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第二章
15.転校生
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キーン コーン カーン コーン……
「おはようございます。今日は5月20日。我がクラスに転校生が来ました。みんな仲良くしてあげてね」
「はっ、初めまして。江東愛里紗です。よろしくお願いします……」
クラスメイトに紹介してくれた担任教師に次いで頭を下げた。
今回が初めての転校。
引っ越し理由はマイホームが完成したから。
緊張してガチガチに震えながらも、これから1年間お世話になるクラス全員の顔を見る為に教室内を軽く見回した。
ーーすると、それは突然訪れた。
廊下側の前から三番目に座っている男子に目線が止まってしまう。
彼を見た瞬間、胸がトキめいた。
そう……。
恋の落雷が起こった。
これが一目惚れってやつなのかもしれない。
元々惚れっぽいタイプじゃないし、一目惚れなんてした事はない。
だから、今回が人生で最も衝撃的な出来事に。
彼はすらっとしたスリム体型。
黒髪で少しくせっ毛。
小さな顔にはっきりとした目鼻立ちをしている。
まぁ、こんな絵に描いたようなイケメンじゃ、一目惚れしてしまうのは私だけじゃないだろうな。
競争率が高そうだけど、いつかお話できる日が来るかな。
なぁんてぼんやり考えていると、担任教師は肩に軽く触れて窓際の方を指差した。
「じゃあ、江東さんは窓側の一番奥の空いてる席ね」
「あ、はい」
緊張と一目惚れで胸がドキドキしながら指示通りの座席に着いた。
初めての休み時間を迎えると、机周りに物珍しそうな表情で女子達が次々と集まってきた。
「江東さん……だったよね。以前は何処に住んでたの?」
「このクラスはアダ名で呼ぶのが流行ってるんだよ」
「愛里紗ちゃんだから、あーりんって言うあだ名はどう?」
このように、みんなが興味が湧かせてくれたお陰で少しずつ打ち解けていった。
正直嬉しかった。
新しい物づくしで心細かったから。
「あーりんでいいよ。よろしくね!」
満面の笑みで新しい仲間に返事をした愛里紗は、和やかな歓迎ムードに包まれた。
不安が払拭されると、これから始まる新生活に期待に胸を弾ませた。
引っ越しの荷解きも終わり、一日でも早く街に慣れる為に街を探検する事に。
駅前は割と拓けていて、ショッピングセンターや数々のビルが立ち並んでいるけど、駅から南に10分歩くと昔ながらの田舎らしさが残っている。
昭和時代に建てられたと思われる古い家屋や商店や畑。
一車線道路は5分に一台車が通過する。
街の新しい香りに包まれながら一つ一つに初めましての挨拶をするかのように、ゆっくりと見渡しながら風景を目に焼き付けていた。
すると、たまたま通りがかった空き地の横に古くて小さな神社を発見。
思わず興味が湧いた。
空に向かって真っ直ぐに伸びているコンクリートの鳥居の奥には、経年劣化によって所々と塗料が剥がれている古めかしい本殿が建っている。
惹きつけられるかのように鳥居の前に立って神社の中を見渡していたその瞬間、背後からブワッと強い風が吹いた。
まるで、この神社に入りなさいと言わんばかりに……。
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