Exスキル『能力100万倍』で、あべこべ世界で苦しむ奴隷達の『低価値スキル』を超優秀に!ただし、『性欲100万倍』の副作用付きですが...。

たけ

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第五章 ランバート採掘場

閑話1-2 モリジン一行の帰省

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 ムカリウス視点

 「みんな、戻って来たよ。久しぶりだね」

 三人が村門から中に入ると、村人たちは歓声を上げ、もみくちゃにして迎え入れた。ここ最近、すっかり静まり返ったジャイダ村では、クワで畑を耕す音や、女たちの愚痴やため息ぐらいしか聞こえなかった。

 しかし今日は、その静寂を破り、村全体が歓声と喜びの声で溢れかえった。若者からお年寄りまで、まるでお祭りのような賑わいだ。

 そんな中、ヤーロンの両親が堪えきれず、「ほ、本当にヤーロンなんだね?」と声を震わせながら抱き付き、大声をあげて泣き出した。

 その感動的な場面に、周りに集まった村人たちも思わず涙ぐむ。涙を流しながらも、皆の表情は喜びの笑顔で溢れていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 村門付近の騒ぎを聞きつけ、ジャイダ村の村長、マーデンテ村長が急いで駆けつけた。村長は三人の姿を見た瞬間、驚きと喜びが交錯した表情を浮かべた。

 モリジン、カク、ヤーロンはマーデンテ村長の前でヒザマズき、「カク、ヤーロン、モリジンです!我が主より一時帰省の恩情を頂き、戻って来ました!」と、モリジンが力強く村長に伝えた。

 その言葉は村長の耳、いやここにいる全員にしっかりと届いた。

 モリジンの力強い言葉に、村人たちは再び「おかえり!」と大歓声を上げた。村全体が歓喜の嵐に包まれたように揺れ動いた。

 村人たちは手を振り上げ、抱き合い、涙を流しながらも笑顔を浮かべ、喜びに満ちた表情を見せていた。

 人々は即席で手拍子を打ち鳴らし、指笛を吹き、さらには感情を抑えきれずに踊り出す者まで現れた。もちろん、私、ムカリウスもその喜びの渦の中に身を委ねていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 このまま村門の前にいても話が進まないと、三人はマーデンテ村長宅へと案内された。私やモーリンも、ぜひ聞いて欲しいというモリジンやカクの強い要望により、話し合いへの同席が許可された。

 村長は今でこそしわしわのお祖母ちゃんだが、若いころは美しくて勇敢だったそうだ。さらに、彼女は魔物を狩って村人たちに振る舞うほどの気前の良さもあり、その名声はこの辺り一帯で広く知れ渡っていたと聞く。

 しかし、そんな村長も、三人が性奴隷として売られていった時、その深い悲しみに押しつぶされていた。彼女は、「村長失格だよ。未来ある若者を性奴隷として送り出すなんて」と絶望の中で肩を落とし、涙で滲む目を伏せた。

 そんな性奴隷として旅立ったはずの三人が今、穏やかな微笑みを浮かべながら自分の前に座っている。マーデンテの心には驚愕と歓喜だけでなく、疑心、安堵、戸惑いなどの複雑な想いが交錯し、その表情には様々な感情が入り混じっていた。

 そう、当事者三人以外は、一時とはいえ一度性奴隷として旅立った者がなぜ帰ってこれたんだ?と言う疑念と驚きが頭の中で渦巻き、様々な想像が膨らむも、結論には至らない。

 一度奴隷に落とされた者は二度と故郷に戻れないのが宿命。特に性奴隷は使い潰されて命を落とす悲しい運命しかないはずなのに..。

 私を含め、この場に居合わせた者たちは、そのことを聞きたかった。しかし、自ら問いただすことなど到底できない。ただただ、私たちは無言のまま、三人が話し始めるのをじっと待っていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 モリジンたちは周囲が「なぜ奴隷に落ちたのに無事戻ってこれたのか?」と聞きたがっていることを察したかのように、優しく微笑んでから、「さて...何から話そうか?」と私たちに問いかけた。

 モリジンの眼差しは思慮深く、次に語るべき言葉を慎重に選んでいるようだった。

 「詳しいことは、あまり言えないのですが...」と最初に断った後、モリジンは三ヶ月前にこの村を離れてからの出来事について、私たちに話し始めた。

 モリジン達を性奴隷として買った主人が、悪名高いドラリル一味であった。三人は薬を盛られ、死ぬ寸前まで追い詰められたが、その時に現在の主である智也様に救われたと、ポリポリと頭を掻きむしりながら私たちに語った。

 その後、智也様と正式な奴隷契約を結び、現在は護衛奴隷として智也様の元で働いていると、簡潔に語った。

 モリジンの話が終わると、ヤーロンはにっこりと微笑み浮かべ、付け加えるように話し始めた。

 「まだ、正式な奴隷契約を結んで頂いたのは昨日のことなんです。大して働いていないのに、昨晩ここに来る前に歓迎会を開いてもらって、村に帰ることも許して頂けたんです」と、嬉しそうに語った。

 その表情には、感謝と喜びが溢れていた。

 カクも「そうだよ、美味しかったよな。あのラーメンとかいう麺も。お酒だって村に帰るから少しだけにしたけど、いくらでも飲んでいい雰囲気だったよな!」と嬉しそうに合いの手をはさんだ。

 そんな三人を、私たちは呆気にとられた表情で見つめていた。

 せ、正式な奴隷契約は昨日⁉

 働きもしていないのに歓迎会?

 奴隷の歓迎会って何なの⁉

 ラーメンってなに⁉

 お酒をいくらでも飲んでいい...⁉

 何を言っているのこの三人は⁉私たちよりいいもん食べて飲んでいるじゃない?

 ドラリル一味に盛られた薬がまだ残っているんじゃないかと心配になるような発言をする三人を、じっと見つめた。

 しかし、どうやらその話は事実のようだ。

 何よりもまず、三人がこの村に戻って来ているという現実が証拠だし、その首には軽そうなチョーカータイプの首輪をはめている。

 軽そうなチョーカーの首輪は、主人がその奴隷を気に入っている証拠だ。通常の奴隷には、武骨で重たい首輪が一般的だ。

 三人とも「自分で好きなものを選びなさい」と言われ、自ら選んだとのことだ。

 それにしても、あの服装は何なの?この村では見かけない上等な生地を使った服を着ていて、本当に素敵でカッコいい。

 さらに、腰からはきらびやかな得物を三人ともぶら下げている。

 私がモリジンの腰にぶら下がっている得物をじっと見つめていると、彼は得意げに「これが気になるのかい?これは主様が私たちに護衛奴隷としての証として授けて下さったものなんだ!」と教えてくれた。

 モリジンはとても嬉しそうで、私もなんだか嫉妬しちゃう。三人の瞳からは、智也様にべた惚れの様子が伺えた。

 ね、ねえ?主様って、そっちの趣味はない方だよね...⁉大丈夫かな?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 マーデンテ村長やモーリンが呆気に取られている。もちろん私もだが。

 そんな空気が村長宅の客室に広がると、三人と話したくて待ちきれない子供たちが家の外からモリジンやカクに駆け寄り、「お兄ちゃんたち、お帰り!!」と嬉しそうに抱き付いた。

 その無邪気な姿に、止まっていた時間が再び動き出した。「そうだよ!とにかく、無事に帰ってこれたんだ。今日は村を上げての宴会だよ!!と村長が大きな声を張り上げた。

 「やった!!宴会だ!」と子供たちが飛び跳ねながら喜ぶ。

 村長もその光景に笑顔を浮かべながら、「皆の衆、今日は特別だ!いつものじゃがいもとソルガムに加えて、とっておきの干し肉を出そうじゃないかい!」と大声で宣言した。

 村長宅を取り囲んで三人を心配していた村人たちは、その言葉に大いに沸き、歓声を上げた。

 「おお、宴会だ!!」

 「久しぶりに、干し肉が食べられるぞ!!」

 「塩も、いつもより多いかもしれないな⁉コショウも出るかな?」

 「馬鹿!出るわけないだろう?干し肉が出るだけでも、凄いことだよ!」

 みんな嬉しそう。

 豚族の村では、三人が身を売って得た貴重なお金でじゃがいもやソルガム、調味料、そしてわずかばかりの干し肉を買った。

 普段の生活は質素だが、催事の時だけは少しだけ贅沢をする。塩やコショウを普段より多めに使い、本当に特別な日には、特別に備えた干し肉を少しだけ出す。

 しかし、三人が性奴隷として売られてからというもの、一度たりとも干し肉を口にすることはなかった。

 だから皆がウキウキだ。私も自然と微笑んでしまう。

 こ、これは決して干し肉が楽しみだからではないわ。モリジン達が帰ってきてくれたから。本当だからね...。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 みんなが騒ぎ立てる中、ヤーロンが突然大きな声で、「我が主様から村の皆に分け与えるようにと預かって来た物があります!」と言った。その声はこの場にいる全員に響き渡った。

 その瞬間、騒ぎがぴたりとやみ、全員の視線がヤーロンに集まった。

 な、何、まだ何かあるの⁉

 これ以上驚いたら、絶対腰を抜かしちゃうと思う。でも知りたい。こんな驚きなら、どんなことでも受け入れるわ。

 でも...私も惚れちゃいそう、三人の主様に。ウソウソ、やっぱりモリジンが一番ね。多分...。

 この後に続くヤーロンの言葉にさらに驚く村人たち。もちろん、幸せムードの私も、その中の一人であった。
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