことは、自分の中にしまっておこう。結果、最悪なことはされなかったし、気にしてはいけない、、。
そう自分に言い聞かせて、風呂場に行き、ボロボロになったワンピースを脱ぎ、無造作にゴミ箱に捨てた。
数日立って、その事件を気にしないようにしていたけれど、私の部屋にある緑色の派手な柄シャツがあのことは現実だったんだと思い出させた。
借りたその派手なシャツは洗濯して紙袋の中に入れてある。会った時に返そうと思っていて、いつでも持ち歩いていた。会ってお礼を言いたかった。キョンが来てくれなかったら、間違いなく最悪な事態になっていたはずだ。
そしてその事件から3日たった日のことだった。
出勤時間の16時ごろに九龍城の前の通りを歩いていると、入口の近くに数人の仲間とタバコを吸いながら立ち話をしているキョンが目に入った。背が高いし、いつも派手なシャツを着ているからすぐわかる。仲間たちと談笑していて、時々笑みを浮かべている。
少し離れたところから彼の顔を見つめた。整った端正な顔立ち。切長の瞳。少し影のあるような、クールな表情。
確かにとても魅力的な男性だと思う。アニタがいうのもうなづける。
、、、どうしようか。話しかけて、お礼と服を返さなきゃいけない。ただちょっと近寄りがたい雰囲気で話しかけづ らかった。キョンと、あと2人の彼の仲間が話していた。ヤンと、名前は知らないが見たことのある彼の仲間だった。
私は意を決して、ズンズンと彼らの輪に近づいた。
「あの、、、っ!!!」
私が掠れた声を上げると、キョンと彼の仲間たちは一斉に私の方を向いた。
私は頭を下げ、紙袋を差し出した。緊張して一気に胸の鼓動が早くなる。
「この前は、ありがとうございました、、!これ、、洗濯したのでお返しします。」
「、、、、」
キョンは黙って私を見つめ、低い声で言った。
「お前か、、、。」
キョンはタバコを手に持ったまま、腕を組んだ。そしてため気をついた。
「まだここで働いてんのか」
「、、はい。ここで仕事があるので」
「辞めればいいだろう。他に仕事はいくらでもある」
「そんな急に辞められません。生活があるので。、、、そして辞める気もありません」
「お前、懲りてないな、、。あんだけ酷い目にあったのに。」
キョンが舌打ちをした。
「、、、馬鹿なのは重々承知してます。でも、、、」
私は真っ直ぐにキョンの目をみて言った。
「母さんが身体が悪いので私が働かなければならないんです。ここはお給料がよくて、私みたいな年齢でも雇ってくれるし。あと、私、九龍城が好きなんです。いい噂はあまりないけれど、でもここに住んでいる人達はいい人も多い。」
私は早口で続ける。
「だから、辞められません。辞めたくありません」
キョンはタバコを持った手を口にやり、タバコを吸った。彼は何かを考えているようだった。煙を吐き出し、厳しい声でいった。
「知ってるだろうが、ここ九龍城は無法地帯だ。政府も一切介入しない、なんでもありの場所。ここにいるってことは、なんでもやっていいという反面、なんでもやられていいっていうことだ。全ては自己責任。わかってるよな」
「その通りです。」
「、、、気をつけろよ。フラフラ歩くな」
私の手から紙袋をパッと取り、「行くぞ」と仲間たちに言った。そしてスタスタと九龍城の中へ入って行ってしまった。その後を2人の仲間が追いかけようとするが、その内の一人、ヤンが私の方に駆け寄ってきた。ヤンは安心させるような笑みを私に浮かべ、こう言った。
「ジェイドさん。この前、大変な目に遭って災難でしたね。また何かあったら、俺らに言ってください。兄貴は、ジェイドさんに起こったようなことはもう起こらせたくないんです。ジェイドさんも、九龍城はいい奴も多いけど、悪い奴らも少なからずいるって頭に入れて、行動するようにしてくださいね。」
私は、彼が私の名前を知っていることに驚いた。
「私の名前、知ってるの?」
ヤンは、もちろんと言わんばかりの顔で笑った。
「あたりまえですよ。ジェイドさんみたいな美人、一度見たら忘れないっす」
そして、ヤンは九龍城内に入っていった。
キョンや13Kのメンバーに対して、私が想像していたイメージに変化が起きてきていたことは間違いない。
キョンは近寄り難いオーラがあって、いつもヤンチャそうな仲間達に囲まれ、愛想もよくない。
でも私を助けてくれた。
13Kとは、意外に悪くない人たちなのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
翼 うみ
恋愛
父の会社を立て直す交換条件のため、ほぼ家族に身売りされた形で関東最大級の極道・桜花組の次期組長に嫁入りしたジェシカ。しかし母を亡くして以降、義母と義妹に虐げられていたジェシカは実家を出られるなら、と前向きだった。夫となる和仁には「君を愛することはない」と冷たく突き放される。それでもジェシカは傷つくことはなく、自分にできることを探して楽しんでいた。
和仁には辛い過去がありそれ故に誰のことも愛さないと決めていたが、純真で健気なジェシカに段々と惹かれてゆき――。
政略結婚から始まる溺愛シンデレラストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
冷たい王妃の生活
柴田はつみ
恋愛
大国セイラン王国と公爵領ファルネーゼ家の同盟のため、21歳の令嬢リディアは冷徹と噂される若き国王アレクシスと政略結婚する。
三年間、王妃として宮廷に仕えるも、愛されている実感は一度もなかった。
王の傍らには、いつも美貌の女魔導師ミレーネの姿があり、宮廷中では「王の愛妾」と囁かれていた。
孤独と誤解に耐え切れなくなったリディアは、ついに離縁を願い出る。
「わかった」――王は一言だけ告げ、三年の婚姻生活はあっけなく幕を閉じた。
自由の身となったリディアは、旅先で騎士や魔導師と交流し、少しずつ自分の世界を広げていくが、心の奥底で忘れられないのは初恋の相手であるアレクシス。
やがて王都で再会した二人は、宮廷の陰謀と誤解に再び翻弄される。
嫉妬、すれ違い、噂――三年越しの愛は果たして誓いとなるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる