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第八章
165.ヤツの制服
しおりを挟むーーピンクの梅の花が開花を始めた2月上旬。
厚手のコートとマフラーに身に纏った翔は、理玖とマンツーマンで話をする為に英神高校へ。
あれは、3日前。
愛里紗を待ち伏せしていたら、改札から彼氏と手を繋いで出てきた。
そこで奴を知った。
俺は奴の本心が知りたい。
鉄は熱いうちに打てと言うし、奴の顔を忘れぬうちに話し合いたいと思って、午前授業の今日を狙って校門前で待ち伏せする事に。
会える可能性は低いのに、何故か妙な自信が気持ちを煽り立てている。
奴と会うには校門で待つしかない。
何故なら奴に関する情報はほぼゼロだから。
先日着ていた制服で通っている高校が判明したから、会うなら学校に出向いた方がいいと考えた。
「キャーっ。あそこにイケメンがいる!」
「あの人絶対芸能人だってぇ!」
「絶対そうだよー!」
校舎の方から翔に指をさしてキャーキャーと騒ぐ女子高生三人組がやって来た。
黄色い声を浴び慣れているが、今回は理玖探しに集中したくて、いつも以上に鬱陶しく感じていた。
すると、その三人組のうちの一人が謙虚な態度で声をかける。
「あのぉ……、どこの高校の方ですかぁ? うちの学校の制服じゃないみたいだから」
翔が目を向けると、彼女達はキャアと言った感じで互いの顔を見合わせる。
三人の見た目は明らかにギャル。
二人は金髪で一人は茶髪。
みな同じようなメイクをしてるから、俺からすると一卵性の三つ子と勘違いするくらい見分けがつかない。
唯一違うのは髪型くらい。
だが、瞳の奥はハンターのように欲まみれだ。
「誰かと待ち合わせですかぁ? もしかして、彼女とか」
「もしお暇でしたら今から私達と一緒にお茶でもどうですか?」
一見おしとやかに装う三人組。
だが、相手をしてる暇はない。
これから理玖という奴に聞きたい事が山ほどある。
だから、言った。
「ごめん、人を待ってて忙しいから」と。
大抵の人は冷たい態度であしらわれたら諦めて去っていくが、今日は相手が悪かった。
「沙由里、陽奈。イケメンって言うのはね、常に忙しいの。果報は寝て待てということわざがある通り、よりよい結果は自然と訪れるもの。だから、焦ってはダメ。大人しく彼の待ち人を一緒に待ちましょ」
三人組のうちのリーダー格と思われる女の一人が、身振り手振りを加えながら説得を始めると、二人はあぁと言ったように頭を頷かせた。
……は?
何言ってるんだ、この人は。
俺は嫌な予感がして困惑していると、そのうちの一人が手のひらに拳をポンと叩く。
「待ち人が現れたら一緒に遊べるかも!」
「ひょっとして、すっごいイケメンの友達がここに現れたりして」
「でもさぁ、これから来るのが彼女かもしれないよ」
「ないない! もし彼女だったら自分が通う学校で待ち合わせなんてしないよ」
「じゃあ、きっとイケメンの友達だよ。ワクワクしちゃうね。友達が来たらみんなでどこ行こうか」
俺はまだ何も言っていないのに、話だけが先行していく。
さっき断ったのに聞いてなかったのか。
頼む……。
頼むから、俺を無視して帰ってくれ。
それに、理玖という奴が来たら更に格好の餌食になってしまう。
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