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第五章 ランバート採掘場
閑話1-3 モリジン一行の帰省
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「マーデンテ村長!我が主様から預かっている品があります。これは、この村、いや、近隣で飢えている村に分け与えなさいと、我が主様から指示されたものです」
そう言った後、ヤーロンは大切そうに懐からポーチを取り出し、村長のマーデンテの前に差し出した。
ヤーロンが懐から取り出したポーチを恐る恐る受け取るマーデンテ村長だったが、その品を見た途端、その手はピタリと止まり、全身を震わせた。
「こ、これはマジックポーチじゃないか!ど、奴隷にマジックポーチを渡すなんて、なんて太っ腹なご主人様なんだい⁉」
村長は驚きのあまり手が震え、うまく受け取れない様うだ。
無理もない。この村では、マジックポーチなど今や存在しないのだから...。
我々獣人は魔法が苦手だから、マジックポーチは買うしかない。それに、以前この村にも一つだけあったが、食糧難に陥った時にすぐ売ってしまった。そんな貴重なモノを奴隷に持たせるなんて、一体どんなご主人様なんだろう...。
ああ、そうか...。
首輪を重く無骨なものから軽いチョーカータイプに変え、正式契約した日には歓迎会を開いて酒をふるまい、好きな武器を与えるほどのお人好しだった。
村長はおろおろと巨体を震わせ、表情には不安と驚きが色濃く浮かんでいる。ようやくヤーロンからマジックポーチを受け取ると、その手は激しく震えていた。
村長の姿から伝わる不安と驚きが、彼女の表情や仕草に鮮明に現れていた。
「わ、私が開けていいのかい?」
村長は声を震わせながら周囲に問いかけた。周りにいる者たちを不安そうにきょろきょろと見回すが、誰も視線を返さず、ただただ村長が開けるのをじっと待っている。
「じゃ、じゃあ空けるよ!」と村長が緊張した声で叫ぶと、周りの村人たちが一斉に息を呑んだ。村長の一挙手一投足に、全員の視線が釘付けになった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
マーデンテ村長がマジックポーチの中を覗き込むと、目を見開き驚愕の表情を浮かべた。「な、なんだいこれは!!」と声を張り上げると、マジックポーチを握りしめたまま後ろに倒れそうになった。その瞬間、近くにいた村びとたちは慌てて駆け寄り、二人がかりで村長の身体を支えた。
村長は二人の村人に支えられたまま、驚きと興奮が入り混じった声で叫んだ。「ソルガムやじゃがいもが大量にあるじゃないか!それに、たっぷりの塩にコショウ、お、お酒に肉、魚、それにお菓子まで!」彼女の顔は真っ青になり、手の震えが一層激しくなっていた。「そ、それに、このマジックポーチは...」
今度こそ本当に足腰に力が入らなくなったようで、村長を支えていた村人たちとともに、その場に崩れ落ちた。
村長はへたり込んだままの姿勢で、マジックポーチを頭上に突き上げ、「こ、これは時間停止機能付きのポーチじゃないかい⁉ か、蟹が動いているよ!!ただのマジックポーチの何十倍の価値がある代物じゃないかい!!」と顔面を真っ白にしながら、何度もカクやモリジンを見返す。
村長が慌てふためく中、モリジンが落ち着いた声で答えた。「我が主様は、このポーチをこの村に置いておくようにと仰せです。そして、『中身が無くなったらまた補充するので、遠慮なく食べて下さい』とも言われました」
モリジンは村人たちを見渡し、一息ついてから再び話し始めた。「近隣の村にも食糧を分ける許可を得ています。さらに、来月にも休みを頂けることになっており、その時に再度食糧を持ってくることができます!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その言葉に、皆は一瞬で静まり返った。お祭り騒ぎがまるでウソのように止まった。しかし、その静まりの反動はすさまじく...。辺りは再びざわつき出した。
「ってことは、もう俺たちは食料に困らないってことか?」
「飢えで苦しむことはなくなるのか?」
「もう、モリジン達のように、仲間を売りに出さなくて済むってこと...だよね?」
さらに、モリジンの言葉を聞いた村長は驚きと興奮を抑えきれず、モリジンに向かって駆け寄り、「ほ、本当なのかい⁉」と大声で問い詰めた。
その両目は、普段はしわで隠れているが、今は完全に見開かれていた。村長のこんな姿を見るのは初めてだった。
手が震えてマジックポーチの中身がとり出せなってしまった村長の代わりに、ヤーロンやカク、モリジンが次々に食材を取り出す。
大量のソルガムやじゃがいもに加え、黄金色に輝く見たことのない美味しそうな食べ物まで!
すごくいい匂いがする♡
獣人は鼻が利く。ここに集まっている皆も、嗅いだことのない美味しそうな臭いにもうメロメロ♡凄い!湯気が立っているよ♡アツアツだ♡本当に何が起こっているか訳が分からないよ...♡
「さあ、みんな!我ら主様からの贈り物だ!どんどん食べて、明日からの英気を養おう!!もう食糧難を恐れる必要はない!我ら主様を信じるんだ!!」
モリジンは次々とマジックポーチから食材を取り出しながら言った。
モリジン、カッコイイ♡さすが私のモリジン♡
モリジンの言葉で場が再び活気づいた。
「うわ!」
「モリジンお兄ちゃんすごい!!」
「智也様、ばんざーい!!」
「食糧、ばんざーい!」
「もう、干ばつなんて怖くないぞ!」
「俺たちの村だけじゃない、今まで助け合ってきた村たちも救ってやれるぞ!」と、ヤーロンがモリジンに負けない声で叫んだ。
三人の英雄はみんなからもみくちゃにされている。まあ、ただでさえそれぞれが美男子だし、村の女性たちの目はもう♡マークだ。
ちょ、ちょっと、私のモリジンに色目使っちゃダメだよ!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「さあ、三人の帰省祝いを始めるよ!みんな、準備をするよ!」
マーデンテ村長の掛け声が響くと、みんなが興奮した様子で「おお!!」と叫び、お祭りの準備に取りかかった。
村の広間は即席のお祭りのメイン会場となった。村人たちは大きなテーブルや椅子を運び込み、広間は賑やかな雰囲気に包まれた。
各自にソルガムやじゃがいも料理が配られ、そして少量の干し肉や唐揚げ、それにおにぎりも半分ずつ分けられた。お酒やジュースもコップ一杯ずつ配られ、その光景を見てみんなが笑顔になった。
いつぶりだろう...。干し肉にお酒なんて...。信じられないよ。 またみんなでこんな贅沢な宴会が開けるなんて...。
今回は、食料が豊富で、飲み放題・食べ放題にしても十分な量がマジックポーチに入っている。しかし、近隣の村々はまだ飢えで苦しんでいる。自分たちだけが余るほど食べるわけにはいかない。これまでも、獣人国のみんなで助け合ってきたのだから。
だからこそ、ささやかな幸せを楽しんだ後は、近隣の村々にもおすそ分けをすることを、村人全員の思いで決めた。
反対する者などいなかった。
塩が無くなって困っていた時、鷲人の村が惜しみなく分け与えてくれた。あの時の優しさには本当に救われた。
また、犬人の村にはこの近隣唯一のドクター、”ドクターわんさん”がいて、よくうちの村にも来てくれる。彼の診察がどれだけ助けになったことか。困っている時こそ助け合わなければ、罰が当たってしまう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「さあさあ、村長、宴会の開始の挨拶をしておくれよ!」と村人たちが村長に開始の挨拶を催促する。
目の前には久しぶりのごちそう。みんなが口いっぱいにほおばりたくてうずうずしている様子が見て取れる。よだれを飲み込みながら、ごちそうを前にお腹がギュルギュル~と鳴っている。
「今日は本当にめでたい日だ。あまり回りくどいことは言わないよ!私も早く食べたいからね!さあ、みんな!カップを持っておくれよ!喜びを分かち合おう!乾杯だ!」
村長の威勢のいい言葉に合わせるかのように、みんなも「「カンパーイ!!」」と周囲の者と嬉しそうにカップを打ち合わせる音が村中に響き渡った。
おかえり、みんな... おかえり、私の大切な人、モリジン...。
この瞬間がどれほど待ち望んでいたことか。胸が熱くなり、涙がこぼれそうになる。
嬉しい!また、モリジンと未来を一緒に歩けるんだ!
私は決めた! 私もモリジンが尊敬してやまない智也様の元で仕えよう!そうすれば、モリジンの傍でずっと一緒にいられるのだ!
そんな決意を胸に、隣に座るモリジンとカップを鳴らした。その瞬間、二人の目が合い、互いに心からの笑顔を浮かべた。新たな希望に満ちたこの瞬間が、永遠に続くことを願って。
そう言った後、ヤーロンは大切そうに懐からポーチを取り出し、村長のマーデンテの前に差し出した。
ヤーロンが懐から取り出したポーチを恐る恐る受け取るマーデンテ村長だったが、その品を見た途端、その手はピタリと止まり、全身を震わせた。
「こ、これはマジックポーチじゃないか!ど、奴隷にマジックポーチを渡すなんて、なんて太っ腹なご主人様なんだい⁉」
村長は驚きのあまり手が震え、うまく受け取れない様うだ。
無理もない。この村では、マジックポーチなど今や存在しないのだから...。
我々獣人は魔法が苦手だから、マジックポーチは買うしかない。それに、以前この村にも一つだけあったが、食糧難に陥った時にすぐ売ってしまった。そんな貴重なモノを奴隷に持たせるなんて、一体どんなご主人様なんだろう...。
ああ、そうか...。
首輪を重く無骨なものから軽いチョーカータイプに変え、正式契約した日には歓迎会を開いて酒をふるまい、好きな武器を与えるほどのお人好しだった。
村長はおろおろと巨体を震わせ、表情には不安と驚きが色濃く浮かんでいる。ようやくヤーロンからマジックポーチを受け取ると、その手は激しく震えていた。
村長の姿から伝わる不安と驚きが、彼女の表情や仕草に鮮明に現れていた。
「わ、私が開けていいのかい?」
村長は声を震わせながら周囲に問いかけた。周りにいる者たちを不安そうにきょろきょろと見回すが、誰も視線を返さず、ただただ村長が開けるのをじっと待っている。
「じゃ、じゃあ空けるよ!」と村長が緊張した声で叫ぶと、周りの村人たちが一斉に息を呑んだ。村長の一挙手一投足に、全員の視線が釘付けになった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
マーデンテ村長がマジックポーチの中を覗き込むと、目を見開き驚愕の表情を浮かべた。「な、なんだいこれは!!」と声を張り上げると、マジックポーチを握りしめたまま後ろに倒れそうになった。その瞬間、近くにいた村びとたちは慌てて駆け寄り、二人がかりで村長の身体を支えた。
村長は二人の村人に支えられたまま、驚きと興奮が入り混じった声で叫んだ。「ソルガムやじゃがいもが大量にあるじゃないか!それに、たっぷりの塩にコショウ、お、お酒に肉、魚、それにお菓子まで!」彼女の顔は真っ青になり、手の震えが一層激しくなっていた。「そ、それに、このマジックポーチは...」
今度こそ本当に足腰に力が入らなくなったようで、村長を支えていた村人たちとともに、その場に崩れ落ちた。
村長はへたり込んだままの姿勢で、マジックポーチを頭上に突き上げ、「こ、これは時間停止機能付きのポーチじゃないかい⁉ か、蟹が動いているよ!!ただのマジックポーチの何十倍の価値がある代物じゃないかい!!」と顔面を真っ白にしながら、何度もカクやモリジンを見返す。
村長が慌てふためく中、モリジンが落ち着いた声で答えた。「我が主様は、このポーチをこの村に置いておくようにと仰せです。そして、『中身が無くなったらまた補充するので、遠慮なく食べて下さい』とも言われました」
モリジンは村人たちを見渡し、一息ついてから再び話し始めた。「近隣の村にも食糧を分ける許可を得ています。さらに、来月にも休みを頂けることになっており、その時に再度食糧を持ってくることができます!」
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その言葉に、皆は一瞬で静まり返った。お祭り騒ぎがまるでウソのように止まった。しかし、その静まりの反動はすさまじく...。辺りは再びざわつき出した。
「ってことは、もう俺たちは食料に困らないってことか?」
「飢えで苦しむことはなくなるのか?」
「もう、モリジン達のように、仲間を売りに出さなくて済むってこと...だよね?」
さらに、モリジンの言葉を聞いた村長は驚きと興奮を抑えきれず、モリジンに向かって駆け寄り、「ほ、本当なのかい⁉」と大声で問い詰めた。
その両目は、普段はしわで隠れているが、今は完全に見開かれていた。村長のこんな姿を見るのは初めてだった。
手が震えてマジックポーチの中身がとり出せなってしまった村長の代わりに、ヤーロンやカク、モリジンが次々に食材を取り出す。
大量のソルガムやじゃがいもに加え、黄金色に輝く見たことのない美味しそうな食べ物まで!
すごくいい匂いがする♡
獣人は鼻が利く。ここに集まっている皆も、嗅いだことのない美味しそうな臭いにもうメロメロ♡凄い!湯気が立っているよ♡アツアツだ♡本当に何が起こっているか訳が分からないよ...♡
「さあ、みんな!我ら主様からの贈り物だ!どんどん食べて、明日からの英気を養おう!!もう食糧難を恐れる必要はない!我ら主様を信じるんだ!!」
モリジンは次々とマジックポーチから食材を取り出しながら言った。
モリジン、カッコイイ♡さすが私のモリジン♡
モリジンの言葉で場が再び活気づいた。
「うわ!」
「モリジンお兄ちゃんすごい!!」
「智也様、ばんざーい!!」
「食糧、ばんざーい!」
「もう、干ばつなんて怖くないぞ!」
「俺たちの村だけじゃない、今まで助け合ってきた村たちも救ってやれるぞ!」と、ヤーロンがモリジンに負けない声で叫んだ。
三人の英雄はみんなからもみくちゃにされている。まあ、ただでさえそれぞれが美男子だし、村の女性たちの目はもう♡マークだ。
ちょ、ちょっと、私のモリジンに色目使っちゃダメだよ!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「さあ、三人の帰省祝いを始めるよ!みんな、準備をするよ!」
マーデンテ村長の掛け声が響くと、みんなが興奮した様子で「おお!!」と叫び、お祭りの準備に取りかかった。
村の広間は即席のお祭りのメイン会場となった。村人たちは大きなテーブルや椅子を運び込み、広間は賑やかな雰囲気に包まれた。
各自にソルガムやじゃがいも料理が配られ、そして少量の干し肉や唐揚げ、それにおにぎりも半分ずつ分けられた。お酒やジュースもコップ一杯ずつ配られ、その光景を見てみんなが笑顔になった。
いつぶりだろう...。干し肉にお酒なんて...。信じられないよ。 またみんなでこんな贅沢な宴会が開けるなんて...。
今回は、食料が豊富で、飲み放題・食べ放題にしても十分な量がマジックポーチに入っている。しかし、近隣の村々はまだ飢えで苦しんでいる。自分たちだけが余るほど食べるわけにはいかない。これまでも、獣人国のみんなで助け合ってきたのだから。
だからこそ、ささやかな幸せを楽しんだ後は、近隣の村々にもおすそ分けをすることを、村人全員の思いで決めた。
反対する者などいなかった。
塩が無くなって困っていた時、鷲人の村が惜しみなく分け与えてくれた。あの時の優しさには本当に救われた。
また、犬人の村にはこの近隣唯一のドクター、”ドクターわんさん”がいて、よくうちの村にも来てくれる。彼の診察がどれだけ助けになったことか。困っている時こそ助け合わなければ、罰が当たってしまう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「さあさあ、村長、宴会の開始の挨拶をしておくれよ!」と村人たちが村長に開始の挨拶を催促する。
目の前には久しぶりのごちそう。みんなが口いっぱいにほおばりたくてうずうずしている様子が見て取れる。よだれを飲み込みながら、ごちそうを前にお腹がギュルギュル~と鳴っている。
「今日は本当にめでたい日だ。あまり回りくどいことは言わないよ!私も早く食べたいからね!さあ、みんな!カップを持っておくれよ!喜びを分かち合おう!乾杯だ!」
村長の威勢のいい言葉に合わせるかのように、みんなも「「カンパーイ!!」」と周囲の者と嬉しそうにカップを打ち合わせる音が村中に響き渡った。
おかえり、みんな... おかえり、私の大切な人、モリジン...。
この瞬間がどれほど待ち望んでいたことか。胸が熱くなり、涙がこぼれそうになる。
嬉しい!また、モリジンと未来を一緒に歩けるんだ!
私は決めた! 私もモリジンが尊敬してやまない智也様の元で仕えよう!そうすれば、モリジンの傍でずっと一緒にいられるのだ!
そんな決意を胸に、隣に座るモリジンとカップを鳴らした。その瞬間、二人の目が合い、互いに心からの笑顔を浮かべた。新たな希望に満ちたこの瞬間が、永遠に続くことを願って。
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
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