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未来について考えた
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夏の終わりにドルトレッド伯爵家に2通の手紙が届いた。
そのうちの1通はマイクからで、もう一度庭師見習いとして伯爵家で雇ってほしい旨が書かれていた。
「“マイク”が戻ってくるんですね…」
フィルは、伯爵から手渡されて目を通した手紙をメイベルに渡した。
「ああ。それと、お前たちがここに残ったこととマイラー・ネルソン前子爵の撤退で、ネルソンの子爵家が“表”から下りることになった。そしてこの伯爵家が新しく“表”になることになったが、マイクだけは戻ってきた後も“裏”のままだ。マイクが第2王子だということは引き続き、ここにいないフレッドと私たち6人だけの秘密だ」
フィル、メイベル、メイ、サラ、マリがマイクからの手紙を読み終わった後で、もう1通届いていた親書を畳んだ伯爵は言った。
「王宮とか上層部はよく許しましたね」
フィルの言葉にメイベルたちは頷いた。
「そのためのマイクの王都行きだったようだな。いろんな問題を片付けていたんだろう。オーガストも向こうにいたし、レモネル国王陛下もアーサー王太子殿下も本来は聡明で思慮深い方だ。マイクを縛り付けるようなことは良しとしなかったんだろう」
伯爵は笑って、手元に戻ってきたマイクからの手紙を撫でた。
~~~~~~~~
「サラ、さっきそこ掃除してなかったっけ?」
通りかかったメイに揶揄われるほど、サラは落ち着きが無かった。
(マイクが帰ってくる)
そう思うと何かを叩いてないといられなかった。
だが、マイクは予定の時間を過ぎても帰ってこなかった。
(やっぱり帰るのをやめたとか?)
(王都で好きな人が出来た?)
(まさか事故?!)
心配し過ぎたサラが腹を立て始めた頃になって、やっとマイクが帰ってきた。
「ただいま~。これ僕からと、フレッドっていうか、ネルソン家からのお土産。遅くなってごめん。ちょっと寄るだけと思ったんだけど話が長くなっちゃってなかなか帰れなかったんだよ」
お土産を囲んでみんなが和気あいあいとしている輪から、サラは少し離れた。
朝から勝手に緊張して舞い上がって、心配してイライラして怒って、少し自己嫌悪になっていた。
(ああ、かわいくない。そもそもマイクとはただの同僚だし、何か約束していた訳でもないし…)
「…ラ、サラ?」
「え?あ…マイク…」
「どうした?具合悪いのか?」
「う、ううん。大丈夫。あれ?みんなは?」
「自室にお土産置きに行った。これ、サラの分。それと、これは別で。サラに似合いそうだと思ったから」
「え?…ブレスレット?私に?…他のみんなにも?」
「いや、あ~…考えなかったな。サラのしか無いから内緒にしておいて」
「そんなの無理だよ。着けてたらどうしたのって聞かれるし。…なんで、これ、私に…?」
サラは細い一重の金の鎖のところどころに柘榴のような深紅のビーズが散りばめられたブレスレットに指を絡めながら聞いた。
「ずっと前に出掛けた時にサラがブレスレットしているのを見て、手首が綺麗だなって思っていたんだ。でもあの時着けていたブレスレットは大人っぽいというかちょっとゴツかったから、これを見た時に『あ、これだ!』って思わず買っちゃったんだ。他の…みんなのは全然思いもしなくて…あれ?なんでだろう…?」
「ああ、あの時のブレスレットはメイベルさんからもらった物だったから…」
サラはブレスレットを左の手首に着けて、少し掲げるようにしてマイクに見せた。
「似合う?」
「うん。似合ってる…ごめん、サラ…手、握ってもいい?」
「…なんで?」
「綺麗だから。……さっきの…なんでか分かったよ。僕、サラが好きだ」
「え…あ、あの…私も今日は朝からずっと落ち着かなくて、その、マイクが帰ってくると思ったら…さっきは無愛想でごめんなさい。もう神経切れそうだったの」
「神経?!なんで?あ、遅かったから?ごめん!」
「違う違う、マイクは悪くないの。私が勝手におかしく…なって…」
「おかしくなってたの?僕のせいで?」
「う~……うん」
マイクは真っ赤になって俯いているサラの左手を握って引き寄せて、抱きしめた。
「いっぱい、いっぱい考えたんだ。僕のこと、国のこと、家族のこと、未来のこと。
…いつも同じところに行き着くんだ。『自分の心の声を見失わないで』って言ってくれたサラに。あの言葉をくれてありがとう」
「マイク…」
マイクの手がサラの後頭部を撫で、サラのマイクの背に回した手がマイクのシャツをギュッと握った時、扉が開いてみんながなだれ込んできた。
「「ええっ?!!」」
「あ、あ~、いや、悪い!マイク。覗いてた!」
潔く告白したフィルに、マイクは苦笑した。
そのうちの1通はマイクからで、もう一度庭師見習いとして伯爵家で雇ってほしい旨が書かれていた。
「“マイク”が戻ってくるんですね…」
フィルは、伯爵から手渡されて目を通した手紙をメイベルに渡した。
「ああ。それと、お前たちがここに残ったこととマイラー・ネルソン前子爵の撤退で、ネルソンの子爵家が“表”から下りることになった。そしてこの伯爵家が新しく“表”になることになったが、マイクだけは戻ってきた後も“裏”のままだ。マイクが第2王子だということは引き続き、ここにいないフレッドと私たち6人だけの秘密だ」
フィル、メイベル、メイ、サラ、マリがマイクからの手紙を読み終わった後で、もう1通届いていた親書を畳んだ伯爵は言った。
「王宮とか上層部はよく許しましたね」
フィルの言葉にメイベルたちは頷いた。
「そのためのマイクの王都行きだったようだな。いろんな問題を片付けていたんだろう。オーガストも向こうにいたし、レモネル国王陛下もアーサー王太子殿下も本来は聡明で思慮深い方だ。マイクを縛り付けるようなことは良しとしなかったんだろう」
伯爵は笑って、手元に戻ってきたマイクからの手紙を撫でた。
~~~~~~~~
「サラ、さっきそこ掃除してなかったっけ?」
通りかかったメイに揶揄われるほど、サラは落ち着きが無かった。
(マイクが帰ってくる)
そう思うと何かを叩いてないといられなかった。
だが、マイクは予定の時間を過ぎても帰ってこなかった。
(やっぱり帰るのをやめたとか?)
(王都で好きな人が出来た?)
(まさか事故?!)
心配し過ぎたサラが腹を立て始めた頃になって、やっとマイクが帰ってきた。
「ただいま~。これ僕からと、フレッドっていうか、ネルソン家からのお土産。遅くなってごめん。ちょっと寄るだけと思ったんだけど話が長くなっちゃってなかなか帰れなかったんだよ」
お土産を囲んでみんなが和気あいあいとしている輪から、サラは少し離れた。
朝から勝手に緊張して舞い上がって、心配してイライラして怒って、少し自己嫌悪になっていた。
(ああ、かわいくない。そもそもマイクとはただの同僚だし、何か約束していた訳でもないし…)
「…ラ、サラ?」
「え?あ…マイク…」
「どうした?具合悪いのか?」
「う、ううん。大丈夫。あれ?みんなは?」
「自室にお土産置きに行った。これ、サラの分。それと、これは別で。サラに似合いそうだと思ったから」
「え?…ブレスレット?私に?…他のみんなにも?」
「いや、あ~…考えなかったな。サラのしか無いから内緒にしておいて」
「そんなの無理だよ。着けてたらどうしたのって聞かれるし。…なんで、これ、私に…?」
サラは細い一重の金の鎖のところどころに柘榴のような深紅のビーズが散りばめられたブレスレットに指を絡めながら聞いた。
「ずっと前に出掛けた時にサラがブレスレットしているのを見て、手首が綺麗だなって思っていたんだ。でもあの時着けていたブレスレットは大人っぽいというかちょっとゴツかったから、これを見た時に『あ、これだ!』って思わず買っちゃったんだ。他の…みんなのは全然思いもしなくて…あれ?なんでだろう…?」
「ああ、あの時のブレスレットはメイベルさんからもらった物だったから…」
サラはブレスレットを左の手首に着けて、少し掲げるようにしてマイクに見せた。
「似合う?」
「うん。似合ってる…ごめん、サラ…手、握ってもいい?」
「…なんで?」
「綺麗だから。……さっきの…なんでか分かったよ。僕、サラが好きだ」
「え…あ、あの…私も今日は朝からずっと落ち着かなくて、その、マイクが帰ってくると思ったら…さっきは無愛想でごめんなさい。もう神経切れそうだったの」
「神経?!なんで?あ、遅かったから?ごめん!」
「違う違う、マイクは悪くないの。私が勝手におかしく…なって…」
「おかしくなってたの?僕のせいで?」
「う~……うん」
マイクは真っ赤になって俯いているサラの左手を握って引き寄せて、抱きしめた。
「いっぱい、いっぱい考えたんだ。僕のこと、国のこと、家族のこと、未来のこと。
…いつも同じところに行き着くんだ。『自分の心の声を見失わないで』って言ってくれたサラに。あの言葉をくれてありがとう」
「マイク…」
マイクの手がサラの後頭部を撫で、サラのマイクの背に回した手がマイクのシャツをギュッと握った時、扉が開いてみんながなだれ込んできた。
「「ええっ?!!」」
「あ、あ~、いや、悪い!マイク。覗いてた!」
潔く告白したフィルに、マイクは苦笑した。
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