Exスキル『能力100万倍』で、あべこべ世界で苦しむ奴隷達の『低価値スキル』を超優秀に!ただし、『性欲100万倍』の副作用付きですが...。

たけ

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第五章 ランバート採掘場

閑話1-1 モリジン一行の帰省

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 モリジン視点

 私は智也様の奴隷で、豚族のモリジンと申します。自分の外見について述べるのは恐縮ですが、豚族の村ではイケメントップ3に数えられていました。目は細めで、鼻は大きくて上を向いており、顔の形はまん丸です。

 私たちを買いに来た奴隷商人が私の顔や体型を見て、「もう少し唇が厚く腫れぼったければなぁ...。あと、欲を言えばもっと背が低くて手足が短く、体型も丸々としていたら、より高値段で買い取ったのだが...」と言っていました。

 三ヶ月前の今日、冷たい風が吹きつける曇り空の下、私とカク、そしてヤーロンは生まれ育ったジャイダ村から性奴隷として旅立ちました。村の石畳の道を三人を乗せた馬車がガタガタガタと踏みしめて進み、その音だけが静寂を破るようでした。

 豚族の男性は、他の獣人族の男性に比べれば男前が揃った部族と言われております。

 また、獣人族の男性は他の種族の男性に比べれば力があると言われておりますが、それでも人族を含む女性には敵いません。

 人族の男性の中には、魔法使いとして生計を立てる冒険者もいるようです。彼らは、まるで空気中に浮かぶ微細なエネルギーを操るかのように、魔法を自在に使いこなします。

 獣人族にとって、魔法の扱いは難しく、まるで深い霧の中を手探りで進むような感覚です。そのため、獣人族の男性は力の面でも女性に及ばず、魔法の発動の面でも適性が低いため、冒険者には向かないとされています。

 このため、村での男性の主な役割は、女性が狩りや冒険に出かけている間、畑仕事や家事を行います。

 朝早くから畑を耕し、作物や家畜の世話や、掃除、料理、洗濯などを行います。そして、夕方になると狩りや冒険から戻った女性たちを迎え入れ、一日の疲れを癒すために温かい食事を用意するのが日常の風景でした。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 獣人国は現在、深刻な干ばつの影響を受けており、国全体が苦境に直面しています。さらに、国王様が病に伏しているという噂が広まり、国内全体が混乱に陥っています。

 通常、このような干ばつの際には、国から麦やソルガムの支援が迅速に行われますが、現在はそのような支援を期待することが難しい状況です。

 国王様も大変な状況にあるようです。国に要望を出しても支援が無いため、やむを得ず村の中で外見が良い若者三人を売ることにしました。これで他の村人たちは、今後一年間に必要な麦やじゃがいもを得ることができたようです。 

 私の恋人でムカリウスは泣きながら村長に、私たち三人を売らないように懇願しましたが、私たちは売られることを選びました。

 私たち三人が犠牲になれば、村の幼子や両親、そしてムカリウスも何とか一年は生き延びることができるのです。

 辛いけどこれも運命サダメ。ムカリウス...さようなら...。私の分まで幸せになってくれ...。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 「おい、モリジン、しっかりしろ!休憩は終わりだ。さっさと出発するぞ!」と暗闇の中、私の背中をカクが力強く叩きました。

 その瞬間、私は現実に引き戻されました。あの日、冷たい曇り空の下、私たちが性奴隷として旅立った記憶が、頭の中で渦巻いていました。

「何をぼ~としておる、お前もムカリウスに早く会いたいのではないのか?私は一刻も早くジャイダ村に戻りたい!」と、焦りと切実な願いが混ざった表情をしながらヤーロンが私に話しかけてきました。彼の声には、早く故郷に戻りたいという強い気持ちがにじみ出ていました。

 私も、カクもヤーロンも、それぞれに愛する者がいます。思い人に会いたい気持ちが胸を駆け巡り、心が弾むほどの焦りとなっています。

 皆、一刻も早く故郷に帰りたいのです。

 智也様が与えて下さった束の間の自由。しかし、奴隷の首輪に刻まれた呪いは絶えず私たちを監視しています。もし三日以上主人である智也様と離れれば、死の呪いが発動し、再び命を落とす運命にあります。恐怖が全身を覆い尽くすこともありますが、今はそんなことよりも愛する人たちに会える喜びで胸が一杯です。

 そう、何といっても私たちは一度死んだ身です。それに、性奴隷に落ちても胸を張って村に一時帰省出来るなんて、まさに奇跡。さあ、こんなことをとやかく考えている暇があったら、早くジャイダ村に戻りましょう!

 私がぼんやりして、あの日の旅立ちのことを思い出している間に、お馬さんたちの休憩も終わったようでした。

 「さあ、智也様に感謝をしながら、村に帰ろう!早く俺たちの勇姿を村のみんなに見せて驚かせたいからな」と意気込んで言うと、二人とも嬉しそうな笑顔を見せ、「おお!」と力強く返事をしました。

 麻璃奈様から預かったペプシ、サイダー、ファンタも休憩を取り、元気いっぱいの様子。あと少し頼んだぞ、三頭とも。

 しかし...変わった馬の名前だ。智也様は何か理解したようで、「地球から、今度買ってくるよ」と麻璃奈様に微笑んでそう言われました。

 私たちには理解できない智也様と麻璃奈様との繋がりがある様です。

 夜の森を軽快に駆け抜け、ジャイダ村を目指していた3頭は、途中で魔物の気配や呻き声を聞くと迂回しながらも、順調に進みました。

 辺りも見やすくなった明け方、カクを乗せてくれているサイダーが丘を駆け上がったその時、「み、見えた、ジャ、ジャイダ村だ!俺たちは帰って来たんだ!」とカクが大きな声で叫びました。

 いえ、無意識のうちに私も叫んでいたかもしれません。そして、気が付いた時には私を含めた三人は知らないうちに恥ずかしくなるほど涙を流していました。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ムカリウス視点

 「ムカリウス!シーダ!三頭の馬が凄い勢いでこっちに突っ込んでくるよ!魔物ではない様だけど、一応用心するよ!」とモーリンが叫んだ。続けて「獣人国の伝令かい?すごく慌てている?ムカリウス、千里鏡で確認を!」

 「分かったわ!何よ、こんな朝っぱらから⁉緊急事態かしら?」

 私たち三人が夜間警備の者たちと交代した瞬間、私たちの村、ジャイダ村に向かって猛スピードで突進してくる馬が目に飛び込んできた。

 敵にしては数が少ない。もしかして伝令⁉伝令じゃないとすると、魔物に追われている⁉でも追われている気配もなさそうだけど...。いずれにせよ警戒が必要ね。

 この村に危害を及ぼさせるわけにはいかないわ。

 モリジン達三人が私たちのために旅立ってから、もう三ヶ月が経った。もう寂しくて寂しくて...。何もする気が起きなかった。

 だけど、モリジン達が命がけで守ってくれたこの村...。愛したモリジンの為に、私ができること。

 私は村の兵士になることに決めた。

 だから、どんなことがあっても守り抜いてみせるわ。敵なら...覚悟しなさいよ。

 そう思いながら千里鏡を覗くと、「う、うそ、う、うそよ!!」と口から漏れてしまい、その後は目の前が滲んで何も見えなくなった。

 カラン...。

 千里鏡が手元から滑り落ち、私はその場にへたり込んだ。

 モーリンが私の横で叫んだ。「何がウソなのよ⁉あんたの行動こそウソでしょ⁉馬が突っ込んできているのに、なにへたり込んでいるのよ!どんどん近づいて来ているじゃないのよ!早く何が見えたかの報告を!」と私を急かした。

 でも、私は「モ、モ、モリ...」としか言えずに唖然としたまま...。

 そんな私を見かねてモーリンが地面に落ちた千里鏡を拾い上げ、三頭の馬に照準を合わせた。

 カラン...。

 私と同じ様に手元から千里鏡が滑り落ち、地面にぶつかる音が響いた。モーリンは「ちょ、ちょ...カ、カク...⁉」と呟きながら、私の隣にへたり込んでしまった。

 そんな私たちの様子を見て村人たちも驚き、集まって来た。

 「な、何事だい?」

 「敵かい⁉」

 村人たちは私たちに色々と聞いてきた。敵かどうか見てみなさいよ。お、驚き過ぎて声が出せないのよ。

 こ、こんな奇跡ってあるの⁉どういうことなの⁉

 馬の駆けこんでくる音がどんどん近づいてくる。千里鏡を見なくても、あの人の顔がはっきりと確認できた。気が付くと、私もモリジンに向かって駆け出していた。

 「ムカリウス!!」とモリジンが大きな声で叫んだ。「モリジン!ほ、本当にモリジンなの⁉」私は声を震わせながら答えた。そして、確信した。あの声、あの笑顔、間違いない、私が愛した男だ...!

 心が爆発しそうなほどの喜びが溢れ出た。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 村門の前はお祭り騒ぎのような熱気に包まれていた。モリジン、カク、ヤーロンの突然の帰省に、村人たちは皆、喜びと驚きに満ちていた。

 再び彼らと生きて会えるなんて、まるで奇跡としか言いようがない。

 一度奴隷となった者が生きて戻ってくるなんて、前代未聞のことだ。良心的な奴隷の買い主であれば、亡くなった報告をしてくれることもあるが、特に性奴隷は、通常使い潰され、使えなくなれば娼館に売られてしまう運命だ。

 自分の恋人をこんな言い方するのは嫌だが、娼館で変な薬をうたれて、やるだけやって死んでいく...。それが性奴隷の悲しい運命...。

 でも、目の前にいるモリジンは脚もしっかりとあり、透けてもいない。そして、力強く私を抱きしめてくれる。

 彼の温もりを感じる!生きている!隣ではモーリンがカクと泣きながら抱き合っている。皆がすごく喜んでいる。私もすごく嬉しいけど、どういうことなの⁉

 立派な服を着て、軽そうな首輪をしている。それに、腰には高そうな剣を装備している。まるで夢のようだけど、ほ、本当に現実...⁉

 訳が分からないことだらけだけど、本当に嬉しい!もう会えないと思っていたモリジンに再び会えるなんて...。モリジン、お帰りなさい!

 大勢の村人たちにもみくちゃにされながら、歓声と笑顔が溢れる中、モリジン、カク、ヤーロンは慣れ親しんだ村の中へと入っていった。
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