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第27話 選択

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 魔石とは何のことでしょうか?もしかしたら...俺が持っている黒いビー玉が、魔石という物なの?

 この何の変哲もない黒いビー玉を、俺以外の皆がみつめて、驚いている。皆も見たことが無かったのかな?

 エルムによると魔石は、魔物を倒すと出現する物らしい。

 魔石はエネルギー源の一種で、これによりランプを付けたり、お湯を沸かしたり、防具や武器を強化したりする...原動力になる品物らしい。

 まあ地球でいう...電池やバッテリーみたいなものかな?

 「へーこれが魔石なんだ。ただの石ころかと思った」

 エルム達に、ビー玉と言っても伝わらないだろうし...石ころと言った方が伝わるだろう。

 「いや、レン様...非常に貴重な物ですぞ!昔は...私の父が若かりし頃は、魔物を倒せばに出現したらしいです...あくまでも私の父が、若かりし頃の話です。ですから...かれこれ600年以上も昔の話です」

 獣人やエルフ、そしてドワーフは延命族だ。見た目の何倍も年を取っていると聞いた。エルムは70代ぐらいの爺さんにみえるが、実際の年齢は300歳以上だとか。

 その父親の若かりし頃だから...600年以上も昔の話だということにも頷ける。

 「しかし今では、神様からのプレゼントなみの確率でしか、魔石は出現しないと言われております。まあ確率としたら...5000匹倒したら1~2個ぐらいの割合でしょう」

 おいおいちょっと待ってくれよ。4体のゴブリンから4個とれたぞ...。

 「魔法が扱える者の少ない種族にとって魔石は、非常に貴重な品物です。また、火系統の魔物を倒せば、火の特徴を持つ魔石が、水系統の魔物からは水の特徴を持つ魔石が得られると聞きます」

 ほー...。魔物の属性によって、得られる魔石の系統も異なってくるという分けだ。

 「ゴブリンなどの無属性から得られる魔石は、能力のどれか、例えば攻撃力や俊敏性が上がると言われています」

 便利なものだな。だから武器に火系統の魔石をつければ、火属性がエンチャントされた武器が出来あがるというわけか。そりゃ欲しくなるわな。

 「でも...魔石はまれにしか出ない物なんだろ?倒した魔物分、魔石が出るなんて,,,。ゴブリンのような弱い魔物だから...かな?」

 俺は手に持っていた魔石を握り締めながら、エルムに聞いた。

 「いえ、レン様それは違います。確かに強い魔物よりは多少...出やすくなるレベルです。先ほどの話で言えば,5000匹倒したら2~3個になる程度ですよ」

 すごいな。都合がいい。でも今回だけかな?さすがに100%の確率で魔石が出るのは...。

 すごく贅沢な話だが...魔石が出るのも嬉しいが、食材も欲しいな...。

 まあ...戦闘を重ねていけば、自然と魔石が出る仕組みも分かるだろう。どうせLevel も上げたいし。

 エルムいわく魔石を持って帰れば、ドワーフや人族の研究員たちから、非常に喜ばれると聞いた。

 武器や、生活道具への使用、新製品の開発、研究に役立つらしい。

 更にアリスト共和国は周囲を砂漠で囲まれている為、出現する魔物の数も他国に比べて少ない。

 つまりとれる魔石数も少ない。この「戦の間」で大量に魔石が取れれば、一気に武器への使用による武力面の強化と、生活道具の発展につながる。

 さあどんどん魔物を狩っていこう。ゴブリン以外も倒して魔石の出現率や、俺のLevel 上げ、食材となる魔物を倒した後、どうなるかの確認など...やることが目白押しだ。

 肉を持って帰りたいしな。頑張ろう。
 
そう思いながら歩いていると、ルーメイが俺の前に手を出し、制止を促した。

 「レン様、20mほど先の...十字路の左側に、一角ウサギが3羽潜んでおります。どうなされますか?」

 そう俺に聞いてきた。倒したいが...俺ばかりが倒していいのだろうか?なんだか接待ゴルフのような感じがする。

 「皆は倒さなくてもいいの?俺に倒させてくれるならLevel も上がり、助かるのだけど?」

 そう皆の顔を見ながら聞いてみた。

 「レン様、今回もお願いします。いやレン様がよろしければ、率先して戦闘を行って頂きたいと思います。Level が上がった時の恩恵はこの、アリスト共和国内に莫大な利益を与えると思われます。ぜひともお願いします」

 他の者の顔を見て、確認をした。

 するとエルムは勿論だが、ルーメイとドレンもこくりと頷いた。モルスルに至っては首だけではなく、大きな体を折り曲げ、お辞儀をするような恰好を示してきた。

 よし、ありがたくウサギ狩りをさせてもらおう!

 早速、一人で一角ウサギの元に行こうとすると、ルーメイが斜め後ろを追随してきた。

 「ルーメイ大丈夫だよ。皆と待っていて」

 そうルーメイに言ったが、ルーメイは首を横に振った。

 「いけません。こういう場所での注意点は、何も戦闘だけではございません。つまり罠が無いとは限りません。突然の落とし穴、壁から放たれる矢など...様々な仕掛けが存在する場所です。1階層とはいえ、細心の注意をお払い下さい」

 真剣な表情でルーメイは俺に伝えてきた。はっとした。確かにそうだ。ここは安全な場所ではない。1階層という事もあり、たるんでいたかもしれない。注意をしないと。

 「ルーメイありがとう。その通りだ。以降は注意を怠らない様にするよ。気が付いたことがあったら、なんでも言ってくれ」

 「分かりました。魔物探知や罠を見破る能力の向上は、いかに周囲に気を配るかです。少しの変化、異変に気が付けるかが大きなカギとなります。視覚だけではなく、嗅覚、聴覚、時には触覚など...全身の感覚を使用されるとよろしいでしょう」

 しっかりと俺の目を見て教えてくれた。

 周囲の環境の違いか...。同じように見える、感じる。そして特に変わった音も、匂いも...うん?確かに前方から獣の匂いがするような気がする。わずかだが...。

 よしゆっくりと一角ウサギの方に向かってみよう。

 一角ウサギの方に近づくにしたがって、聞こえなかった何かが動く音や、動くことにより強まる匂いなどを、感じ取ることが出来た。

 なるほどな。戦闘においては油断が出来ないな。気を引き締めていこう。

 俺はなるべく足音を立てないように...一角ウサギたちに近づいた。普通に歩くと廊下に靴の音が響き渡る。

 忍び足でゆっくりと距離を詰め、俺がクリーンヒットしやすい距離まで...安全に間合いを詰めることが出来た。

 その場所でアイテムボックスから石を取り出し、十字の曲がり角方向に投げつけた。

 「カラン!コロコロコロ...」

 石の音に気が付いた一角ウサギの1羽が、左十字路から飛び出してきたところを、ウィーク・ウォーターガン1発で仕留めた。

 残りの2羽も1羽の異変に気付き、俺に近づこうとしたところを難無く、ウィーク・ウォーターガン1発ずつで仕留めた。すると...。

 「おめでとうございます。あなたは魔物を倒したことにより、レベルアップをしました」

 そう、脳内であの機械音が、久しぶりに流れた。

 やったー久しぶりのレベルアップ!嬉しい。

 能力がどれぐらい増えたか、確認をしないとな。皆のおかげでレベルアップが出来たことを伝えないと、そう思っていた矢先...異変が起こった。

 「一角ウサギ3羽を、魔石に変えますかorそれともこのまま持ち帰りますか?」

 レベルアップを告げる内容とは、別の機械音が俺の脳内に流れ...響いた。
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