Exスキル『能力100万倍』で、あべこべ世界で苦しむ奴隷達の『低価値スキル』を超優秀に!ただし、『性欲100万倍』の副作用付きですが...。

たけ

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第四章 「マリナ」のお店

第52話 ダイヤモンドよりも価値がありますよ!!

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 インリンが俺を呼び止め、「あたいたちの素顔をサラしちまった迷惑料だ。旦那!これを受け取ってくれ!」と言いながら、何かを俺に投げてきた。

 受け取った物を確認すると、それはダイヤの原石だと鑑定が教えてくれた。こんな貴重な物を、軽々しく投げるもんじゃないと思う...。

 それに、ただ素顔を見ただけで貰えるような代物じゃない。受け取れないわっ!

 「ね、姐さん、それって3日間の作業で見つけたものの中で、一番大きいものじゃないですか!」

 しかもサラに怒られているし...。ますます受け取れるか!

 「いいんだよ、あんたたち!あたいに恥をかかすんじゃないよ!旦那はあたいたちの命を奪わなかったんだ!!今持っている中で最高のものを差し出すってのが筋ってもんだろう!」とインリンは、「一攫千金」のメンバー全員に向けて力強く言い切った。

 そんなもんいらないわ...。ダイヤやお金なら、ドラリル一味からたんまりと頂いているからな。そして何度も言うが、俺は二人の可愛らしい顔や姿を見ただけだ。ダイヤの原石を貰う筋合いなどない...。

 「いらないよ。俺はただ、あんたとサラさんの顔を拝んだだけだし。あと、マスクとマントを拾っただけだ」と言いながら、この場から離れようとした。だが、インリンは俺の前に立ちふさがった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 「いや、あたいも旦那にあげるって決めたんだ。あたいの面子を潰さないでおくれよ!」とインリンは言い、ゆっくりと自分のつけているマスクを外した。

 一帯は静寂に包まれ、冷たい風が吹き抜ける音のみが耳に残る。周囲には俺の仲間や「一攫千金」のメンバーたちが沢山いるが、みんなが黙って俺たちのやりとりを見守っている。

 「本当にかい?」と言いながら、俺も真っ直ぐにインリンを見つめ返した。

 「ああ、このインリン様に二言はねえ!」と、彼女は力強く言い切り、その視線は1mmも俺の目線かららされることは無かった。

 ブサイクどころか、インリンは本当に美しくてかっこよかった。

  彼女の大きな瞳が真直ぐに俺を見つめてくる。その瞳の大きさに飲み込まれそうな感覚に陥る。これは...貰っておいた方が良いな。ありがたく頂いておくか。

 だが...。

 「分かった、受け取っておくよ。ありがとう、インリン。だが、インリン...条件がある」

 俺がそう言うと、インリンの表情は俺の言葉に合わせて変化する。

 「受け取る」と言った瞬間、インリンの表情は和らいだが、「条件がある」と告げると、インリンの顔には再び不安と哀愁が現れた。

 「も、もう二度と俺に関わるなと言いたいのかい...?」とインリンは寂しげに尋ね返した。

 そんなこと言わないって...。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ネガティブな思考に囚われているインリンに向けて、「『マリナのお店』で行われる俺たちの仲間の歓迎会に、もしよかったら『一攫千金』のみんなも参加してくれないか?代金はこいつから頂く。それでどうだい?」と提案しながら、インリンから受け取ったダイヤの原石を手のひらで軽く2回、空中に投げてみせた。

 それを近くで聞いていたメルは、「さすがはご主人様です!本当に男前です!」と両手をたわわに膨らむ胸の前で合わせ、俺を見つめる彼女の瞳には大きなハートマークが浮かんでいた。

 一方、クラリスは「思いやりとインリン様の想いをくんだ見事な返答です。さすがは我が主様です♡」と、俺の前で跪き、恍惚とした表情で熱い視線を向けて来る。

 クラリスからは、ピンクのオーラがだだ漏れしている、様な気がする...。

 コロも俺の脚をスルスルと上り、「くん!くん!」と鳴きながら、俺の頬をぺろぺろと舐めまわした。

 一方、インリンと「一攫千金」のメンバー達は、何が起こったのか理解できていないようだ。

 互いに目を合わせながら、「あたいたちを旦那たちが開く歓迎会に招待してくれるってこと...だよな?しかも、あたいたちの分も払ってくれるって...間違っていないよな?」と確認し合っている。

 「あ、あたいたちも、旦那たちの歓迎会に参加していいのかい?飯も奢ってくれるって、ほ、本気で言っているのかい?」とインリンは震える声で俺に尋ねた。

 不安が隠せない様子が見て取れる。それでも、どこか期待をしている心持ちもある。彼女の表情には、疑念と期待が入り混じっていた。

 「ああ、本気だよ。もちろん、そちら側がいいと言うならだ。嫌ならこいつは受け取らない。もし、お店が満員だったら、俺たちが今使っている屋敷まで来てくれればいい」と俺は答えた。さらに...。

 「ああ、もうその暑苦しいマスクは外しちゃいなよ。少なくとも、俺の前では必要ないよ」

 そう付け加えた。俺からすればみんな可愛い顔をしている。俺が傍にいる限り、彼女たちは表立って文句を言われることはないだろう。

 俺の言葉をインリンのそばで聞いていたサラは、めちゃくちゃ興奮し、喜びを爆発させた。

 「姐さん、本当に本気みたいですよ!あんなに素敵な男性とご飯を食べて、おごってもらえるなんて...。ダイヤモンドよりもずっと価値がありますよ!あの獣人のみなさんもかっこいいですし、何よりも、私たちのような者たちを見下さないみたですよ!姐さん、最高です!さすがです!」

 そう言いながら、サラはインリンに駆け寄り、満面の笑みを浮かべて抱きしめ、熱い言葉でインリンを誉めた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 興奮している「一攫千金」の仲間たちを見つめながら、インリンは俺に対して戸惑った表情を浮かべた。

 そして...。

 「ほ、本当にそれでいいのかい?あたいたちは嬉しくて、ついつい大量にお酒を飲んじまうよ?ご飯もたらふく食っちまうよ?あそこの飯はめちゃくちゃうまいからねぇ。それでもいいのかい?」と、少し気まずそうに尋ねてきた。

 インリンの言葉を受けて、俺はクラリスに「クラリス。俺たちも負けられないな!沢山食べないとな!」と笑顔で言った。それに対し、クラリスも微笑みながら「私も沢山食べますよ~。負けませんよ!」と笑顔で返して来た。

 そんな俺たちのやり取りを聞いて、周りの雰囲気が和やかになったようだ。たくさん食べて、いっぱい飲んで欲しい。ダイヤの原石何て、日本に持ち帰れば、いくらで売れるんだ?間違いなく今から行く食堂なんて、丸々買い取れちゃうだろう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 「さあ早く『マリナのお店』に行こう。仲間たちはお腹をすかしているんだ!」と言いながら、俺はインリンの手を少し強引に握った。

 一番お腹が空いているのは俺ですけどね...。

 すると、インリンは「えっ...ええ~!」と言った後、急に地面にへたり込んでしまった。

 な、何⁉

 「ど、どうしたんですか!姐さん!」と取り巻きが慌てて飛んできた。

 「旦那様...。大丈夫です。すみません。私たちが男性にれられることなんて無いですから...。ただ驚いて腰を抜かしたのだと思います。私が姐さんをおんぶします」とサラがインリンを背負った。

 「だ、旦那、いきなりは勘弁してくれよ。心臓が止まっちまうかと思ったよ。でも...旦那みたいな色男に触られて死ねるのなら、それも本望だけどさ...」と、最後は小さすぎて聞き取れなかったが、申し訳ないことをしてしまった。

 チーム「一攫千金」のメンバーたちは興奮を隠せず、「なあ、あたいたち、ナイメール星の女性たちが3番目に憧れる、「男性からご飯をおごってもらう」を、今からしてもらえるんだよ!どんなもんだい!」と周囲に自慢げに大声で話した。

 出た!ナイメール星の女性たちが憧れるシリーズ...。一体どれほどあるんだろうと一人思う智也であった。
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