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第四章 「マリナ」のお店
第65話 麻璃奈と美佳
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美佳の前で大泣きした麻璃奈は、その後、強い女性を演じるようになった。彼女は今までのおっとりとした本心を心の奥底深くに押し込み、強気で何でもできる女性を演じた。
このころから、麻璃奈は女優としての道を歩み始めていたのかもしれない。
芸能界で仕事をする関係者のほぼ全員がブサイクに見えた。そして、近寄られると体全体から嫌悪感と震え、悪寒が走った。大勢の人の前での水着での写真撮影やモデルとしての仕事なども舞い込んできた。
私の醜い身体に興味なんて本当にあるのかしら?と麻璃奈は、いつも不安に駆られていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
また、カッコイイという人たちから言い寄られた。私の好みでは無い人達ばかり...。「今は仕事が恋人です」と言って断り続けたが、中には力ずくで襲って来ようとする輩まで現れた。この時は手首を少し強く握り、尺骨にひびを入れてやった。
「いつでもこんな世界なんて、やめてもいいと思っているの。私を舐めないで...」と小声で言って、近くにあった鉄パイプを目の前で曲げて見せたら、相手は真っ青な顔をして逃げていった。
ちょっと力を強めるだけで、フライパンも折り曲げられる。それは麻璃奈にとって、朝飯前の出来事であった。
周りの男性たちの殆どがブサイクに見える。また、生理的にどうしても受け付けない。たまにカッコイイと思える男性に出会っても、マネージャーや知人などから、「あなたとは釣り合わないからやめておきなさい」と注意された。
そんなのお構いなしに付き合ってしまおうかと思ったが、確かに見た目はカッコイイが、オーラは陰湿でドス黒いものをまとっていたり、黒みがかったピンク色をしていたりと、あまり感じのいいものではなかった。
でもなぜだか、性欲は人一倍強かった。愛されたい...。抱かれたい...。SEXがしたい。好きな人とどんなにでも...と思っている。でも...私の周りに近寄ってくるのは、自分の生理的に合わない者たちばかり。自分で自分を慰める日が続いた。
本当はこんなに性欲が強いのに、誰かを欲したいのに...。そして、愛されたいのに...。
全てが嫌になった。何で私だけこんなに辛いの?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ストレスで大量の眠剤と精神安定剤に頼る日々だった。でも、女優業やグラビアアイドル業を止めるわけにはいかなかった。お金を稼いで、美佳や戸部に資金援助をするためにも...。
そんな中、楽しい仕事もあった。それはドラマの仕事であった。このドラマの中での私は、雷門葵役を演じることをとても楽しんでいた。その様子が視聴者に伝わったのか、私の一番のはまり役となった。
それからの私の仕事は、料理番組のアシスタントや、美味しい物を沢山食べるだけのお仕事、野菜作りや味噌や醤油作りを行う仕事が、なぜだかたくさん舞い込んだ。特に大食いのお仕事は大好きで、自分の身体を子ブタちゃんにできるチャンスだったし、食べるだけでお金をもらえた。
あと、児童養護施設時代のレシピ本を書いて欲しいという話まであった。「野菜と魚メインで太ることができませんよ」と言うと、それがいいと言われ、それならと書いた。それが何とベストセラー。本当に自分の感性とは違う土地にいるんだと思った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
15歳から女優業や、料理番組、大食い、グラビア写真集、執筆活動などを精力的にこなした結果、お金はたまった。ただし、精神を安定させるために、安定剤や睡眠薬を乱用した。
私の精神と引き換えにたまったお金の殆どは、「清い水」や、美佳のために使うことにした。お金には興味はない。元々使うことに慣れていないから。それに、私の働いたお金で「清い水」の経営も安定するだろうし、施設の子供たちが大学や専門学校に進学するための資金も当面困らないだろう。
美佳は私の資金援助を受けて、デザインが学べる高校に通った。そして、ロケや大食い番組の時には彼女が作った服を常に身にまとった。また、美佳の学校が休みの日には、私のスタイリストとして仕事に同行してもらった。
美佳も平日は学業と作品制作、休日は私の仕事に同行と、目が回るほど忙しかっただろう。それでも美佳は、一切弱音を吐かなかった。
それどころか、ものすごく感謝をされた。「生きた現場で学べるし、うちの作った物を色んな番組で着てくれて。本当にありがとう!作品に自信がなかったけど、麻璃奈が着ると、何でも最先端な作品に見えちゃうから、色々なメディアに取り上げてもらえるよ!」と喜んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
美佳はファッションの才能を発揮し、順調にキャリアを積んでいった。私の事務所には、「麻璃奈が着ている服のブランドを教えて!」という問い合わせが毎日、数百件も届いた。
彼女は若手の売れっ子デザイナーとして注目を浴びたが、それは私が彼女の作品を着ていたからだけではない。彼女には元々センスがあったのだ。
あとは彼女の努力次第だと思う。美佳は3週間ほどパリで仕事をするらしい。
私は笑顔で美佳に「芸能界から引退する」と告げた。久しぶりに食事を共にした美佳は驚いた表情を浮かべたが、私は外国で農場を営むつもりだと打ち明けた。
それを聞いた美佳は、「もちろん応援するわ」と微笑んでくれた。
あと「清い水」には私から定期的に寄付金を送ると約束した。ただ、「デザイナーとして不動の地位を築いたら、美佳、『清い水』の事を頼むわよ」とお願いをした。
そして今日、空港のラウンジで「あなたに会えてよかった。そしてありがとう」と美佳に告げ、空港で分かれた。
さあ、もう少しで引退だ。事務所の社長にはきちんと告げてあるし、契約も20歳でやめるとしっかりと交わしている。15歳から始めた芸能活動も、もう6年も経ったんだ。はー、色々あった。でも...もう疲れた。外国行くなんて嘘。ごめんね美佳...。
このころから、麻璃奈は女優としての道を歩み始めていたのかもしれない。
芸能界で仕事をする関係者のほぼ全員がブサイクに見えた。そして、近寄られると体全体から嫌悪感と震え、悪寒が走った。大勢の人の前での水着での写真撮影やモデルとしての仕事なども舞い込んできた。
私の醜い身体に興味なんて本当にあるのかしら?と麻璃奈は、いつも不安に駆られていた。
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また、カッコイイという人たちから言い寄られた。私の好みでは無い人達ばかり...。「今は仕事が恋人です」と言って断り続けたが、中には力ずくで襲って来ようとする輩まで現れた。この時は手首を少し強く握り、尺骨にひびを入れてやった。
「いつでもこんな世界なんて、やめてもいいと思っているの。私を舐めないで...」と小声で言って、近くにあった鉄パイプを目の前で曲げて見せたら、相手は真っ青な顔をして逃げていった。
ちょっと力を強めるだけで、フライパンも折り曲げられる。それは麻璃奈にとって、朝飯前の出来事であった。
周りの男性たちの殆どがブサイクに見える。また、生理的にどうしても受け付けない。たまにカッコイイと思える男性に出会っても、マネージャーや知人などから、「あなたとは釣り合わないからやめておきなさい」と注意された。
そんなのお構いなしに付き合ってしまおうかと思ったが、確かに見た目はカッコイイが、オーラは陰湿でドス黒いものをまとっていたり、黒みがかったピンク色をしていたりと、あまり感じのいいものではなかった。
でもなぜだか、性欲は人一倍強かった。愛されたい...。抱かれたい...。SEXがしたい。好きな人とどんなにでも...と思っている。でも...私の周りに近寄ってくるのは、自分の生理的に合わない者たちばかり。自分で自分を慰める日が続いた。
本当はこんなに性欲が強いのに、誰かを欲したいのに...。そして、愛されたいのに...。
全てが嫌になった。何で私だけこんなに辛いの?
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ストレスで大量の眠剤と精神安定剤に頼る日々だった。でも、女優業やグラビアアイドル業を止めるわけにはいかなかった。お金を稼いで、美佳や戸部に資金援助をするためにも...。
そんな中、楽しい仕事もあった。それはドラマの仕事であった。このドラマの中での私は、雷門葵役を演じることをとても楽しんでいた。その様子が視聴者に伝わったのか、私の一番のはまり役となった。
それからの私の仕事は、料理番組のアシスタントや、美味しい物を沢山食べるだけのお仕事、野菜作りや味噌や醤油作りを行う仕事が、なぜだかたくさん舞い込んだ。特に大食いのお仕事は大好きで、自分の身体を子ブタちゃんにできるチャンスだったし、食べるだけでお金をもらえた。
あと、児童養護施設時代のレシピ本を書いて欲しいという話まであった。「野菜と魚メインで太ることができませんよ」と言うと、それがいいと言われ、それならと書いた。それが何とベストセラー。本当に自分の感性とは違う土地にいるんだと思った。
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15歳から女優業や、料理番組、大食い、グラビア写真集、執筆活動などを精力的にこなした結果、お金はたまった。ただし、精神を安定させるために、安定剤や睡眠薬を乱用した。
私の精神と引き換えにたまったお金の殆どは、「清い水」や、美佳のために使うことにした。お金には興味はない。元々使うことに慣れていないから。それに、私の働いたお金で「清い水」の経営も安定するだろうし、施設の子供たちが大学や専門学校に進学するための資金も当面困らないだろう。
美佳は私の資金援助を受けて、デザインが学べる高校に通った。そして、ロケや大食い番組の時には彼女が作った服を常に身にまとった。また、美佳の学校が休みの日には、私のスタイリストとして仕事に同行してもらった。
美佳も平日は学業と作品制作、休日は私の仕事に同行と、目が回るほど忙しかっただろう。それでも美佳は、一切弱音を吐かなかった。
それどころか、ものすごく感謝をされた。「生きた現場で学べるし、うちの作った物を色んな番組で着てくれて。本当にありがとう!作品に自信がなかったけど、麻璃奈が着ると、何でも最先端な作品に見えちゃうから、色々なメディアに取り上げてもらえるよ!」と喜んだ。
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美佳はファッションの才能を発揮し、順調にキャリアを積んでいった。私の事務所には、「麻璃奈が着ている服のブランドを教えて!」という問い合わせが毎日、数百件も届いた。
彼女は若手の売れっ子デザイナーとして注目を浴びたが、それは私が彼女の作品を着ていたからだけではない。彼女には元々センスがあったのだ。
あとは彼女の努力次第だと思う。美佳は3週間ほどパリで仕事をするらしい。
私は笑顔で美佳に「芸能界から引退する」と告げた。久しぶりに食事を共にした美佳は驚いた表情を浮かべたが、私は外国で農場を営むつもりだと打ち明けた。
それを聞いた美佳は、「もちろん応援するわ」と微笑んでくれた。
あと「清い水」には私から定期的に寄付金を送ると約束した。ただ、「デザイナーとして不動の地位を築いたら、美佳、『清い水』の事を頼むわよ」とお願いをした。
そして今日、空港のラウンジで「あなたに会えてよかった。そしてありがとう」と美佳に告げ、空港で分かれた。
さあ、もう少しで引退だ。事務所の社長にはきちんと告げてあるし、契約も20歳でやめるとしっかりと交わしている。15歳から始めた芸能活動も、もう6年も経ったんだ。はー、色々あった。でも...もう疲れた。外国行くなんて嘘。ごめんね美佳...。
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