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第一章 契約
命の値段
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自分は普通に語学留学をしにロンドンにやって来ていたんだった。日常を完全に観察されていたとしてもそういった観察結果しか出てこなかったろう、それほど健全な毎日であった。むしろ事故に遭う前よりはるかに充実していると言ってよかった、以前の学校は底辺校と言われるように、決してレベルも高くなく、教師も熱意や情熱など皆無で彼にとっては退屈な日常であった。しかしまったく環境の異なる異国での生活は刺激的であった、街並みも日本とはまったく異なり、地図やガイドブックを頼りに観光地を見て回る、それは非常に楽しい毎日であった、しかもお手当てという名目で毎月毎月大卒の初任給並みの賃金がもらえていた、このままここに就職してしまっていいかもしれない、そんな事を思いながら半年ほどの日々が過ぎて行った。
「I have come at your request.」
ノックをしながら声を掛けると中から返事があった。
「Come right in.」
中に入ると40代くらいであろうか、いかにもな雰囲気を漂わせた人物が座っていた。その顔は笑顔であり敵意を感じさせるものは全くなかった。
「Sit wherever you like.」
~~~~~~~~以下会話は英語で行われていると考えてください~~~~~~~~
「その後どうだね?」
「ロンドンでの生活を満喫させていただいております」
「日本での生活と比べ違和感はないかね?」
「電車の定期を買うと円形のエリア内がバスを含めて乗り放題なのがいいですね、あとは扉がたいていオートロックなのが慣れなくて3回くらい締め出されました」
ロンドンの交通機関のシステムはたしかに定期を買ってしまうと割安に感じられた。扉に関しては鍵を持たず、扉の外に出ると、それだけで勝手に鍵が掛かってしまい、締め出される事が数回あり、庭に出るだけの気軽な外出も鍵が必要であった。
しかし、その発言内容からは深刻な問題点など感じられず、十分に異国での生活を楽しんでいる様子さえうかがえた。
「思ったより食事もまずくはないだろう?」
「はい、ネタにされるほどではないですね」
病院食よりははるかにマシであると、心底思っていた。軽い雑談から話は始まったが、そろそろ頃合いと思ったのか男が本題に入り始めた。
「申し遅れたな、私はディーノ、まぁ中間管理職だよ」
年齢は40代くらいだろうか?建部はどうもここの連中の事をイマイチ掴みかねている側面があり、警戒はほとんどしなくなっていたが全面的には信頼できない、そんな感情でスタッフを見ている側面はあった。
「まぁ、胡散臭い組織に思うかもしれんが、今後どうする?」
「やっと、コミュニケーションが取れるようになってきたところで、質問などよろしいでしょうか?」
その質問に対し、ディーノは余裕のある表情とわずかな笑みを以って返答した。
「いいとも、答えられない事もあるが、嘘は言わないと誓おう」
その言葉がどこまで信用できるのかは不明であるが、とりあえず、話を進める事とした。
「自分が剣と契約して1週間ほどで何故、位置が特定できたんですか?」
「剣は契約を行う時独特の波長を形成する、よって観測に記録があり、刺客を差し向ける事となった、もっとも本当に厄介な者は結界を張り、分からないようにして契約を行うだろうがな」
サラッと刺客といったが、それは自分に差し向けられたヒルダの事であるのは分かり切っていた、やはり乱暴すぎる、そんな思いを察してか、話は続いた。
「刺客と言うのが乱暴に聞こえたろうね、理解はできる、しかし厄介なんだよ、中には所持するだけで、周りに死をまき散らすような最悪の物まで存在する、ちなみ我々によって封印されている物にはそういった厄介な物が大量に存在するぞ」
一人の命より大勢の命、無害かもしれないが有害かもしれない、有害だった場合取り返しがつかないから、無実無罪だったとしても、疑わしきは抹殺、そういった思考形態なのだという事は理解できた、しかしいざ自分にできるか?と問われると疑問である、可能性があるから殺せというのではあまりにも心が痛みそうだ。
「言っている事は理解できなくもないです、では何故自分の抹殺命令は中止されたんですか?」
「襲撃の際に水道の水が彼女を襲い君を守ったそうだね、剣が発見された場所は中国山脈、伝承などから考えて高確率で『クサナギ』『ムラクモ』と呼ばれた剣であると考えられた、その能力は死をまき散らすような凶悪な能力ではないという判断が下った事が大きいな」
叢雲、草薙といえば日本神話史上最も有名な剣であり、天皇家の三種の神器のうちの一つとしてそこまで神話に詳しくなくても知っていた。あまりのビックネームに少し言葉を失っていたが、さらに話は続いた。
「我々だってできれば殺したくない、それは本音だよ、ただ瞬殺しておけばそいつの命だけで済んだものを、調査に手間取り、人道を重んじた結果10万の死者が出た、そんな事態になったらどうすべきか?そういった概念だよ、正義だとは全く思っていないがね」
反論できなかった、その問題についてはその方針が絶対悪であるとも思えず、若干短絡的な気もしないでもないが、最高に危険な物がどれくらい危険なのか分からないだけに反論材料としては弱かった。
「ナイツオブラウンドって事はエクスカリバーがあるんですか?」
「興味あるかな?現在所有者はいないが、見て見るかね?」
『いいのかよ?』そんな事を考えてしまった、何しろ伝説の剣であるミーハー的な観点からも是非見て見たかった、二つ返事で見たい旨を伝えると、軽く笑いカギを持ちついてくるように言い扉から外へと出ていた。
地下の聖堂のようなところの中央祭壇に鞘に納められた形で剣は安置されていた、伝説の剣を間近に見ていると、予期せぬ提案を受けた。
「鞘から抜いてみるかね?できれば君が所有者だ」
軽く笑いながら言っているが冗談ではなさそうだし、嘘は言わないとまで言っている、その前に触っていいのか?という疑問が沸いてきた、指で剣を指し『いいのか?』という顔をしていると、面白そうに続ける。
「かまわんよ、ヒルダの胸や尻に触った場合安全は保障しかねるがね」
冗談のつもりだろうことは理解できた、しかしこの国は日本よりセクハラとか厳しいのではなかったのだろうか?それともおっさんのこういうギャグはやはり万国共通なのであろうか?そんな事を考えながら剣を手に取り、鞘から抜き放とうとした。
結果はビクともせずまったく反応はない状態であった、冷静に眺めていたディーノもま特に表情をかえることなくその様子を見ていた。
「才能でも血筋でもなく剣が選ぶかどうか、それだけであり、誰がえらばれるのかは正直分からんのだよ」
剣を所定の位置に戻すと、少し名残惜しそうにしながら、呟くように言った。
「伝説の鞘の能力が使えれば人類にすごい役立ちそうなんですけどね」
しかしその言葉にディーノは真っ向から反対する、
「それは我々の基本理念の真逆を行く事になるな、人類のために使うつもりはまったくない、というか基本は誰のためにも使わないという形だな」
それに関しては納得できなかった、たしかに災害の種になるかもしれないから刈り取るというのはギリギリ分からなくもなかったが、なぜいい事もしないのか?それは納得のいくものではなかった。
そんな建部の想いを感じ取ったかのようにディーノは話始めた。
「仮に命の再生が可能な道具があったとしよう、使うかね?みんな使いたがると思わないかね?子供を亡くした親などみな同じ想いを持っているのではないかね?全員に使うかね?順番に世界をまわるかね?その道具が一つしかないとしても?」
順番を巡って争いが起きるのは目に見えていた、権力者や金持ちがなんとかしようとする姿が目に浮かぶようであった。
「しかし、それを研究してなんとか再生とか量産とかできれば発展に寄与するのではって事も少し考えたんですけど」
「ふむ、悪いが君が考えるような事はみな考えるんだよ、現代の錬金術師や科学者が解明し同じものを作ろうとしたが、主に三種類に分けられた、いくらやっても全く解明できなかった物、ほぼ同等のレプリカの作成に成功した物、危険という判断から研究対象から外された物、エクスカリバーは解明できなかった物に分類されるね」
自分の考えが思いつきレベルのものであり、考えが足りていないと思い知らされる結果しか残らなかった。
「言いたい事はわかるし、気持ちも理解できんわけではないんだがね、難しい問題だと本心から思うよ」
しかし、そういった不思議な物を収集して研究するだけなのだろうか?今度はそこが気になってきた。
「研究以外だと、そういった物が世界のどこかで発見された時に回収するってのが主な役割何ですか?」
「それもそうだが、危険度としては若干低いね、危険なのは悪意を持ってそういった道具を使う者達、もしくは研究する者達、そういった者を速やかに抹殺する、それが一番厄介な任務かな」
偶然手に入れた人間を抹殺するのは心が痛むが、悪意を持って使おうとする人間を抹殺するならまだマシな気がする、ただし、そういった者は聞かなくても分るが手ごわい事が予想される。
やっぱりやりたくないけど、秘密を知った者には死を、とか言われたくない、どうするのがいいのだろうか?彼が迷っていると、迷いの理由を察したディーノは待遇面について話始めた。
「非協力的でも敵対しなければ現状の手当と同等の金額を死ぬまで保障しよう、君は平穏な世界で生きてもかまわんよ『抜けるなら死を!』なんてことは言わないから、そこは安心してくれ」
「なんで、そこまで潤沢な資金があるんですか?」
「いざという時に備えて各国が資金提供を善意でしてくれているんだよ、我々はどこにも肩入れしないが、もし相手がこういった道具を使用して何らかの行動を起こしたなら喜んで協力すると言ってあるからな」
善意の寄付というのは若干怪しいが、どこにも肩入れせず中立を保つことによって存続しているのは確かなのではないかと思ってしまった。
敵対しないだけで、毎月毎月お手当てがもらえるならそれもおいしい。
「ちなみに、日本には帰っていいんですか?」
「ああ、剣はこちらで預からせてもらうが、それさえ了承してくれれば構わんよ」
剣の所有権といっても、売るわけにもいかず、骨董として飾るくらいしか使い道はなさそうだし、預ける事にはまったく異存はなかった。
「ちなみに、協力者になるとどういう感じなんですか?」
「基本給+職務手当だね、ちなみに今回君を抹殺する任務の場合、諸費用別で500万くらいだね」
「人ひとり殺して500万か・・・正直軽くないですかね」
「たしかにね、スターアスリートの年棒の数分の一だからね」
自嘲気味に笑うがかなり違和感を感じた、スターアスリートって10億くらいもらうんじゃなかったっけ?500万と10億じゃかなり違わないか?どうも呑み込めず怪訝な顔をしていると、付け加えられた。
「ああ、ポンドだよ、だからだいたい1億円かな」
頭の中でスイス銀行に振り込んでおいてくれという殺し屋のセリフが浮かんできた。
「I have come at your request.」
ノックをしながら声を掛けると中から返事があった。
「Come right in.」
中に入ると40代くらいであろうか、いかにもな雰囲気を漂わせた人物が座っていた。その顔は笑顔であり敵意を感じさせるものは全くなかった。
「Sit wherever you like.」
~~~~~~~~以下会話は英語で行われていると考えてください~~~~~~~~
「その後どうだね?」
「ロンドンでの生活を満喫させていただいております」
「日本での生活と比べ違和感はないかね?」
「電車の定期を買うと円形のエリア内がバスを含めて乗り放題なのがいいですね、あとは扉がたいていオートロックなのが慣れなくて3回くらい締め出されました」
ロンドンの交通機関のシステムはたしかに定期を買ってしまうと割安に感じられた。扉に関しては鍵を持たず、扉の外に出ると、それだけで勝手に鍵が掛かってしまい、締め出される事が数回あり、庭に出るだけの気軽な外出も鍵が必要であった。
しかし、その発言内容からは深刻な問題点など感じられず、十分に異国での生活を楽しんでいる様子さえうかがえた。
「思ったより食事もまずくはないだろう?」
「はい、ネタにされるほどではないですね」
病院食よりははるかにマシであると、心底思っていた。軽い雑談から話は始まったが、そろそろ頃合いと思ったのか男が本題に入り始めた。
「申し遅れたな、私はディーノ、まぁ中間管理職だよ」
年齢は40代くらいだろうか?建部はどうもここの連中の事をイマイチ掴みかねている側面があり、警戒はほとんどしなくなっていたが全面的には信頼できない、そんな感情でスタッフを見ている側面はあった。
「まぁ、胡散臭い組織に思うかもしれんが、今後どうする?」
「やっと、コミュニケーションが取れるようになってきたところで、質問などよろしいでしょうか?」
その質問に対し、ディーノは余裕のある表情とわずかな笑みを以って返答した。
「いいとも、答えられない事もあるが、嘘は言わないと誓おう」
その言葉がどこまで信用できるのかは不明であるが、とりあえず、話を進める事とした。
「自分が剣と契約して1週間ほどで何故、位置が特定できたんですか?」
「剣は契約を行う時独特の波長を形成する、よって観測に記録があり、刺客を差し向ける事となった、もっとも本当に厄介な者は結界を張り、分からないようにして契約を行うだろうがな」
サラッと刺客といったが、それは自分に差し向けられたヒルダの事であるのは分かり切っていた、やはり乱暴すぎる、そんな思いを察してか、話は続いた。
「刺客と言うのが乱暴に聞こえたろうね、理解はできる、しかし厄介なんだよ、中には所持するだけで、周りに死をまき散らすような最悪の物まで存在する、ちなみ我々によって封印されている物にはそういった厄介な物が大量に存在するぞ」
一人の命より大勢の命、無害かもしれないが有害かもしれない、有害だった場合取り返しがつかないから、無実無罪だったとしても、疑わしきは抹殺、そういった思考形態なのだという事は理解できた、しかしいざ自分にできるか?と問われると疑問である、可能性があるから殺せというのではあまりにも心が痛みそうだ。
「言っている事は理解できなくもないです、では何故自分の抹殺命令は中止されたんですか?」
「襲撃の際に水道の水が彼女を襲い君を守ったそうだね、剣が発見された場所は中国山脈、伝承などから考えて高確率で『クサナギ』『ムラクモ』と呼ばれた剣であると考えられた、その能力は死をまき散らすような凶悪な能力ではないという判断が下った事が大きいな」
叢雲、草薙といえば日本神話史上最も有名な剣であり、天皇家の三種の神器のうちの一つとしてそこまで神話に詳しくなくても知っていた。あまりのビックネームに少し言葉を失っていたが、さらに話は続いた。
「我々だってできれば殺したくない、それは本音だよ、ただ瞬殺しておけばそいつの命だけで済んだものを、調査に手間取り、人道を重んじた結果10万の死者が出た、そんな事態になったらどうすべきか?そういった概念だよ、正義だとは全く思っていないがね」
反論できなかった、その問題についてはその方針が絶対悪であるとも思えず、若干短絡的な気もしないでもないが、最高に危険な物がどれくらい危険なのか分からないだけに反論材料としては弱かった。
「ナイツオブラウンドって事はエクスカリバーがあるんですか?」
「興味あるかな?現在所有者はいないが、見て見るかね?」
『いいのかよ?』そんな事を考えてしまった、何しろ伝説の剣であるミーハー的な観点からも是非見て見たかった、二つ返事で見たい旨を伝えると、軽く笑いカギを持ちついてくるように言い扉から外へと出ていた。
地下の聖堂のようなところの中央祭壇に鞘に納められた形で剣は安置されていた、伝説の剣を間近に見ていると、予期せぬ提案を受けた。
「鞘から抜いてみるかね?できれば君が所有者だ」
軽く笑いながら言っているが冗談ではなさそうだし、嘘は言わないとまで言っている、その前に触っていいのか?という疑問が沸いてきた、指で剣を指し『いいのか?』という顔をしていると、面白そうに続ける。
「かまわんよ、ヒルダの胸や尻に触った場合安全は保障しかねるがね」
冗談のつもりだろうことは理解できた、しかしこの国は日本よりセクハラとか厳しいのではなかったのだろうか?それともおっさんのこういうギャグはやはり万国共通なのであろうか?そんな事を考えながら剣を手に取り、鞘から抜き放とうとした。
結果はビクともせずまったく反応はない状態であった、冷静に眺めていたディーノもま特に表情をかえることなくその様子を見ていた。
「才能でも血筋でもなく剣が選ぶかどうか、それだけであり、誰がえらばれるのかは正直分からんのだよ」
剣を所定の位置に戻すと、少し名残惜しそうにしながら、呟くように言った。
「伝説の鞘の能力が使えれば人類にすごい役立ちそうなんですけどね」
しかしその言葉にディーノは真っ向から反対する、
「それは我々の基本理念の真逆を行く事になるな、人類のために使うつもりはまったくない、というか基本は誰のためにも使わないという形だな」
それに関しては納得できなかった、たしかに災害の種になるかもしれないから刈り取るというのはギリギリ分からなくもなかったが、なぜいい事もしないのか?それは納得のいくものではなかった。
そんな建部の想いを感じ取ったかのようにディーノは話始めた。
「仮に命の再生が可能な道具があったとしよう、使うかね?みんな使いたがると思わないかね?子供を亡くした親などみな同じ想いを持っているのではないかね?全員に使うかね?順番に世界をまわるかね?その道具が一つしかないとしても?」
順番を巡って争いが起きるのは目に見えていた、権力者や金持ちがなんとかしようとする姿が目に浮かぶようであった。
「しかし、それを研究してなんとか再生とか量産とかできれば発展に寄与するのではって事も少し考えたんですけど」
「ふむ、悪いが君が考えるような事はみな考えるんだよ、現代の錬金術師や科学者が解明し同じものを作ろうとしたが、主に三種類に分けられた、いくらやっても全く解明できなかった物、ほぼ同等のレプリカの作成に成功した物、危険という判断から研究対象から外された物、エクスカリバーは解明できなかった物に分類されるね」
自分の考えが思いつきレベルのものであり、考えが足りていないと思い知らされる結果しか残らなかった。
「言いたい事はわかるし、気持ちも理解できんわけではないんだがね、難しい問題だと本心から思うよ」
しかし、そういった不思議な物を収集して研究するだけなのだろうか?今度はそこが気になってきた。
「研究以外だと、そういった物が世界のどこかで発見された時に回収するってのが主な役割何ですか?」
「それもそうだが、危険度としては若干低いね、危険なのは悪意を持ってそういった道具を使う者達、もしくは研究する者達、そういった者を速やかに抹殺する、それが一番厄介な任務かな」
偶然手に入れた人間を抹殺するのは心が痛むが、悪意を持って使おうとする人間を抹殺するならまだマシな気がする、ただし、そういった者は聞かなくても分るが手ごわい事が予想される。
やっぱりやりたくないけど、秘密を知った者には死を、とか言われたくない、どうするのがいいのだろうか?彼が迷っていると、迷いの理由を察したディーノは待遇面について話始めた。
「非協力的でも敵対しなければ現状の手当と同等の金額を死ぬまで保障しよう、君は平穏な世界で生きてもかまわんよ『抜けるなら死を!』なんてことは言わないから、そこは安心してくれ」
「なんで、そこまで潤沢な資金があるんですか?」
「いざという時に備えて各国が資金提供を善意でしてくれているんだよ、我々はどこにも肩入れしないが、もし相手がこういった道具を使用して何らかの行動を起こしたなら喜んで協力すると言ってあるからな」
善意の寄付というのは若干怪しいが、どこにも肩入れせず中立を保つことによって存続しているのは確かなのではないかと思ってしまった。
敵対しないだけで、毎月毎月お手当てがもらえるならそれもおいしい。
「ちなみに、日本には帰っていいんですか?」
「ああ、剣はこちらで預からせてもらうが、それさえ了承してくれれば構わんよ」
剣の所有権といっても、売るわけにもいかず、骨董として飾るくらいしか使い道はなさそうだし、預ける事にはまったく異存はなかった。
「ちなみに、協力者になるとどういう感じなんですか?」
「基本給+職務手当だね、ちなみに今回君を抹殺する任務の場合、諸費用別で500万くらいだね」
「人ひとり殺して500万か・・・正直軽くないですかね」
「たしかにね、スターアスリートの年棒の数分の一だからね」
自嘲気味に笑うがかなり違和感を感じた、スターアスリートって10億くらいもらうんじゃなかったっけ?500万と10億じゃかなり違わないか?どうも呑み込めず怪訝な顔をしていると、付け加えられた。
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