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第八章
209.相談
しおりを挟むーー翌日の日曜日。
今はコンビニのアルバイト中で、昼の混雑のピークが過ぎたばかり。
店内には客が疎らに滞在している。
だから、のんびりと揚げ物を作っていた。
昨日の話し合いは最後まで冷静沈着に行われた。
でも、お互い本性をむき出しにして罵り合ったりすれば、まだ少しは気が楽だったのかもしれない。
一日経っても、栞の話が整理しきれない。
栞の想いがまだ拓真に届いてないから、今はギリギリ助かってるのかな。
10年以上の想いとは、一体どのようなものなのだろう。
片想い歴2ヶ月の私には想いの深さが計り知れない。
それに、栞との時を再び刻み始めたばかりの拓真の心境が気になって仕方ない。
先日、勤務中にちらっと恋愛相談してみたバイトの先輩の山田が、今はレジ後方に陳列してあるタバコの補充を行なっている。
昨日から頭がパンクしそうなほど悩んでいたから、男側の意見の参考にと思って質問してみる事に。
「あのさぁ、山田くん。例えばの話なんだけど、昔好きだった幼馴染に自らの過ちで身体に一生残る怪我を負わせてしまうんだけど……」
「一ノ瀬さん。今日は一段と話が重いっスね」
「いいから聞いて! ……でね、その幼馴染は家庭の事情で引っ越しちゃうんだけど、1年後に再び現れて10年以上の長年の想いを伝える為に、一人暮らしまでして自分に想いを告げに来たらどうする?」
「ど、どうすると言われても……」
「空白の時間を過ごしている間に、自分の隣には既に絶世の美女で親密な友達がいるの。その子はとっても愛らしくて、しおらしくて、清楚系で頑張り屋さんで非の打ち所がないくらい素敵な女の子で、自分を心の底から好きでいてくれてるの」
「……え?」
「既に新生活が始まっていても、昔好きだった人が好きと伝えてきたら、付き合う? 付き合わない?」
「その質問に僕が答えるんですか?」
「いいから答えて! 無駄な前置きは要らないから」
睨みを利かせながら身勝手な質問をした和葉は、最初は軽いタッチで話に入ったにも拘らず、話しているうちに興奮してしまったせいか、無性に男性側からの意見が気になってしまった。
すると、山田は手にタバコの箱を持ったまま軽く目線を上げて考え始めた。
「んー。僕だったら新生活が始まっていたとしても、自分を忘れずにいてくれた幼馴染の子の方を選ぶと思います」
「えっ、女友達じゃなくて幼馴染の子を? だって、女友達は容姿端麗で男が放っておかないくらい超絶美人なんだよ?」
「(女友達とは、もしかして自分を指してるのかなぁ……)好いてくれる女友達の気持ちは嬉しいけど、気持ちは受け取れないと思います」
「どうして?」
「だって、その人は幼馴染の子が好きだったんでしょ? それならとっくに結論は出てるでしょう。本当に好きなら傷跡は二人で乗り越えていけるんじゃないかな。でも、隣にいるのが女友達じゃなくて、彼女だったらまた話は別ですけどね」
これが、山田から語られた男側の率直な意見だった。
山田が言うように、拓真はまだ過去の想いが残ってるから、栞と毎日一緒にいるのかな。
栞が自分に会う為に戻って来てくれたから、自ずと気持ちに応えようとしているのかな。
……じゃあ、後から現れた私はどうなる?
つい先日までは拓真と上手くいってると思っていたのに、拓真が栞の気持ちに応えようとしているなら、私の恋は?
もし、山田と拓真が同じ考え方だとしたら、栞が去ってから一年後に現れた私は完敗だ。
私が先に彼女になっていたら、また違う未来が訪れていたのかもしれないというのに……。
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