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朱里の記憶
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一心不乱にノートに今知った情報を書き付けている白英を横目にしながら、雲嵐さんは呟いた。
「私に『付き合え』って言ったのは、ホントに世間話がしたかったんだな。じゃあ、『足りん』って言ってたのは朱里ちゃんの覚醒のことだったのかな?」
「それもでしたが、一番足りていないのは一龍です。このままじゃ丸腰ですから。それにわたしにしても、インプットは出来ましたが、まだ整理が追いついていません。もっと大きな記憶、山の気の記憶も蘇っていますが、あの山の気はまだ幼くて記憶を言語化出来ないので深層心理に落とし込んでいますが…あの…わたしの言っていることって、分かりますか?」
丸腰ショックと話が分からないショックで絶句した俺はみんなの顔を見回したが、みんな上を向いたり下を向いたりしていた。
ノートを書く手を止めた白英が、新たに白いままの見開きページを開いて、言った。
「ごめん、朱里ちゃん、分からない。一つずつ聞いてもいい?」
「どうぞ」
「山が幼いってどういうこと?すごく大昔からあるよね?」
「山がではなくて、幼いのは山の気です。“神魔大戦”の時に発生したので、大主様でも意を汲む形でしか応答出来ません。この世界の理を知っていますが、容量の大きさが桁違いなので、わたしの成長の遅さよりも、もっと遅いのです」
朱里は言い聞かせるようにゆっくりと、区切りながら話した。
沈黙が流れる。
頑張れ、白英!
お前の頭脳だけが頼りだ!
白英はノートに大きな丸を書いたり矢印を引っ張ったりしながら続けた。
「それは…山に攻め込んだ魔族と人間を消したのも、魔王を大主たちに決めさせたのも、山の気の意思だったってこと?」
「そうです」
「意思…そこに意図はあるの?」
なんだ?禅問答みたいだぞ?
「ありますが言語化出来ません。解き明かすための材料も足りません」
「何が足りないの?それは分かる?」
「魔王の要素です。これまでの魔王たちは間違った方向に滅し過ぎてきましたから。山の気は、こんな世界は望んでいません」
「どんな世界を望んでいるの?」
「言語化出来ません。足りないんです。王龍はまだ存在しています。彼を探さなくてはいけません。でも主様は霧の道しか知らないし、わたしは母の落ちた道しか分かりません」
「…産場だと思う。さっきこっちの部屋で話していた時に、いろんなことが産場に収束していく感じだったんだ。感じ、なんかじゃ頼りないけど」
「いいえ、感覚は大事です」
ずっと見守るように話を聞いていた俊英さんが、腕組みを解いて言った。
「王龍を探すうちに何度か追い詰めた感触を掴んだことがある。そう思った瞬間消えてしまうんだが、あの、俺が産場の奥底に吸い込まれるように落ちた時もそうだった。あの時俺は接触していたんだろう。…その場所に案内する」
「いや、その前に昼ご飯だ」
そう言った雲嵐さんは、また食事の調達をするために出掛けていった。
みんなのお父さんは大変だな。
「私に『付き合え』って言ったのは、ホントに世間話がしたかったんだな。じゃあ、『足りん』って言ってたのは朱里ちゃんの覚醒のことだったのかな?」
「それもでしたが、一番足りていないのは一龍です。このままじゃ丸腰ですから。それにわたしにしても、インプットは出来ましたが、まだ整理が追いついていません。もっと大きな記憶、山の気の記憶も蘇っていますが、あの山の気はまだ幼くて記憶を言語化出来ないので深層心理に落とし込んでいますが…あの…わたしの言っていることって、分かりますか?」
丸腰ショックと話が分からないショックで絶句した俺はみんなの顔を見回したが、みんな上を向いたり下を向いたりしていた。
ノートを書く手を止めた白英が、新たに白いままの見開きページを開いて、言った。
「ごめん、朱里ちゃん、分からない。一つずつ聞いてもいい?」
「どうぞ」
「山が幼いってどういうこと?すごく大昔からあるよね?」
「山がではなくて、幼いのは山の気です。“神魔大戦”の時に発生したので、大主様でも意を汲む形でしか応答出来ません。この世界の理を知っていますが、容量の大きさが桁違いなので、わたしの成長の遅さよりも、もっと遅いのです」
朱里は言い聞かせるようにゆっくりと、区切りながら話した。
沈黙が流れる。
頑張れ、白英!
お前の頭脳だけが頼りだ!
白英はノートに大きな丸を書いたり矢印を引っ張ったりしながら続けた。
「それは…山に攻め込んだ魔族と人間を消したのも、魔王を大主たちに決めさせたのも、山の気の意思だったってこと?」
「そうです」
「意思…そこに意図はあるの?」
なんだ?禅問答みたいだぞ?
「ありますが言語化出来ません。解き明かすための材料も足りません」
「何が足りないの?それは分かる?」
「魔王の要素です。これまでの魔王たちは間違った方向に滅し過ぎてきましたから。山の気は、こんな世界は望んでいません」
「どんな世界を望んでいるの?」
「言語化出来ません。足りないんです。王龍はまだ存在しています。彼を探さなくてはいけません。でも主様は霧の道しか知らないし、わたしは母の落ちた道しか分かりません」
「…産場だと思う。さっきこっちの部屋で話していた時に、いろんなことが産場に収束していく感じだったんだ。感じ、なんかじゃ頼りないけど」
「いいえ、感覚は大事です」
ずっと見守るように話を聞いていた俊英さんが、腕組みを解いて言った。
「王龍を探すうちに何度か追い詰めた感触を掴んだことがある。そう思った瞬間消えてしまうんだが、あの、俺が産場の奥底に吸い込まれるように落ちた時もそうだった。あの時俺は接触していたんだろう。…その場所に案内する」
「いや、その前に昼ご飯だ」
そう言った雲嵐さんは、また食事の調達をするために出掛けていった。
みんなのお父さんは大変だな。
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