初コイ@進行中 〜忘れられない初恋相手が親友の彼氏になっていた〜

伊咲 汐恩

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第七章

137.理玖の笑顔

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  ーー冬休みに入り、理玖の彼女として二度目のクリスマスを迎えた。

  中学生の頃のクリスマスといえば、グループ交際メンバーで夕方から友達のマンションの集会室に集まって、飲食物を大量に持ち込んで、クラッカーを鳴らしたり、ケーキに顔を突っ込んだりして、バカ騒ぎしたっけ。

  あはは、懐かしいな……。

  でも、あの頃はまだクリスマスが恋人の特別な日という感覚がなかったし、理玖と形としては付き合っていたけどまだ友達感覚だった。



  先日、心配と迷惑をかけてしまったから謝罪の意味を兼ねて、今日は遊園地デートに誘った。

  翔くんと再会してから雪崩が起きてしまったように色々あってストレスが溜まっていたけど、やっぱり久々に理玖の笑顔が見たい。


  理玖の笑顔はホッとする。
  真夏の太陽のような明るい笑顔に不思議と癒される。

  最近えくぼに会えてないね。
  きっと、私が心配をかけたせいだよね。
  本当はこの笑顔をずっと守りたいなって思っているのに。


  世間が冬休み期間に突入したせいか、遊園地は開園前から混雑していた。
  理玖が窓口でチケットを購入している間にザッと辺りを見回してみると、親子、カップル、友人同士が遊園地の入場口に吸い込まれて行く。

  今日は私達も遊園地を楽しみにしている一員に。


  最近、制服デートを繰り返していたから、初めての遠出デートにお互いビックリするほどオシャレをしてきた。
  『そのジャケットかわいいね』なんて、何気ない褒め言葉だってくすぐったい笑顔が生まれる。

  理玖は朝からご機嫌で、園内パンフレットを食い入るように見ながら何を乗ろうか悩んでいた。



「ねーねー、アレに乗ろ!」



  理玖は目の前で高く指をさして目をキラキラ輝かせながら私の肩を組んだ。



「そんなにはしゃいじゃって。小学生じゃないんだから」

「俺はアレがいい!」


「あー、はいはい。わかったから」



  そうやって口を尖らせながら甘えられちゃうと、ついつい甘やかしたくなっちゃう。



「どぉれ?」

「ほら、アレ!  アレが一番に乗りたい!」



  肩をがっしりと掴まれたまま意志とは関係なく連れて来られて、指先をなぞるように見上げた先の乗り物とは……。



「嘘でしょ……」



  この遊園地の大目玉である絶叫マシンのジェットコースター。
  迫力満点な絶叫マシンに目を奪われると、怖くて足が竦んだ。


  天に突き上げるような太い柱の上には、急な上り坂を描き、頂上に達して一度車体を安定させた後は、屈折するように地獄へと突き落とされる仕組みになっている。

  頂上はマンションの10階以上に相当するほど。


  赤いレールの上り坂をゆっくり進んでじわじわと恐怖を煽り立てて、頂上に到着して恐怖がピークを迎えた瞬間……。

  足元が崩壊してしまったかのように地上を目掛けて落下していき、その先のハートを描くような二回転で意識を奪った後は、つけまつげが飛んで行きそうなほどのスピードで二周円を描き、今朝スプレーでセットしたおだんごの位置が遠心力によって右にずれてたんこぶのようになってしまう仕組みに。


  ーーその先は、死。
  口から泡が出てもおかしくないほど意識を奪うシステムとなっている。


  怖い……。
  怖過ぎる。
  それは、つけまつげが飛んで行く瞬間や、遠心力によっておだんごの位置がずれてしまう事ではない。

  周りに回ってスタート地点に戻って来た頃には身体に恐怖が叩き込まれてしまうから。

  しかも、放心状態のまま出口の階段を降りなきゃいけないのに、ガクガクと揺れた足取りで下る階段ですら、ジェットコースターに感じてしまっているからだ。


  どうして一番最初にジェットコースターを選んだのかな。
  初っ端から絶叫マシンに乗ったら、お腹の中で消化しきれていない朝食がリバースしそうだよ。

  いま物凄いスピードを出して地獄へと突き進んでいるジェットコースターの乗客は、目をひん剥きながらキャーキャー悲鳴を上げている。
  それを見て余計に恐怖が煽られている。

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