141 / 226
第七章
139.恐怖のお化け屋敷
しおりを挟む「どうして私の分のチケットまで出したの? まだ、お化け屋敷に入るなんて言ってない」
「ワックワクするなぁ。本物出て来んのかなぁ。最後に人間とか来られたらヤバイよな。超ドキドキだわぁ」
もはや私の話なんて完全にスルーだ。
「ねぇ、ちょっと~。聞いてる? 無視しないでよ」
「ほら、そこで駄々をこねてると渋滞するから、ブツクサ言ってないで早く行こ」
「理玖~~っ」
結局、ほぼ強制的に入り口の奥へと吸い込まれていく。
私にはこの瞬間からホラーなのに。
中に入ると不安を煽るような音が聞こえてきた。
履いてきたブーツには車輪がついていないのに、まるでローラースケートに乗ってるかのように引きずられていく。
お化け屋敷の奥に進むと、所々にぼんやりと薄暗い照明が点いている。
オシャレなやつじゃなくて青白くて不気味な方。
たまに火の玉のような映像もチラホラと視界の隅に入ってくる。
それから15秒も経たないうちに、通路の右脇から耳を塞ぎたくなるほどの爆音がした。
バーン!!(音と共に白い着物を着たお化けが右脇から出てきた音)
「ぎええぇぇ……!」
「うおっ……。いきなりキター」
突然右脇からお化けが出てきた途端、二人同時に身体を反らせた。
「あのお化け驚かす気満々じゃん。どうして頭に包丁が刺さってるの? 普通に料理してたら頭に刺さらないでしょ。それとも、誰かに刺されたの? 私が言うのも何だけど、人に嫌な事をするから怨みを買うんだよ。それとも、思い切って自分で刺したの? 結構大胆なんだね。だとしたら、どうしてお化けに生まれ変わったのかな」
「……あのさぁ。さっきからお前の心の声がダダ漏れなんだけど」
「えっ、心の声が聞こえてた?」
「口に出してりゃ誰にでも聞こえるだろ……」
途中理玖に突っ込まれながらも一緒に先へ進むと。
「う゛ああぁぁぁ………」(井戸からボロボロの着物を着た長い髪がボサボサのお化けが出てきた時の叫び声)
「ぎゃああぁぁ………」
「すっげぇ、顔に流れてる血とかめっちゃリアル」
再び恐怖が襲いかかり顔面蒼白のまま彼の腕にガシッとしがみついた。
冷気と爆音と衝撃的且つ刺激的な遭遇の繰り返しで恐怖に耐えられないが、何とか気持ちを立て直しながら大量の手汗をかいてビショビショの手のまま先を進む。
だが、この時点でお化け屋敷に入ってからまだ2分も経過していない。
ガタガタガタ……「ニャー」(墓地の複数のお墓が一斉に動き出し、その奥から化け猫が出てきた音)
「ギャーーーっ!」
「あはは」
理玖はお化け屋敷に慣れてきたのか笑い声しか聞こえて来ないが、私は悲鳴の次に手で顔を覆った。
あー、もーヤダ。
突然出てきて驚かすし、音が大きいからビックリする。
しかも、理玖は私の反応を見て指をさしてずっと笑ってるし……。
もう、薄情なんだから。
自分の表情は鏡を見なくてもわかる。
多分、血色の悪くて紫色の唇。
クーラーが直接当たらなくても血が通っていないのがわかる。
もしかしたら、今や私もお化けの一員かもね。
0
あなたにおすすめの小説
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる