初コイ@進行中 〜忘れられない初恋相手が親友の彼氏になっていた〜

伊咲 汐恩

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最終章

223.初コイ@進行中

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  ーー今から1時間半前。
  出かける支度を終えて部屋を出ようとして扉に手をかけたその時。
  窓から差し込んだ強い風がふと足を引き止めた。

  その風があまりにも温かくて強かったから、窓を閉めようと思って室内をUターンすると、学習机の引き出しに目が止まった。


  その引き出しの中に入っているのは、宝箱と恋日記。
  宝箱の中にはイルカのストラップと、もう使えなくなるほど小さくなったキャラクターの鉛筆がしまってある。

  身に吹き付けた風は、『忘れ物だよ』と言わんばかりの一足早い夏の香りがする温かい風だった。

  だから、その忘れ物に今の想いをギッシリと書き綴って、カバンにしまってから家を後にした。


  でも、それから数時間後、まさか彼の目に触れるなんて……。

  恋して。
  助け合って。
  ぶつかり合って。
  繋がって。
  別れて。
  そして、再会して……。


  小さな恋から始まった大きな愛。
  そこにはジェットコースター級の波乱が待ち受けていたけど、私達はお互いを信じて一つずつ乗り越えていった。



  彼は唇を離すと恋する瞳で言った。



「俺は『世界一愛里紗を愛してる』って隣に書き加えるよ」

「じゃあ、私も負けないくらいいっぱい『愛してる』って書く」


「ははっ……。長かったね。お前が待つ時間と気持ちが繋がる瞬間が」

「うん、長かったね。でも、こうやって会いに来てくれたからもう寂しくないよ」


「これからは、日記に会いたいと書き綴ってあった回数以上会いに来る。これまで泣いていた時間は、絶やす事のない笑顔の時間に変えていくから」

「うん」


「あ!  そうだ」



  彼は急に何かを思い出したようにポケットに手を入れると、ゴソゴソと何かを探って手に取り出した。
  そして、その何かが私の顔の前で振り子のように左右にぶら下がる。


  目を寄せて見てみると、そこにはいま指に絡めているピンクのイルカのストラップの片割れのブルーのイルカのストラップが。
  彼のストラップを目にしたのは、ストラップをプレゼントしてくれた日以来のこと。
  彼は左手を差し出してこう言った。



「お前のストラップを貸してごらん」



  私はストラップを指から外して手渡すと、彼はブルーとピンクの二つのイルカの口と尾の部分をくっつけ合わせた。
  すると、イルカの腹の部分にあたる空洞がハートの形に。



「この二つのイルカは今の俺達みたいだね」

「うん!」



  イルカの腹の空洞部分に太陽の光が差し込んだら、ハートの形が地面に映し出された。
  地面に小さなハートが創り出されると、私達は顔を見合せてくすっと笑った。




  ーーこうして、私達は小学六年生から始まった9年に渡る長い長い波乱の恋の旅を終えた。

  心の天気が晴れの日も、くもりの日も、雨の日も、雪の日もあったけど、失敗や苦難を乗り越えて大切な人達に支えてもらいながら、今という未来に辿り着いた。

  運命の波にさらわれて二人の間に大きな壁が立ちはだかり、様々な障害を乗り越えながら少しずつ大人になった。


  しかし、私達はどんなに遠く離れていても、お互いを想い続けている。
  この神社で出会ったあの日、あの瞬間から。

  ずっと、ずっと……。

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