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第三章
20.宣言
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「佐川さん、話があるの。ちょっといいかしら」
私が1人で廊下を歩いていると、前方から歩いてきた河合さんはすれ違い様にそう言った。
すると、河合さんが同じレクレーション係だった事を思い出す。
「河合さん、レク係一緒だよね。よろし……」
「佐川さんはヴァンパイアなのよね」
彼女は私の耳元で小さくそう呟く。
いまこの瞬間まで自分がヴァンパイアだということを誰にも知られないように慎重に行動していた分、ひどく驚いた。
「ここじゃあ話が出来ないから屋上で話さない?」
彼女はそう言うと、ついて来いと言わんばかりに背中を向けた。
私は大人しくついていく事に。
背中を眺めながら歩いていると、悪い事ばかりが脳裏をよぎっていく。
どうしてヴァンパイアだという事がバレちゃったのかな。
もしかしたら、滝原くんに吸血していた所を見られちゃった?
どうしよう。
ミッションはまだ一回しか達成してないのに、人間に拘束されちゃうのかな。
拘束されたら、メディアを通じて有名人になって、研究施設にでも送られちゃうのかな。
そんなの、嫌……。
私達は誰もいない屋上に到着すると、彼女は振り返って腕を組みながら言った。
「佐川さんのミッションは何?」
「えっ、ミッションって……。河合さんはどうしてミッションの事を……」
「実は私もヴァンパイアなの」
「へっ?!」
「私のミッションは、気に入った人に三回吸血する事。その気に入った人は滝原くんなの。ちなみにあなたのターゲットは誰?」
「……私も、滝原くんがターゲット。私の場合、元々相手が決められてた」
恐々とした目でそう答えるが、彼女は淡々と話を続ける。
「ターゲットが同じ人なんて偶然ね。実は、人間の身体は1日に一度しか吸血を受け入れられない仕組みなの。知ってた?」
「えっ、それってどういう意味?」
「同日に2人のヴァンパイアから吸血された場合は、体内でヴァンパイアの同士の唾液が結合してしまうの。その際、身体に莫大な負担がかかって、場合によっては死ぬ」
「そんなっ……。つまり河合さんが滝原くんに吸血した後に私が吸血したら……」
「そういう事。つまり、吸血はどちらかの早い者勝ちになる」
「そんなの聞いてない!」
「……ま、豆知識程度に覚えといて。人間なんてしょせん下僕。別に生きようが死のうが私達には関係ない話だけどね」
「そんな事ないっ! 人間界に来てから1ヶ月ちょっとだけど、みんなすごく優しくしてくれるし、仲良くしてくれる。……それに」
「ヴァンパイアとしての使命を忘れたの?」
「それは……」
「自身のヴァスピスを見てから言ってちょうだい。そんな甘い考え方だからあなたの達成度はその程度なのよ」
彼女は目線を下げて私の1点灯のヴァスピスを指摘する。
私は見くびられたような気持ちになってサッと手を後ろに隠した。
「っ!!」
「校外学習が終わるまで滝原くんに三回吸血する。例えターゲットが被っていても私は容赦しないから」
彼女はそう言った後、私の肩をポンっと叩いて屋上扉の奥へ戻って行った。
その場に取り残された私は、閉ざされていく屋上扉の音を背中で聞き取りながらギュッと拳を握りしめた。
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