Exスキル『能力100万倍』で、あべこべ世界で苦しむ奴隷達の『低価値スキル』を超優秀に！ただし、『性欲100万倍』の副作用付きですが...。

第四章 「マリナ」のお店

マリナのお店

 「「いえ～い！」」

　採掘チーム「一攫千金」のメンバーたちは、マスクを空に舞い上げた後、喜びを分かち合いながらハイタッチを交わしている。

　中には腰や手をを左右に振りながら陽気に踊っている者、その様子を見て指笛を鳴らし音頭をとる者など様々だ。とにかく、みんながとても盛り上がっている。

　凄く賑やかで明るい連中だ。俺からすればみんな、すごく可愛らしい顔をしている。ただし、体格は太っている者もいれば、190cmを超える者、筋肉質の者など様々だ。

インリンは寂しげに「あいつらは見た目が悪いからといって、二束三文で奴隷商に売られちまった者ばっかりさ...。でも、採掘作業を一生懸命やってる者は、あたいが引き取っているんだよ。自分と同じ境遇だ。見捨てられないだろう？」と呟いた。

　そんなインリンに向かって、「インリンは優しいんだな」と、俺は思ったことをそのまま口に出した。

　するとインリンは「そ、そんなことないよ。ほ、本当に、や、止めておくれよ...旦那。そんなことを言われたら、だ、旦那に惚れちまうよ...」と、顔を真っ赤にして、か細い声で俺に伝えた。

 「もう、とっくに惚れているじゃないですか」と、インリンを背負いながら、サラは呆れた表情でツッコミを入れた。

 「な、なんだと～！」と、インリンは更に真っ赤な顔をして、後ろからサラの首を両手でぐっと掴んだ。

 「ぐえっ！ちょっと、姐さん、落ち着いて下さい！大人しくおんぶされて下さいよ！」

 「うるせえ！よけいなことをぬかすんじゃねえ！」

　周囲からはに向けて大きな笑い声が上がった。しかし、楽しい連中だな。いい出会いに恵まれたな。

　インリンとサラを除く「一攫千金」のメンバーたちも、最初は俺の仲間たち、特に男性メンバーに対して緊張していたようだが、徐々に会話を楽しむようになった。

　カクにモリジン、それにヤーロンも非常に人気がある。俺の奴隷になった彼ら三人は、「一攫千金」の連中の外見を否定することはない。カクたちは俺がそのことを最も嫌うことを理解しており、何よりも、獣人は人族とは異なり、人の外見をそれほど重視しないようだ。

　あくまでも好みはあるにせよ、大切なのは中身と言った言葉に嘘はないようだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

　俺たちは和気あいあいとした雰囲気の中、「マリナのお店」へと歩を進めた。インリンも腰の具合が良くなったようで、サラから降りて自力で歩いている。

　空には美しい夕焼けが広がり、オレンジやピンクの色彩が空を染めている。心地良い風が吹き抜け、木々の葉がささやくように揺れる。

　ただ、一本路地を曲がると、突如として賑やかな人々の声が静寂を破り、耳に届いた。ここはメインストリートらしく、様々なお店が軒を連ねている。夕食の買い物をする者や外食に向かう人で、通りは今まで以上の賑わいを見せている。

　街は活気に満ちているが、大きな建物はほとんど見当たらない。あるとしても、それは3階建て程度だ。昭和時代の日本の商店街も、おそらくはこのような雰囲気だったはずだ。

　そんなことが俺の頭をよぎった時、インリンが「ああ、旦那、もう間もなく着くよ。あそこの大きな建物が、大衆食堂『マリナのお店』だよ」と教えてくれた。

 「へえ～、ログハウス風の大きな食堂だな」

　「マリナのお店」は、一見するとまるで森の中に佇むペンションようだ。建物は主に木材で作られており、温もりが感じられる。

　屋根には一本の煙突があり、そこから煙が立ち上っている。少し見にくいが、店の店名看板が入り口の扉の上に大きく掲げられているようだ。

 「この建物の2階には、大部屋といくつかの個室があるんだ。ただ、2階は店主のマリナが気に入った客にしか開放していないんだ。でも、あたいたちが一緒なら、マリナは2階を空けてくれると思うよ。あたい達は、ほぼ毎日ここで食事をしているから、特別に2階に上げてもらっているからさ」と、インリンは少し誇らしげに話した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

　インリンの話を聞きがら歩いていると、「マリナのお店」の正面入り口が見えてきた。

　えっ？

　俺は動きが止まった。一瞬ではなく数秒間...。

 「ど、どうなされましたか、主様？」

　俺の行動を心配したクラリスが、少し慌てたように話しかけてきた。

　そんなクラリスの声も聞こえないほど俺は驚いてしまった。

　だって、看板に「אܒجδאܒجδאܒجδאܒ」って書いてあるけど、その下に「麻璃奈マリナのお店」って書いてある！オイオイ...これって、漢字とひらがな...だよな。

　俺以外にも、こちらの世界に地球人がいるってことか...それも日本人が？

　もしかして...マリナは日本人なの？何でまた⁉

　しばらくの間、俺はさまざまな思考を巡らせながら、看板をじっと見つめていた。