三層世界カランコーレル～目覚めたら隣にいた女の子は神仙なのか魔族なのか？～

おかえりなさい

一龍イーロンと朱里シュリが寝るので、雲嵐ウンランと白英ハクエイは、隣の白英ハクエイの部屋に行った。

ドアを開けた二人を待っていたのは中年男の変装を解いた俊英シュンエイだった。

「あれ？父さん、居たんだ。おかえりなさい」

「うん、さっき帰った。が、隣の部屋に居るのは一龍イーロンと…誰だ？」

「えっと…うわ、難しいな。どうやって説明したらいいんだろ…雲嵐ウンランさん、お願い出来る？」

「ええ？あ～、うん、朝目が覚めたら一龍イーロンの隣に女の子が寝ていたらしい」

魔族として長く生きてきた俊英シュンエイは、“渡り”のことを知っていたのもあって、流石に飲み込みが早かった。

「“渡り”の夜にか？神仙か？いや、そのまま寝続けるなんてことはないだろう。帰らない神仙なんている訳が無いはずだが」

「それがいたんだよ、父さん。実は完全な神仙じゃないみたいなんだけど、それと多分なんだけど、魔王と神仙の間に生まれた女の子なんじゃないか、って…」

「宇然ユーランの？！…は？え？女の子？の訳が無いだろう。魔族の子は皆男のはず…ん？魔王と神仙の間って言ったな？神仙は皆女…んん？」

「一先ひとまずそれは置いといてだな、俊英シュンエイ。その女の子の中に、本物の神仙が入ってるんだ」

「？？？？？」

「おい、顔が怖いぞ…。魔界もおかしいらしいが、神仙界も乱れているらしい。ま、その原因の一つがあの女の子なんだろうけどな」

雲嵐ウンランに顔が怖いと言われた俊英シュンエイは、頬をぺたぺたと叩きながら考えた。

「原因、か。魔界に…半魔が入り込んでいるのが気になるな。俺自身が行ったり来たりしているから気付いたが、一人や二人じゃない」

「もしかしたらそいつらが魔界で王妃の噂を広めているのかもしれんな。俊英シュンエイ、塔の中に神仙の王妃が幽閉されていることを知ったのはいつだ？」

「……宇然ユーランが一龍イーロンをここに預けに来た時にはもういたはずだな。しかし、その頃は王妃がいるなんて誰も知らなかった。少し前に、しばらく人間界にいてから魔界に戻ったらもうみんな知っていた。おかしいな。急だし、広まるのが速過ぎる。王妃は幽閉されていて全く表に出ていないし、世話係もいなかった…引き籠もりの魔王と接触出来るのは側近の季明リメイだが…一度会ってみるか？」

「会えるのか？」

「俺も元だが側近だったからな。伝手はある」

「ねえ、さっき父さんは行ったり来たりしていて気付いたって言ってたけど、それって何か理由があるの？」

「魔族と半魔と人間は区別が付きにくいと言われてるが、俺は見分けられるんだ。…なあ、雲嵐ウンラン、宇然ユーランが一龍イーロンをお前に預けたのはお前が半魔だと知っていたからなんだろう？それは自分から教えたのか？知り合いだといっていたが、いつどうやって知り合ったんだ？」

「ええっ？！雲嵐ウンランさんって半魔なの？！」

「魔界の王子を極秘で預けるんだから人間が相手じゃマズい。俺たち魔族はゆっくり年を取る上に相当な年数は一定以上年を取らないせいで定住しにくいから半魔は理想的だ。白英ハクエイも今はギリギリ子どもっぽい大学生で通るが、もうそろそろ変装が必要だろう。俺も中年の姿が一番長く持つからそう見せてきたが、いっそ若返って別人になってもいいかもしれん。素の俺は白英ハクエイの兄にしか見えんからな」

「え…ちょっと待って。そうだよ、ずっと引っかかってたんだ。でも、そんなこともあるのかなって…ねえ、なんで一龍イーロンは老けてるの？魔族なんだよね？」

「記憶を消された時に魔族としての何かも消されている。今の一龍イーロンは魔族でも半魔でも…人間でもない」