Exスキル『能力100万倍』で、あべこべ世界で苦しむ奴隷達の『低価値スキル』を超優秀に!ただし、『性欲100万倍』の副作用付きですが...。

たけ

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第三章 フェンリルと獣人

第34話 罠

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 「こちらです」

 ミルミルは、俺たちを森の奥地へと案内した。うっそうとした森の中。こういう輩は、表の世界じゃ生き辛いのだろうか?

 また、ずいぶんと奥地だな。こんな場所に、人目を避けるように生活をしているのも、何だか可哀そうになる。

 目の前には、大きな崖があり、崖の下には、周りの景色に溶け込むように家が建っていた。

 いや、結構立派だな。屋敷と呼んでもいいだろう。

 ドラリル一味が潜むアジトは、木とレンガのコントラストが印象的な3階建ての建物だ。その外観は黒とレンガ色のハーモニーが醸し出す、どこか陰鬱な雰囲気を持つ。

 建物の高さは約10メートルで、その周囲には木々が茂り、まるで自然の一部であるかのように見える。正面には木製の扉があり、その上にはレンガで作られた窓がある。

 窓枠は黒く塗られ、窓から漏れる薄暗い光が、建物全体に神秘的な影を落とす。そして、その上部にはレンガで作られた煙突がそびえ立ち、白い煙が立ち上っている。その煙突から立ち上る煙が、建物全体に不気味な雰囲気を与えている。

 ふーん。少し不気味だけど...俺的には悪くない。隠れ家のようで好きだな。それと、後ろの崖に完全に密着して建てられているんだな。それはそれで、恰好いいよな。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 「主様。まだドラリル一味の残党が隠れていると思います。すんなり一味の財宝をよこすとは思えません。気を付けて下さい」クラリスは俺の横でそっと忠告をした。メルも周囲を警戒している。

 ミルミルが大きな声で、「みんな!死にたくなければ大人しくするんだ!!」

 そう言った瞬間、ミルミルは慌てて地面に臥せた!どうやら、それが一味の敵が来た時の合言葉の様だ。館の窓の隙間から、ボウガンを狙って打って来た!

 「そう、何度も同じ手は喰らいません!」と言って、メルはミルミルをつないでいる紐を引っ張り、自分の前にミルミルを立たせた。

 ドス!ドス!ドス!

 そう音を立てて、ドラリル一味が放った矢を、メルの代わりに、身体を張って受けるミルミル。

 「私に撃ってどうするんだ...い」と言った後、ミルミルはあぶくを吹いて、その場で動かなくなった。

 「ミ、ミルミル様!!あブサイクめ!」そう言って残党たちが、館から飛び出して来た。

 7,8人が、メルを囲むように円になり、メルに向かってボウガンを構えた。

 「今度は逃げ場がないよ!ミルミル様の仇だ!死にな!」と、残党たちが息を合わせてトリガーを引こうとした瞬間、「私の存在をお忘れでは?」と、クラリスが残党たちに声をかけた。

 そのままクラリスは残党たちに向かって、「שלום אחי, ܐܢܐ ܒܚܘܒܐ ܠܟ, أنا أحبك, ἀγαπῶ σε.!」と、俺には理解できない言葉で何かを唱えた。

 メル以外の残党たちに、かまいたちの様な風攻撃弾を放った。その結果、残党たちは木端微塵に切り刻まれ、足元には原形をとどめない肉の塊だけが残された。

 うわっ!グロテスクだな。匂いもきついし。気持ち悪い。

 そんな俺とは違い、メルは「お姉様!貨幣まで切り刻んでしまうのはやり過ぎです!」と、クラリスはメルに叱られていた。

 そっちかよ...。

 「アジトにいたんだから、所持品なんてごくわずかしか持っていなかっただろう。さて、とにかく館に入ってみるか」

 血の匂いにつられ、辺りで獣の鳴く声が聞こえる。そう遠くない距離だ。とりあえず館の中に入ってみよう。フェンリルを救ってあげないとな。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 2人を連れ館の扉の前に立ち、ドアノブに手をかけようとした瞬間、俺の脳内で鑑定が作動した。「警告!ドアノブには、ガラム蛇毒が染み込ませた毒針が仕込まれております!」

 「おわっと!」

 俺はドアノブを掴もうとした手を、強引に離したため、バランスを崩しメルに身体を支えられた。

 「ご主人様!大丈夫ですか!」

 凄く心配した表情で俺を抱きしめた。俺が気分を悪くして、立ち眩みでも起こしたと勘違いをしたのだろう。

 「ごめんよメル。大丈夫だよ。メルもクラリスもそのドアノブには触るな!俺の鑑定が警告を流した。他にドアノブがあるはずだ!」

 三人で中央のドアノブの代わりを探すと、足元にドアノブが、取り付けられているのを見つけた。

 「また、手の込んだマネを...」

 俺が溜息を吐くと、クラリスが「それだけ莫大なお宝を隠しているという事でしょうね」と、俺を励ますように話しかけてきた。

 メルを先頭に俺たちは先を進むことにした。ドアノブの件もあり用心して進んでいく。すると目の前の床を踏もうとした瞬間、また警告音が脳内に鳴り響いた。よく見ると、床のタイルに切れ目があった。そのまま進むと床が開き、下に落ちる仕掛けの様だ。

 危ないな。どれだけ罠を仕掛けているんだ...。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ただ、俺の鑑定能力とチームワークのおかげで、無事に屋敷内を進んで行く。すると、部屋の前で何やら動く物音が聞こえた。

 ガタ、ガタ、ガタ、ガタ、ガタ!!

 扉の奥から、なにやら気配を感じる。

 「メル!クラリス!用心して進もう。何かいるようだ!」

 「ご主人様は、後ろに下がってください!私が中の様子を見てきます!」

 「いや、俺が先に行けば、鑑定の能力で...」

 「いえ私が、風魔法でドアを吹き飛ばしましょうか?」

 「でも...中にいるのがフェンリルだったら、傷つけてしまいませんか?」

 俺たちの誰が先に進むかを話し合っていると、突然、中から声が聞こえてきた。

 「ううぅ...食料をくれ...水もくれ...ここから出してくれ...」

 ミルミルから、人がいるなど聞いていなかったが...いったいどういう事なんだ?
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