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第30話 宝箱

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 とりあえず、さんざん俺を苦しめた、レベルアップの確認を行うか。

 確認、確認と。

 Lv.15 レン 26歳 人族
 HP  :60/60 → 125/125
 MP  :  ∞
 STR(筋力): 21 → 52
 DFT(防御力): 27 → 60
 INT(賢さ): 36 → 56
 AGI(素早さ): 16 → 48
 LUK(運): 35 → 55

 うん、痛みに耐えたかいがある。順調にLevelが上がっている。身体能力が上がっているのは嬉しいが、あの痛みはもう二度と味わいたくない。

 急激なLevel upには苦労をしたが、前よりも速く走れる気がする。更に頭の中もスッキリとして、何だか物事を考えるのが楽になった様な気もする。

 まだ気もする程度だけど。

 あともう1つ、ダンジョンの探索を再開する前にやることがあるようだ。

 戦闘で大量に倒した魔物の選択を、脳内で求められている。

 先ほど倒した魔物のうち、食用となる魔物、つまり一角ウサギと、キラーバードを魔石に変えるか、それともそのままの状態で持ち帰るか。

 どうやら一角ウサギを15羽、キラーバードを14羽倒したようだ。

 皆と相談した結果、全部食料として持ち帰ることにした。

 今は魔石も魅力的だが、何よりも食料の確保が最優先だ。アリスト共和国全土で食料が足りていない。なるべく多く、食料を持ち帰ることにした。

 まあそれに食料とならない魔物から、魔石を70個ほど得られる予定だ。これで十分だ。

 右側の通路の行き止まりに俺とルーメイ、左側の通路の行き止まりにエルムとドレン、そしてモルスルが向かい、魔石と魔物の回収に向かった。

 右側の通路の行き止まりには、魔石と共に一角ウサギ8羽とキラーバード7羽が、横たわっていた。それらを俺のアイテムボックスに収納していった。

「本当に便利な能力ですよね。暗部の私としては、先ほどの声をあげてしまう行為は痛恨のミスでした。私はアイテムボックス持ちの方とは、何名もお会いしたことがあります。ただ私が驚いたのは、その収納面積の方です」

 俺の顔を真剣な表情で見つめ、話しを続けた。

「一説には、神が制限を与えておられると聞いたことがあります。アイテムボックスの悪用は周囲に大きな弊害を生むからです。その為、アイテムボックスは一辺が50cmと聞いております。レン様のアイテムボックスは異常です」

 そう言った後ルーメイは、ため息を吐いた。

 まあ当然だよな。悪しき心の人間が無制限のアイテムボックスを持っていたなら、大量の物資、武器を運びこみ、アーレント王国を滅ぼしに来るかもしれない。

「私はもう死ぬとか言って、あなたを苦しめることはしません...が、その為にはレン様も、うかつに人前で能力を見せるような、そんな行為は慎んで下さい。守りきれません」

 行動を諭すように、忠告をしてきた。

「そうだな。このアリスト共和国内でも、慎重な行動を出来る限りとるよ。ありがとう。ルーメイ」

 そうルーメイに告げると、ルーメイは俺に対し、にっこりと微笑み返した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 俺とルーメイは左側の通路で待つ、皆の元に急いだ。

「レン様!大量です。一角ウサギとキラーバードが、7羽ずつおります。あと散らばった魔石も一か所に集めてあります」そう俺に深々と頭を下げ、モルスルが言った。

 俺はここにあるすべての物を収納する前に、ルーメイをチラッと見た。全部いっぺんに消してもいいかという意図を込めて...。

 ルーメイは軽く頷き、OKを出してきた。

 まあ、このメンバーたちには一回見られているしな。

「収納」

 唱えると同時に、目の前から大量の魔物と魔石が消えた。俺のアイテムボックス内にすべて収納された。

「凄い...すべて無くなった。まだ入るんですね。もっと入るのなら、皆のお腹を満たすほどの魔物が狩れる。本当に嬉しい。兄弟たちにお腹いっぱの、ご飯を食べさせることが出来る」

 モルスルは涙を流し、心底喜んでいる。身体はでかいが涙もろく優しい男の様だ。

「さあ2階層に行く階段を探そう。どんどん進みもっと大物を確保しないと。俺が意識を失っていた時間は相当だったのだろう?もう何回王女様からの連絡を頂いたんだ?」

 ダンジョン内は時間が過ぎるのが分からなくなる。だから王女様に、2時間ごとに一回、連絡を頂くようにして、現在のおおよその時間を把握できるようにしてある。

「まだ、一回も連絡を頂いておりません。レン様が意識を無くしていたのは、ほんの10分程でしたよ。ただ...ルーメイを落ち付かせるのには、一苦労でしたが...」

 そう皆の視線がルーメイに注がれると、ルーメイは頬を赤くし下を向いてしまった。

 もしかしたらローラ様が時間の流れを、緩やかにして下さったのかもしれないな。

 体感的に親父とは、もう少し話していたような気がする。ローラ様、ありがとうございます。

 そんな中、エルムから念話が入った。

「レン様、下層に向かう階段を見つけました。今いらっしゃる場所から南下して来て下さい」

「分かった」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 エルムが立ち止まっている場所に到着すると、丁度王女様から、一回目の連絡が入った。

「レンさ...ん達どうですか?順調でしょうか?その...皆さん無事でしょうか?」

「順調です。王女様!これから2階層に向かうところですが、一角ウサギを15羽、キラーバードを14羽、魔石も70個ほど手に入れています!」

 ルーメイが、嬉しそうに話した。

「ど、どう言う事ですか?魔物肉もそうですが、魔石が70個ほどとは!アリスト共和国以外の国を合わせた10年間ほどの数を、たったの2時間で?それにルーメイなのですか?そのイメージの変化は...後で詳しく教えて下さい!」

 その王女様の横から「絶対レン様がらみです!」とエレンとカリンが叫んでいる声が聞こえる...。当たっているけど。

「でも...無理はしないで下さい。油断は禁物です。2階層、気を付けて下さいね。また2時間後に連絡をします」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 さて、気を引き締めていかないと。ここはダンジョン。いや「戦の間」だ。どんな危険が待ち構えているか分からない。皆でポーションを飲んでから2階層に向かった。

 2階層...そこはジャングルだった。樹々が生い茂るジャングル地帯そのものであった。ラン、シダやツタ、スギ、ヒノキなどの亜熱帯に育つ木々が群生している。

 そもそも1階層と違い、太陽や風も確認できる。アリスト共和国からすれば楽園の様な場所だ。

 それにモンシロチョウやカミキリムシ、カタツムリなど豊富な種類の昆虫とキジやアオサギ、カワセミなどの鳥が飛んでおり、魔物以外の生き物も豊富に暮らしている様だ。

「凄い数の樹々、そして沢山の生き物。地上より全然暮らしやすそうですな」

 そうエルムが木に触りながら呟いた。

 それに...美味しそうな実が見える。日本で見た記憶もある。夏みかん?オレンジ?

「あの実は食べられるかな...食べれるのなら妹達に食べさせてあげたい」

 家族思いのモルスル呟いた。

 確かにそうだ。あの実が食べれれば、食糧事情も楽になる。鑑定をしてみるとオレンジだ!しかも食べれると表示された。

 どうやら食べれるようだ。ここから見える分だけでも頂いて帰ろうか。とりあえず聞いてみるか...。多分見ているだろう。

 俺は心の中で念じてみた。「ローラ様。この木になっている実は、持って帰っても問題はないですか?」

 するとやはり返答が帰って来た。しかも早い!

「取って食べても結構ですが、一回取った実は3日のインターバルが必要です。3日で復活しますよ。更に下層に行けば行くほど、果物の種類は増えます。頑張って下さいね」

 そう優しい声で返答してくれた。ローラ様は非常に優しい。素晴らしいお方だ。

 何だか、どんどん優しくなっていくような気がする。気のせいだろうか?

「どうやら、3日間でまた実が取れるようになるようだ。全部頂いて行こう」

 そう言うと、「何でそんなことが分かるんだ?」という表情をされるが、もう俺が言うのだから...という目で見てきた。

「では私が木の上の実を取ってきますね。と言って動き出そうとしたので、

「まて、ルーメイ。収納!」

 俺の目に留まったオレンジをあらかた収納した。

 アイテムを確認すると、オレンジ304個と表示されていた。

「な、なんと...便利な」エルムは、あけた口がふさがらない、そんな顔をした。

「レン様~」とヒタイに手をやり、俺の方を見ているルーメイに「ごめんなさい」と謝った。

 収穫した1つを取り出し嗅いでみると、何とも爽やかな、そして甘~い香りがする。

 今すぐに食べたい気持ちを抑え「次の休憩時に食べてみよう」というと、モルスルは「俺の分は妹たちにあげて下さい」と言ってきた。本当に優しい男だ。

「食べてみないと妹さん達に、味を伝えられないだろう?ちゃんと妹さん達に渡す分はあるから、モルスルも一緒に食べよう」

 そうモルスルに言うと笑顔で、「はい!」と答えた。モルスルはあとで教えてくれたが、大の甘党で果物は大好物だと言った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 そんなジャングル地帯は湿気も多い。蒸し蒸しする。度々止まっては、俺が冷たい水を皆に配り、水分補給をする。砂漠とは違う暑さだ。

 草をかき分けながら、ぬかるみを慎重に歩いている最中、何体かのスライムやゴブリン、キラーバードなど、1階層で見た魔物や、野生のキジもウィーク・ウォーターガンでやっつけた。ただレベルは上がらなかった。

 そんな草むらをかき分けて、3階層に向かう階段を探していると、ルーメイが声を潜めながら「レン様!宝箱と3階層に下る階段があります」そう言ってきた。

 へー本当に宝箱があるんだな。一辺が70cmぐらいの、木でできた立方体の宝箱があった。でも宝箱ってこんなに目立つ場所にあるのかっていうぐらい、階段の真横に置いてあった。

 もう見つけて下さいねという感じで。

 ルーメイがパッと見て、「大丈夫です罠とかはありません。それに...」と一枚の魔皮紙を渡してきた。

「これは?」とルーメイに聞くと「宝箱の後ろに張り付いていました」と答えながら渡してきた。

 そこには「お疲れ様ですレン。私からの気持ちです。byローラ」と書かれていた。

 宝箱の中を開けてみると、見覚えのあるほっ〇もっとの熱々のお弁当が、100個ほど入っていた...。
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