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第三章 フェンリルと獣人
第38話 愚痴
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クラリス視点
場が静まり返った。メルも私と同じことを思ったでしょう。主様を緊張した面持ちで見つめている。主様は私たちをさげずむ者がいるのなら、この申し出を拒否しようとしている。
そんな...獣人国の国王様を治せば、莫大な利益を得ることが出来る。何でも手に入れることができ。名声、権力、お金、女性...。
私たちのような人国の最下層の者を気にする必要などないのに...。
自然と涙があふれた。私だけじゃない...。メルも同じだった。顔を蓋って嗚咽をあげている。
「主様!私たちのことは...」と言いかけた時、主様は「大事なことだ!クラリス。国王様が何だ?同じ命だ。俺もクラリスもメルも!何も変わらない。だから人国の様に外見にとらわれる者達ならば、この話はお断りさせて頂く」そう主様は、ロジンに対してはっきりと言い放った。
信じられない。異なる環境で育ったとはいえ、何かしらの欲望はあるはず。それにメルから聞いた。男性とは思えないほど性欲を持っているお方だと。
なら余計に、この話を断る必要なんてないはずなのに...。
私の思考がついていけない。働かない。でも、ただ一つ言えることは、この人は本当に素敵なお方だということ。ただただ、それだけだ...。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「私たち獣人は、そのようなことは決してございません!外見は骨と肉、皮が付いただけのもの。大事なのは内面です。確かに好みは存在しますが、人間のように外見に大きく影響されることはないのです!」と、大きな声でロジンは言い切った。
本心だろう。鑑定も「本心」と言っている。
「分かりました。出来る限りのことをしに獣人国へ行きましょう。ただし!100%治せるとは限りません。それだけはご了承して下さい」
「も、もちろんです!あ、あ、ありがどうございまず~」
ロジンとワイジン、そしてヨハンは、再び深々と俺に頭を下げた。
そして俺の元に、メルとクラリスが抱き付いてきた。「こんな私たちの為に!」とわんわん泣いている。
なんだかえらいことになってしまった。こんなはずではなかった。フェンリルを探しに来たはずが、男性の獣人を奴隷として受け入れ、国王を助ける約束までしてしまった...。
当初の目的のフェンリルはどこにいるんだ?元気だといいんだけど、早く探してあげないと...。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
???視点
はぁ~。今日も誰も来ないな。ボクはこのままご飯も、水も貰えないまま死んでいくのかな?まだ生まれてから16年ぐらいしか経っていないのに...。もう来世に期待するしかないか。まあ、来世があればだけどね。
でも...どうせブサイクと罵られるくらいなら、このまま死んでいくのも悪くないな。もう疲れた。最後まで愛情ってやつを受けることもなく、死んでいくんだな...。
本当に生まれた時からボクは不幸だった。目がまん丸で口吻が膨らみを帯び、そのくせ鼻が小さかった。すべてが美形とは真逆だ。兄様と姉様は目が吊り上がり細く、口吻は細く、鼻は非常に大きい。
ボクと違って美しかった。そして極めつけは、毛並みがボクだけ真白でふわふわでもこもこ。他の兄弟は灰色のロングストレート。毛並みまで嫌われてしまった。
フェンリルは、1匹の雌を中心とし、群れで生活をする。群れは10頭ほどが大半で、群れの中には雄が1~2頭くらいしかいない。人間同様、殆どが雌だ。
雌は、数少ない雄を他の雌たちと争って勝ち取る。力だけではなく、美貌も重要だ。力と美しさの両方が備わった者だけが、雄を獲得できる。非常に過酷な世界だ。
その戦いで勝ち得た者が雄と交尾をし、2~3頭の子供を宿す。
よく、族長である母様が「人族や獣人、魔物とは異なり、我々フェンリルは神に最も近い存在。どの魔物よりも俊敏で、強靭な肉体と優れた美貌を兼ね備えている。それがフェンリル一族だ」と言っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
母様は露骨にボクを嫌った。なぜかって?ボクがブサイクだからだ。「こんなブサイクな子を育てても、意味が無い」と、平気で言ってのけたらしい。だから、ボクにご飯を与えようとはしなかった。
要するに、ボクみたいなブサイクな者は、一族ではないと言わんばかりに、母様はことあるごとに、ボクの容姿を責めた...。
兄様と姉様、それに父様以外の群れの雌も、ボクの容姿をバカにした。ただ、ボクをバカにする理由は他にもある様だ。それは、同年代のどのフェンリルよりも、体力と攻撃力、俊敏さ、そして知力が優れていることだ。
つまり、力や賢さにおいてボクには敵わないから、ひがんでいたのだろう。
「ブサイクのくせに、強さや速さだけは桁違いだ。その強さは、外見と引き換えに悪魔から得たものだ」と、周囲の者からさんざん言われた...。
本当にひどい言われようさ。そんなことを言う群れの雌や兄弟を、族長である母様は咎めることはなかった。
父様は、無関心を決め込んでいた。ボクがどうなろうと、知ったこっちゃないという感じであった。
ごめんよ。愚痴ばっかりと喋って。でも、もうすこし付き合ってね。
場が静まり返った。メルも私と同じことを思ったでしょう。主様を緊張した面持ちで見つめている。主様は私たちをさげずむ者がいるのなら、この申し出を拒否しようとしている。
そんな...獣人国の国王様を治せば、莫大な利益を得ることが出来る。何でも手に入れることができ。名声、権力、お金、女性...。
私たちのような人国の最下層の者を気にする必要などないのに...。
自然と涙があふれた。私だけじゃない...。メルも同じだった。顔を蓋って嗚咽をあげている。
「主様!私たちのことは...」と言いかけた時、主様は「大事なことだ!クラリス。国王様が何だ?同じ命だ。俺もクラリスもメルも!何も変わらない。だから人国の様に外見にとらわれる者達ならば、この話はお断りさせて頂く」そう主様は、ロジンに対してはっきりと言い放った。
信じられない。異なる環境で育ったとはいえ、何かしらの欲望はあるはず。それにメルから聞いた。男性とは思えないほど性欲を持っているお方だと。
なら余計に、この話を断る必要なんてないはずなのに...。
私の思考がついていけない。働かない。でも、ただ一つ言えることは、この人は本当に素敵なお方だということ。ただただ、それだけだ...。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「私たち獣人は、そのようなことは決してございません!外見は骨と肉、皮が付いただけのもの。大事なのは内面です。確かに好みは存在しますが、人間のように外見に大きく影響されることはないのです!」と、大きな声でロジンは言い切った。
本心だろう。鑑定も「本心」と言っている。
「分かりました。出来る限りのことをしに獣人国へ行きましょう。ただし!100%治せるとは限りません。それだけはご了承して下さい」
「も、もちろんです!あ、あ、ありがどうございまず~」
ロジンとワイジン、そしてヨハンは、再び深々と俺に頭を下げた。
そして俺の元に、メルとクラリスが抱き付いてきた。「こんな私たちの為に!」とわんわん泣いている。
なんだかえらいことになってしまった。こんなはずではなかった。フェンリルを探しに来たはずが、男性の獣人を奴隷として受け入れ、国王を助ける約束までしてしまった...。
当初の目的のフェンリルはどこにいるんだ?元気だといいんだけど、早く探してあげないと...。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
???視点
はぁ~。今日も誰も来ないな。ボクはこのままご飯も、水も貰えないまま死んでいくのかな?まだ生まれてから16年ぐらいしか経っていないのに...。もう来世に期待するしかないか。まあ、来世があればだけどね。
でも...どうせブサイクと罵られるくらいなら、このまま死んでいくのも悪くないな。もう疲れた。最後まで愛情ってやつを受けることもなく、死んでいくんだな...。
本当に生まれた時からボクは不幸だった。目がまん丸で口吻が膨らみを帯び、そのくせ鼻が小さかった。すべてが美形とは真逆だ。兄様と姉様は目が吊り上がり細く、口吻は細く、鼻は非常に大きい。
ボクと違って美しかった。そして極めつけは、毛並みがボクだけ真白でふわふわでもこもこ。他の兄弟は灰色のロングストレート。毛並みまで嫌われてしまった。
フェンリルは、1匹の雌を中心とし、群れで生活をする。群れは10頭ほどが大半で、群れの中には雄が1~2頭くらいしかいない。人間同様、殆どが雌だ。
雌は、数少ない雄を他の雌たちと争って勝ち取る。力だけではなく、美貌も重要だ。力と美しさの両方が備わった者だけが、雄を獲得できる。非常に過酷な世界だ。
その戦いで勝ち得た者が雄と交尾をし、2~3頭の子供を宿す。
よく、族長である母様が「人族や獣人、魔物とは異なり、我々フェンリルは神に最も近い存在。どの魔物よりも俊敏で、強靭な肉体と優れた美貌を兼ね備えている。それがフェンリル一族だ」と言っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
母様は露骨にボクを嫌った。なぜかって?ボクがブサイクだからだ。「こんなブサイクな子を育てても、意味が無い」と、平気で言ってのけたらしい。だから、ボクにご飯を与えようとはしなかった。
要するに、ボクみたいなブサイクな者は、一族ではないと言わんばかりに、母様はことあるごとに、ボクの容姿を責めた...。
兄様と姉様、それに父様以外の群れの雌も、ボクの容姿をバカにした。ただ、ボクをバカにする理由は他にもある様だ。それは、同年代のどのフェンリルよりも、体力と攻撃力、俊敏さ、そして知力が優れていることだ。
つまり、力や賢さにおいてボクには敵わないから、ひがんでいたのだろう。
「ブサイクのくせに、強さや速さだけは桁違いだ。その強さは、外見と引き換えに悪魔から得たものだ」と、周囲の者からさんざん言われた...。
本当にひどい言われようさ。そんなことを言う群れの雌や兄弟を、族長である母様は咎めることはなかった。
父様は、無関心を決め込んでいた。ボクがどうなろうと、知ったこっちゃないという感じであった。
ごめんよ。愚痴ばっかりと喋って。でも、もうすこし付き合ってね。
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