キミの言霊は恋の色を描く

伊咲 汐恩

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10.裕喜くんの悩み

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 ――昼食時間になり、私たちは約束通り広場に集まった。
 真妃たちが予め正方形のテーブル席をとっておいてくれたので、私たちはそれぞれ座る。
 相変わらず瑠依くんと裕喜くんはコミュニケーションを図ろうとしないけど、きっと時間と共に気持ちは落ち着いてくるはず。そう考えながら、手提げからお弁当を出してテーブルに並べた。

「じゃじゃーん!! 私が作ったのはおにぎりで、真妃が作ってきたのはサンドイッチだよ」
「おおぉっ! すげぇ豪華!」
「二人で話し合ってメニューを決めたんだ」

 瑠依くんと裕喜くんは向かい合わせに座ってるが、お互いの目線はテーブルに並べられたお弁当へ。

「へぇ~、二人ともやるじゃん。うまそう!」
「耶枝は料理が得意なんだよ。瑠依くん、耶枝の株が爆上がりじゃない?」
「もぉーーつ! 真妃ったら!」
「俺、こいつが作った卵焼きの味に惚れてるから」

 彼はそう言うと、割り箸を割って卵焼きをつまんだ。
 ”惚れてる”と言われた途端に私の頬は緩む。自分に惚れてると言われたわけじゃないのにね。

「へぇ~。瑠依くんは耶枝の手作り弁当を食べたことあるんだ」
「学校でね。瑠依くんったら、すぐつまみ食いするんだから」
「あのさ、俺が食いしん坊みたいな言いかたするのやめてくれる?」

 クスクスと笑いながら会話していると、私はテーブルの上に足りないものがあることに気づいた。

「……あ、飲み物がないね。私、みんなのぶんを買ってくるよ」

 カバンを持って席を立つと、裕喜くんが「バイト代入ったばかりだからみんなのぶんをおごるよ」と言ってうしろからついてきた。
 彼とは今日が初対面。そのうえ、瑠依くんと仲が悪そうだからなにから切り出していいかわからずに口をふさいでいると、彼は言った。 

「真妃から、瑠依が来るのを内緒にしてって耶枝ちゃんが言ってたって聞いて……」

 予想通り、彼は瑠依くんを意識している。事前に来ることを伝えていたら、なんとなく彼は来ないんじゃないかと思っていたからあえて言わなかった。

「う、うん。ごめん……。瑠依くんに二人が写ってる写真を見せたらちょっと気まずそうにしてたから、裕喜くんも同じように思ってるのかなぁって」
「……」
「二人の間になにがあったの? 私でよければ聞かせてくれないかな」

 瑠依くんが怒るほどの出来事があったかもしれないけど、まだその原因にたどり着いていない。偶然にも裕喜くんと二人きりになれたし、聞くのはいましかないと思った。
 これが、私たちのケンカの火種になってしまうこととも知らずに……。
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