庭師見習いは見た!お屋敷は今日も大変!

NO*NO(ののはな)

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番外編5従者は見た!これが裏ボスなのか…?!

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主の鞄を机の横のスペースに置いて、一礼して控室に下がろうとした時、教室に入ってこようとしている少年とすれ違った。
一歩引いて道を譲り、目礼していると声がかかった。

「ありがとう」

礼を言われるとは思わなかったので、ふと見上げてしまい一瞬目が合った。

「失礼致しました!」

慌てて謝罪したが、その少年は微笑んで手をひらひらと振ってくれた。

小柄で色白で、サラサラの金髪にライトグリーンの瞳のフワフワした雰囲気の少年だった。

嗜虐趣味を持つ主の餌食になりそうな子だな、と思った。

この学園は従者や侍女付きでもいいが、ほとんどの生徒は馬車を下りれば自分で自分のことをする。
王都にタウンハウスが無くて寮生活を送っている生徒も同様だ。

私の主は侯爵令息だが同学年に公爵家の生徒がいないので、威張りたがりで見栄っ張りな虚栄心を満たすために私を連れてきている。

主の朝の用意と昼食の世話、帰りの手配以外は行き先さえ伝えてあれば基本的に自由なので、隣接している騎士団で訓練をしている。

主は始め、平民の従者を嫌がったが私が武芸大会で優勝してからは、鞄持ちをさせて悦に入っている。
女性でさえ自分で自分の鞄を持っているというのに嘆かわしいことだ。

そう。私は主に忠誠など誓っていない。
旅に出るための資金集めだと割り切っている。
これに関しては姉に感謝している。
尊敬出来ない主に仕えることに腐りきっていた私の心持ちを変えてくれたのだから。
利用すれば良いのだと。

私の姉は、この度の粛清で逆に掬い上げられて再起を果たしたネルソン子爵家のメイドをしている。
姉の勤め先が取り潰しになった時に、ちょうどメイドを募集していて採用されたのだ。

そう言えば、そのネルソン子爵家の子息が入学すると言っていたな。
名前は何だったか…

「フレッド・ネルソン!平民落ちしていたお前に貴族の礼儀を教えてやる!俺に従え!」

…フレッド・ネルソンという名前だったな。

そして、この傲岸不遜な声は我がバカ主だ。

…自力でどうにかしてもらうしかないだろうな。現実は厳しいものだ。

「あ、そうなんだ。よろしくお願いします」

は…?大丈夫か?あの子。

この世は弱肉強食。
なんとか耐えて欲しいものだな。


~~~~~~~~



なんて思っていた時もあったんだが……。

何がどうなったのか、何様俺様だったバカ主がネルソン子爵令息に媚びている。

「あの、さあ、フレッド。これでどうかな?」

「うん、いいんじゃない?」

何をコソコソしているのか分からないが、今日の昼食時も何やら教えを請うている。

しかもそれは我が主だけではなく、結構な人数なのだ。

女子生徒からは元よりマスコット的な人気を博しているネルソン子爵令息が、男子生徒まで掌握しているとなると、ヒエラルキーの頂点と言っても過言では無さそうだが、本人は頼りなさげな一生徒を装っている。

これが裏ボスなのか…?!


そして私は今、裏ボスの少年と対面している。

「君ってあんなのの従者してるような人じゃないでしょ。なんで彼の従者をしているの?」

「………」

「ふうん、なるほどね。こういう聞き方をすればハウリングしないんだ」

「は?はう…?」

「ふふ、何でもない。もう分かったからいいよ。早くお金貯まるといいね」

「え?え?え?はあっ?!」

何だったんだ?え?怖…。
まさか…心が…?いやいや、深追いしない方が良さそうだ。

触らぬ神にたたり無し。



≈≈≈≈≈≈



フレッドside


とりあえずクラス全員の趣味嗜好は把握したかな。

知りたい情報を教えて、言って欲しい言葉を言ってあげる。

共感したり、敢えて否定してみたり、押したり引いたり、10代半ばぐらいの子供の心は柔らかくて、如何様いかようにも形を変える。

心の表面だけ、上っ面だけでいい。
深層心理なんて必要無い。
そんなのが聞こえたら押し潰されて溺れてしまう。

1人…よく分からないのがいる。

マイクとも違う。マイクはむしろ静かだった。
蓋をしてあるみたいに。

最初に僕に無礼な言葉を言ったやつの従者だ。

雑音が反響しまくってハウリングしてる。
心の声が多過ぎるし、回転が早過ぎる。

武芸大会で優勝したって聞いたし、あんなやつの従者をしているなんて謎過ぎる。

そう思って声をかけたら、何のことは無い、ただの資金稼ぎだった。
なるほどね。

早々裏なんてあるもんじゃないよね。


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