妄想女子はレベル‪✕‬‪✕‬!? ~学校一のイケメンと秘密の同居をすることになりました♡~

伊咲 汐恩

文字の大きさ
2 / 23

2.まさかの同居生活

しおりを挟む


降谷涼ふるやりょうです。10月5日までの約1か月間、この家でお世話になるのでよろしくお願いします」

 ーーいま、目の前で信じられない展開が訪れている。
 夢を見ているのだろうか。

 うれしい……というか、
 ラッキー……というか、
 天使が微笑んだ……とでもいうのだろうか。
 それとも、一生分の幸運をいまこの瞬間に使いきってしまったのだろうか。


 最初は失恋が受け入れがたくて同居相手が降谷くんに見えてしまっただけだと思っていた。
 でも、制服のスカートの上からぎゅうっと太ももを握ったら痛かったから夢じゃない。

 いま自宅の玄関先で夕日を浴びたまま私たちに頭を下げているのは、まぎれもなく数時間前に私が告白した降谷くん。
 左手にはスーツケースを握りしめ、背中にはリュックを背負い、右肩にはスポーツバックをぶら下げて立っている。
 そんな彼がなぜ母子家庭の我が家に1か月間だけ同居することになったかというと、母親同士が小学生時代からの親友らしく、降谷くんの両親の九州出張の間の1か月間うちで預かる約束をしたとか。
 そもそも、母は降谷くんの母親と親友なんてひとことも言ってなかったし、同級生の男子をうちで預かることも前日にちらっと口にした程度。
 しかも、その人物はいま玄関扉を開けてから初めて知った。

「さぁさぁ、家に上がって。ほら、みつきもぼーっと眺めてないで荷物受け取ってあげて」
「う、うん……。ど、どうぞ上がって下さい」

 現実を受け入れるのに時間がかかり、なんとも言えぬままスーツケースを掴みながら手で誘導すると、彼は興味の薄い目で私をちらり。

「……なに、ここあんたんちなの?」
「う、うん……。これから1か月間よろしくね」
「……そ」
「あら、あなたたち知り合いなの?」

 片想い事情など知らない母は、私からスーツケースを受け取って部屋の奥へと運びながら問う。

「降谷くんとは、おっ……同じ学校だからね」
「じゃあ、すぐに仲良くできるわね。ほら、そこに突っ立ってないで早く荷物を奥へ」

 母はリビングへ向かうと、彼は後についていくように靴を脱いで玄関を上がった。
 そして、私の横を通り過ぎると背中から素っ気なくひとこと。

「近所に親戚もいないし一人暮らしが反対されたからここへ来ただけ」
「そっ、そうなんだ。こんな偶然があるなんて……」
「あんたにお願いがある」
「えっ、何?」
「同居してても、一切俺に興味を示さないで欲しい。それに、このことは学校の人には秘密にしててね」

 彼は言いたいことだけ告げると母の元へ。
 私は彼が玄関から離れていく前に背中に向けて言った。

「わわわわ……わかってるよ。絶対……ぜええぇぇええったい誰にも言わないっっ!! 秘密にするから!!」

 気分が高揚していたせいか、他のことが考えられなくなるくらい頭の中が真っ白に。
 だってだって、あの降谷くんがこれから1か月間私と生活を共にするなんて信じられない。
 朝同じ時間に起きて、朝晩と同じテーブルで同じものを食べて、同じ部屋の空気を吸って、同じ湯船に浸かって……きゃあああっ!!
 やっばぁ!! 幸せメーターがMAXを振り切って即死レベルに。

 ああああっ……、神様、仏様~~~~っっ!!
 こんなに素敵な現実をプレゼントしてくれてありがとうございますっっ。
 学校でフラれた時は今回こそは諦めようって思ったりもしたけど、まだ諦めなくてもいいかな。
 降谷くんとの生活をたっぷり満喫したくなる! うっっ、考えただけでも鼻血出そう……。

「みつき~~! 玄関で何やってるのよ。早く夕飯作りを手伝ってちょうだい」
「あっ、はーーい! いま行きまぁ~す♪」

 私はスキップしながらキッチンへ。


 頭の中は妄想モードのスイッチがオンになった。
 これからは降谷くんとの幸せな甘い甘い生活が待っている。
 朝起きたら洗面所でお互いの寝起きの顔を見て「おはよう」って。朝ご飯の時に醤油を取ろうと思ったら降谷くんも手を伸ばしてきてお互いの手が触れたりして。学校に行こうと玄関で靴を履いてると降谷くんが「俺もいまちょうど家を出ようと思ったところだから一緒に行かない?」とか声をかけてきたりして。二人きりで登校してたら「ねぇ、あの子降谷くんの彼女じゃない?」「うわぁ、可愛い子だから私たちは敵わないね~」なんて噂話なんかされちゃったりして。

 ま、まぁ~、今日は運悪く失恋してしまったけど、これからまだまだお近づきのチャンスがあるってことよね。
 あぁ、よかったぁああ~、まだ諦めなくて。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...