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塔
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~~~宇然~~~
万里が俺に抱かれたがるのは、それに紛れて泣きたいからだと気付いている。
俺が万里を神仙界から攫ってきたのは間違いだったのだろうか。
たとえそうだったとしてもそれ以外の道は無かった。
だが…神仙と魔族の間では子は成せぬのだろうか…。
魔界が荒れているのは知っている。
魔王だった兄が王子と共に消え、次の魔王として立つはずの俺が引き籠もっているだけだったらここまでは荒れなかった。
万里の存在を知られてしまったからだ。
塔の姿は誰にも見えないし、万里は水しか飲まないから食の世話も要らない。
隠し通せると思ったところに油断があった。
いくらなんでも魔王だから完全に引き籠もることも出来ない訳で、数少ない執務で接触した側近に見えないほどの産毛を付けられていた。
前魔王、前前魔王が共に妻を囲っていたのだから、王妃を極秘で塔に幽閉していることは、何とか理解はされた。
しかし、王妃がいるのに子が生まれない、そんなことはかつて無かった。
そうなってくると、食べない万里に世話係を付けていなかったことが裏目に出た。
王妃は神仙だと、その噂が真実味を帯びて広まっていった。
禁忌を冒した魔王。
『生の気』を持たぬ王妃。
魔界はもう魔王を認めない、欲しない。
それから俺は僅かに執り行っていた仕事さえ放り出して完全に引き籠もっている。
~~~万里~~~
私に泣く資格など無いことは分かっているけれど、もうどうしたらいいのか分からない。
人間の女性と魔族の間では体を交えることはあるのだけれど、人間ではない私が抱かれる、それも幾度も…それは許されることなのかしら。
子が出来ないことは分かっているのに。
このことは宇然には言えない。
山から落ちた時に、気付いたらもう卵を失っていたなんて。
神仙はその身にただ一つしか卵を持たない。
だから、もう…私には子が成せない。
魔王の妻になる覚悟も勇気も無い上に。
そもそも宇然が魔王だとも知らなかった。
大きくて黒い、だけど時々羽根の先がキラリと虹色に煌めく鳥が綺麗で手を差し伸べただけ。
その鳥が美しい人に変化した時に心を奪われただけ。
その人が人間ではないことは明らかで、心を通わせてはいけないことも分かっていたけれど、どうにかすることなんて出来なかった。
“渡り”の前に既に出会ってしまっていた私たちは、“渡り”の夜にもう落ちるしかなかった。
その代償に卵を失うのだとしても。
万里が俺に抱かれたがるのは、それに紛れて泣きたいからだと気付いている。
俺が万里を神仙界から攫ってきたのは間違いだったのだろうか。
たとえそうだったとしてもそれ以外の道は無かった。
だが…神仙と魔族の間では子は成せぬのだろうか…。
魔界が荒れているのは知っている。
魔王だった兄が王子と共に消え、次の魔王として立つはずの俺が引き籠もっているだけだったらここまでは荒れなかった。
万里の存在を知られてしまったからだ。
塔の姿は誰にも見えないし、万里は水しか飲まないから食の世話も要らない。
隠し通せると思ったところに油断があった。
いくらなんでも魔王だから完全に引き籠もることも出来ない訳で、数少ない執務で接触した側近に見えないほどの産毛を付けられていた。
前魔王、前前魔王が共に妻を囲っていたのだから、王妃を極秘で塔に幽閉していることは、何とか理解はされた。
しかし、王妃がいるのに子が生まれない、そんなことはかつて無かった。
そうなってくると、食べない万里に世話係を付けていなかったことが裏目に出た。
王妃は神仙だと、その噂が真実味を帯びて広まっていった。
禁忌を冒した魔王。
『生の気』を持たぬ王妃。
魔界はもう魔王を認めない、欲しない。
それから俺は僅かに執り行っていた仕事さえ放り出して完全に引き籠もっている。
~~~万里~~~
私に泣く資格など無いことは分かっているけれど、もうどうしたらいいのか分からない。
人間の女性と魔族の間では体を交えることはあるのだけれど、人間ではない私が抱かれる、それも幾度も…それは許されることなのかしら。
子が出来ないことは分かっているのに。
このことは宇然には言えない。
山から落ちた時に、気付いたらもう卵を失っていたなんて。
神仙はその身にただ一つしか卵を持たない。
だから、もう…私には子が成せない。
魔王の妻になる覚悟も勇気も無い上に。
そもそも宇然が魔王だとも知らなかった。
大きくて黒い、だけど時々羽根の先がキラリと虹色に煌めく鳥が綺麗で手を差し伸べただけ。
その鳥が美しい人に変化した時に心を奪われただけ。
その人が人間ではないことは明らかで、心を通わせてはいけないことも分かっていたけれど、どうにかすることなんて出来なかった。
“渡り”の前に既に出会ってしまっていた私たちは、“渡り”の夜にもう落ちるしかなかった。
その代償に卵を失うのだとしても。
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