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第三章
61.17回目の誕生日
しおりを挟むーー今日は17回目の誕生日。
理玖の母親が私の為にケーキを焼いたらしくて、塾帰りにそのまま理玖の家に直行した。
実は今日、咲が夕方から泊まりに来る。
私は午前中に塾があって、咲は昼過ぎまでバイト。
それぞれ都合が合う夕方の時間帯に約束している。
つまり、あまり時間に余裕がない。
正直断りたかったけど、私の為を思ってケーキまで焼いてくれたので断る事が出来なかった。
小学生の頃までは友達を家に招待をして誕生日を祝ってもらっていたけど、成長した今もあちこちで祝ってもらえるなんて幸せ者だね。
理玖の家で昼食用に作ってもらった名前付きのオムライスをお米一粒も残さずにペロリと平らげる。
久しぶりのおばさんの手料理は懐かしい味がした。
食事を終えると、おばさんは手作りケーキをテーブル中央へ。
ケーキはブルーベリーやラズベリーをギッシリ乗せてゼラチンでコーティングされている。
チョコプレートには白のチョコペンで【愛里紗ちゃん お誕生日おめでとう】と書いてあった。
うっ、本格的……。
誘いを断らなくて正解だった。
娘でもないのにここまでしてくれるなんて。
ちなみに私の母はケーキは購入するタイプなので、手作りケーキなど一度も作ってくれた事はない。
気遣い上手で料理上手な理玖のおばさんは、私にとって理想的な母親像だ。
理玖はロウソクを次々とケーキに刺していき、母親は手際よくライターで火を灯した。
「さ、愛里紗ちゃん。ロウソクの火を一気に吹き消してね」
理玖の母親は部屋のカーテンを閉めて室内を薄暗くした後、向かい合わせに着席している二人の間に座って、炎の明かりに照らされた顔を向けてそう言った。
17歳になった今はさすがにバースデーソングは歌わず、シンプルに儀式が行われる。
ケーキ上のロウソクは、大きいのが一本と、小さいのが七本。
刺さっている大きいロウソク一本が増えてから、時間の進みが早くなったような気がする。
「ありがとうございまーす。それじゃ、遠慮なく」
愛里紗は十七本のロウソクの火をグルリと首を捻りながら、フーッと力強く一度で吹き消した。
「すげぇ肺活量。ロウソクが一気に倒れるかと思った。……ってか、ケーキ本体が倒れそう」
「もーっ! 冗談はやめてよ~。今日は特別な日なんだからぁ。雰囲気台無し!」
「ウフフ。愛里紗ちゃん、誕生日おめでとう! 理玖、プレゼントを渡すなら今がチャンスよ」
「はっ……はぁっ?! ……そんなの、用意してねぇし」
理玖は動揺しながら少し迷惑そうにフンとふてくされた。
おばさんと理玖はいつもこんな調子。
今日も相変わらず仲がいい。
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