庭師見習いは見た!お屋敷は今日も大変!

NO*NO(ののはな)

文字の大きさ
1 / 38

庭師見習いは見た!お屋敷は今日も大変!

しおりを挟む
「おーい!マイクとフレッド!この肥料を第3温室まで持って行っといてくれ!この台車使っていいぞ!」

「「はい!」」

僕とフレッドはこの冬の終わりから伯爵家の庭師見習いになった。
春の大繁忙期に向けて少しでも戦力になるように、先輩に仕込まれている。

僕はもともと居た施設でも一通りのことはやってきたし、長身で成人済みに間違えられるほど体格がしっかりしているから肥料の袋を運ぶくらいのことに台車なんていらないけど、問題はフレッドなんだよな。

何をしたのか知らないけど取り潰しになった子爵家の三男坊であるフレッドは、もう文官として働いていた長男や、騎士団に入団した次男のような知力、体力が共に無く、温室の場所もまだ覚えてないし肥料の袋も持てない。

サラサラの金髪に綺麗な新緑の瞳、色白で小柄でフラフラぽよぽよしているフレッドと初めて会った時は吹けば飛ぶような風情でものすごく心配したけれど、庭師の親方は厳しいけれど優しい人だった。

「無いもんはしょうがない。体力はこれから付けろ。覚えられないなら工夫しろ。絵や字は書けるんだろう?努力するなら置いてやる。嫌なら他を探せ」

庭師の朝は早いから朝練は無理だけど、夕方に少し早足で散歩しながらメモを取るフレッドの姿は真剣だった。
末っ子でおっとりしていて素直で、まだ年若いせいか元貴族らしい嫌らしさの無い頑張り屋のフレッドは周りの人たちに気に入られていた。

「肥料の姿を台車に乗せたいんだけどまだ1人で持てないから手伝ってもらえるかな?」

申し訳なさそうにキュッと眉を寄せて頼んできたフレッドに、僕は笑って応えた。

「いいよ。じゃあ、台車のストッパー掛けて」

「うん!それは覚えた!」



朝が早くて午前中忙しい分、お昼ご飯の後の休憩が長い。
ほとんどが昼寝をするが、逢い引きをするために抜けていく人もいる。
同じ屋敷のメイドだったり外の女の人だったりするみたいだけど、黙認で誰も何も言わない。
仕事に支障をきたしたらそんな訳にはいかないんだろうけどね。

なんて僕がのんきなことを言ってられたのも昨日まで。
厨房に持っていく野菜を洗っていた僕は、近付いてきた洗濯メイドの女の子に誘われてしまったんだ。

「ちょっとだけでいいから2人だけで話したいの。お昼ご飯の後に渡り廊下の裏で待ってるね」

「え?僕?僕に言ってる?」

長身でがっしりしていると言えば聞こえは良いが、黒目黒髪モサモサ頭の地味男だという自覚はある。
天使みたいなフレッドと一緒にいるせいか、死神みたいだとか言われてるこの僕に?

「うん。だって優しいし…それに……カッコいいよ?じゃ、じゃあ待ってるからね!」

や、優しい?カッコいい?なんかヘンな間があったけど?疑問形だったけど?目が泳いでた気がするけど?…ホントに?



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。 時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。 数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。 自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。 はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。 短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました を長編にしたものです。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

処理中です...