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第28話 元気だった?

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 今...倒した魔物を魔石に変えるか、それともそのままの状態で持ち帰るか、選べるようだ。

 親切な設定だ...。

 もしかしたらだが...。

 ゴブリンは食用としては価値がない為、アナウンスが流れることなく魔石に変わったのかもしれない。

 今、選択を迫られていることを、傍にいるルーメイに話した。ルーメイは慌てた様子で、エルムに伝えた。

 「なんともまあ...。長く生きている私でさえも、分からなことばかり...。レン様一角ウサギをどうなるおつもりですか?」

 とりあえず脳内でも選択を求められている。


 「では魔石として1個。物体のままで2羽。そう願う事にしよう」

 そう皆に伝えると、目の前の一角ウサギの一羽が魔石へと変化した。残りの2羽は一角ウサギのまま横たわっている。

 「凄い!レン様が言ったとおりになった!」

 目の前の魔石と一角ウサギ2羽を、呆然としたまま見つめているモルスルが言った。

 皆が目の前の光景に驚いている横で、Level が上がったことを思い出した。

 確認、確認と。

 Lv.3 レン 26歳 人族
 HP  :60/60 → 65/65
 MP  :  ∞
 STR(筋力):  18 → 21
 DFT(防御力):  24 → 27
 INT(賢さ):  34 → 36
 AGI(素早さ): 13 → 16
 LUK(運): 33 → 35

 おー!地味にLevel が上がっている。なんだか嬉しい。さあコツコツとLevel をあげるために、戦闘を続けますか。

 戦闘を行えば、Level が上がる。魔石や食料も手に入る。いいこと尽くめだ。

 もちろん敵を倒せばだけど。油断をせずに、コツコツと敵を倒していこう。

 「さあて、次に向かいますか」

 そう言った後、一角ウサギ2羽とその魔石一個を、アイテムボックス内にしまった。

 皆の目の前から、魔石と魔物が突然無くなったことに、ドレン以外の者の動きが止まった。

 そして...。
 
 「レン様は、アイテムボックスもお持ちですか!」

 ルーメイが落ち着いた表情を崩し、驚きおののき、一歩後ろに下がりながら...叫びに近い声をあげた。ドレン以外の者は声すら出せない状態であった。そして一様にレンをみつめた

 まだ隠し能力があるのかよ!という感じで...。

 「これっ、ルーメイ!ダンジョン内で大声をあげたら...」

 「はっ、すみませんエルム様。私としたことが...。しかしあまりの出来事に...レン様はこのアレスト共和国の危機に、神が送られた使者の方でしょうか...狩った分の魔物肉を、そのまま全部...地上まで持って帰れるじゃないですか!」

 小声ながらも語気を強めた。
 
 本来、ダンジョンに潜る際、倒した獲物を運び出せる頭数は限られる。当たり前のことだが、全部を持って帰れないからだ。

 今のパーティーなら、オーク1頭を持って帰れるかどうかだろう。

 解体をすればその分軽くなるが、水を大量に使えるわけでも無いダンジョン内に、血の匂いが蔓延し、魔物がよってくる。タコ殴りに合うだろう。

 この「戦の間」なら、倒した魔物を5階層ごとのワープエリアまで運び、1階層までワープしてしまうのが現実的だろう。

 この為、5階層までは魔物を倒しても、諦める選択肢の方が本来は多い。

 「ルーメイ、そなたの言う通りじゃ。だがルーメイ、そしてレン様も...先に行うことが出来た様です。様々な方向からゴブリンと一角ウサギ、スライム、スモールバタフライ、キラーバードなどがこっちに向かって来るようです。迎え撃ちますぞ」

 確かに遠くの方から羽ばたく音、跳ねる音、駆け寄って来る音などが聞こえる。結構な数だな...。パーティーの皆は、俺を守る様に取り囲んでくれる。

 俺は流さんの恩恵、衝撃無効化を得ていると、言っているのだが...。

 まあ気持ちはありがたく頂いておくか。それよりも一匹でも多く倒さないと。

 ならば、あの魔法を試そう。

 両側から様々な魔物の集団が50頭ほど程、迫ってきている。いやもっとか?

 どうやら...この一階フロアにいる魔物の全てが、俺たちの方に向かって来ている様だ。

 廊下という限られた空間にいるため、数以上に大勢の魔物が、近寄ってきている感じがする。だがもっと近づいて来い。

 どんどん魔物たちの姿が近づいて来る。足音だけ、気配だけだったのが、スライムが弾み、ゴブリンがよだれを垂らしながら駆け寄ってくる姿がはっきりと見える!

 でも...まだだ。

 もう少し。

 もう少し。

 よし今だ!

 「右側の魔物たち、喰らいやがれ!ウイーク・ウォーターフラド!」

 そう俺の叫び声と共に、両手から大量の水が渦を巻き、うねりをあげながら魔物に向かっていった。

 フラドは日本語で洪水という意味だ。文字通りの水の濁流となり、魔物に迫っていった。

 ダンジョンの廊下という限られた空間では、フラドの威力はさらに効力を増す様だ。

 濁流が、直接魔物にあたった衝撃と、魔物同士がぶつかり合う衝撃、更に両脇の壁にぶつかる3重衝撃で、魔物が俺たちから離れた場所へと押し流されて行く。

 でも...まだだ。

 「まだまだだ!左側の魔物たちも喰らえ!ウイーク・ウォーターフラド!更に...液体操作Level 1のおまけ付きだ!」

 ウイーク・ウォーターフラドを念じた後、素早く液体操作Level 1も唱えてみた。液体操作Level 1も一緒に唱えたウイーク・ウォーターフラドの方が、水に硬さがあるような気がする。あくまでも感じであるが...。

 激しい濁流と共に、魔物たちが俺たちから遠ざかっていく。

 あまりの威力に...魔物たちはなすすべもなく、壁やお互いにぶつかり合いながら、行き止まりの壁まで押し流されて行った。

 その光景を、ただただ呆然と見つめる4人がいた。

 両側から大量の魔物の群れが押し寄せてくる状況に、レンを守るために四肢の1,2本は捨てる覚悟をして挑もうと覚悟を決めた。

 そんな矢先に、いきなりレンが、大量の水を両側に放った。

 先ほどのウォーターガンとは異なり広範囲魔法で、一気に100体以上にも及ぶ魔物たちを、蹴散らしてしまった。ただただ呆然と、成り行きを見続けるしかなかった。

 魔物の大群を呼び込んでしまったルーメイは、緊張の糸が切れたように床にへたり込んでしまった。

 「凄い...凄すぎる」

 「何と...重複魔法までお使いになるとは...」

 ただ一方のレンは、平然として要られたのは、戦闘が終わった数秒だけだった。

 「レベルアップしました。レベルアップしました...」そう何度も脳内で繰り返される機械音。

 更に急激なレベルアップによる、身体の異変に、もがき苦しんだ。

 うが...い、痛い、くそ、どうなっているんだ?頭の中は「レベルアップしました」とやかましいし、身体は筋肉が千切れるように痛い。いや絶対に千切れているだろう。

 「レン様大丈夫ですか!私のせいで、一気に魔物が押し寄せて来た為に、無理をさせてすみませんでした。何とお詫びをしたら宜しいのか」

 ルーメイは泣きながら、俺を抱きしめた。

 痛いけど抱きしめられて...ちょっと意識がそれる...。ルーメイ隠れ巨乳?

 男って奴は...どうしようもない生き物だよ、まったく...。

 そう言われそうだが、ホッとするものはしょうがない。女性の胸の中には優しさと、心と体の痛みを和らげる、愛情が詰まっているのさ、ってね。

 そう思った後、俺は...意識を無くした。

 「ルーメイちゃん?いないの、あれ?」

 「おい正、正、バカ息子、起きろ。ルーメイちゃんじゃないわ。わしの声を忘れるな...バカ息子」

 「だれ...げっ親父、その...元気だった?」

  久しぶりに死んだ親父と会い、動揺して元気だったと聞いてしまった...。
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