初コイ@進行中 〜忘れられない初恋相手が親友の彼氏になっていた〜

伊咲 汐恩

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第七章

139.恐怖のお化け屋敷

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「どうして私の分のチケットまで出したの?  まだ、お化け屋敷に入るなんて言ってない」

「ワックワクするなぁ。本物出て来んのかなぁ。最後に人間とか来られたらヤバイよな。超ドキドキだわぁ」



  もはや私の話なんて完全にスルーだ。



「ねぇ、ちょっと~。聞いてる?  無視しないでよ」

「ほら、そこで駄々をこねてると渋滞するから、ブツクサ言ってないで早く行こ」


「理玖~~っ」



  結局、ほぼ強制的に入り口の奥へと吸い込まれていく。
  私にはこの瞬間からホラーなのに。


  中に入ると不安を煽るような音が聞こえてきた。
  履いてきたブーツには車輪がついていないのに、まるでローラースケートに乗ってるかのように引きずられていく。


  お化け屋敷の奥に進むと、所々にぼんやりと薄暗い照明が点いている。
  オシャレなやつじゃなくて青白くて不気味な方。
  たまに火の玉のような映像もチラホラと視界の隅に入ってくる。
 
  それから15秒も経たないうちに、通路の右脇から耳を塞ぎたくなるほどの爆音がした。



  バーン!!(音と共に白い着物を着たお化けが右脇から出てきた音)


「ぎええぇぇ……!」

「うおっ……。いきなりキター」



  突然右脇からお化けが出てきた途端、二人同時に身体を反らせた。



「あのお化け驚かす気満々じゃん。どうして頭に包丁が刺さってるの?  普通に料理してたら頭に刺さらないでしょ。それとも、誰かに刺されたの?  私が言うのも何だけど、人に嫌な事をするから怨みを買うんだよ。それとも、思い切って自分で刺したの?  結構大胆なんだね。だとしたら、どうしてお化けに生まれ変わったのかな」

「……あのさぁ。さっきからお前の心の声がダダ漏れなんだけど」


「えっ、心の声が聞こえてた?」

「口に出してりゃ誰にでも聞こえるだろ……」



  途中理玖に突っ込まれながらも一緒に先へ進むと。



「う゛ああぁぁぁ………」(井戸からボロボロの着物を着た長い髪がボサボサのお化けが出てきた時の叫び声)


「ぎゃああぁぁ………」

「すっげぇ、顔に流れてる血とかめっちゃリアル」



  再び恐怖が襲いかかり顔面蒼白のまま彼の腕にガシッとしがみついた。

  冷気と爆音と衝撃的且つ刺激的な遭遇の繰り返しで恐怖に耐えられないが、何とか気持ちを立て直しながら大量の手汗をかいてビショビショの手のまま先を進む。

  だが、この時点でお化け屋敷に入ってからまだ2分も経過していない。



  ガタガタガタ……「ニャー」(墓地の複数のお墓が一斉に動き出し、その奥から化け猫が出てきた音)


「ギャーーーっ!」

「あはは」



  理玖はお化け屋敷に慣れてきたのか笑い声しか聞こえて来ないが、私は悲鳴の次に手で顔を覆った。


  あー、もーヤダ。
  突然出てきて驚かすし、音が大きいからビックリする。

  しかも、理玖は私の反応を見て指をさしてずっと笑ってるし……。
  もう、薄情なんだから。


  自分の表情は鏡を見なくてもわかる。
  多分、血色の悪くて紫色の唇。
  クーラーが直接当たらなくても血が通っていないのがわかる。

  もしかしたら、今や私もお化けの一員かもね。

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