5 / 14
5話
しおりを挟む
お昼を食べ終わってから、リリィはレヴィアと待ち合わせをしていた図書館へ向かった。早く着きすぎたリリィは、図書館の隅っこで静かに本を読んでいて、気がついた時には、彼は目の前に座っていた。昨日のことがあってから、男の人が近くにいるだけで心臓の鼓動が早くなってしまう。どうやら小さなトラウマになってしまったみたいだ。
「殿下これ昨日貸していただいたジャケットです」
「返してくれなくてもよかったのに」
「いえ、そういう訳にもいかないです。助けても貰いましたし」
「そっか、じゃあその感謝の印ってことで何か一つ君の初めてがほしいな」
まさか恩返しを求められるとは思っていなかったけれど、仕方がない。私が何があるだろうと少し悩んでいると「キスは?」とレヴィアが言ってきた。
「したことないです」
「俺とキスするの嫌?」
「ファーストキスは大切にしていて…」
いきなりこの人は何を言い出してるの?確かに昨日助けて貰ったけど、やっぱりそんな事を求めるなんて、彼は噂通り、生粋女好きに違いないだわ。でも、彼に助けて貰ったんだから返さなきゃ行けないのもリリィはきちんと分かっている。
「俺とキスできるって言ったら、普通の女の子ならみんな照れて喜ぶのに」
とんだナルシストである。
「ところで、レヴィア様はロザリー様とお付き合いされているのではないんですか?こんな所で私なんかに時間割いていて宜しいのですか?」
「別に付き合ってないけど」
「そうですか」
どうやら勘違いだったらしい。じゃあ、あのロザリー様のあの言い回しはなに?それにレヴィア様の素っ気ない言い方も気になる。これ以上踏み込んで来るなという意味だろうか。
「リリィの初めて貰わないと、俺誰かにあのこと言っちゃうかもなぁ」
レヴィアはチラッと横目で私をみた。
「そもそもどうして初めてが欲しいんですか?」
はぁとため息をついてから言った。
「初めてって何事も大切でしょ?それを奪いんたいからだよ」
その答えを聞いてリリィは、なんて大人気のない人だと思った。いくら感謝しているとはいえ、人の大切なものを奪い取りたいだけだなんて。
「幻滅した?」
「はい、助けていただいたので良い人だと思ったんですが勘違いでした」
「正直でいいね。そういうとこ俺、嫌いじゃないよ」
そうですかと、リリィは軽い返事をした。
幼い頃から1人だったリリィは、ファーストキスだけは自分を愛し、自分が愛している人としたいと思っていたが、今思えばそんな現実はきっとこの先現れない。そもそもこんな私を愛してくれる人がいるはずないのだ。せいぜい政略結婚で嫁いだ人に奪われるのがオチなのだろう。それなら、もう誰だって変わらないのかもしれないと思い始めた。
「んで、どうするの?する?しない?キスがダメならもっと激しいことお願いするけど?」
レヴィアは肩肘を机に着きながら言った。
「します」
リリィは即答した。ただ、キスされるのを待つだけじゃ、この王子に負けたような気がして、覚悟を決めると、レヴィアに近づいて自分から軽く口付けをした。
さっきまで感じていた男性に対する恐怖の心臓の鼓動とはまた違う鼓動が何故かリリィの身体全身を打っていた。
キスの離れ際にリリィはレヴィアに頭を捕まえられて、そのまま彼の口にもう一度押し付けられた。リリィの長い前髪も彼の手で避けられてしまって、顔が丸見えになっている。
「や、やめてください…!」
精一杯の力を出して、リリィは彼から離れた。
「何震えてるんだよ。それに俺はもうお前の顔みたんだから隠さなくたっていいだろ?」
「そういうことじゃなくて…貴方はこの顔が気持ち悪くないんですか?それと、あんなキスするなんて聞いてないです…」
「まぁ、キスの件はいいだろ。それとリリィの顔が気持ち悪いって、それ本当に言ってるのか?」
「だって、私の顔は見るに堪えないから。いつも隠しなさいって…継母様いつも言われていて…」
「それでずっと顔を隠してた?」
「はい、その顔を他の人に晒したら家を追い出すと言われて」
「はぁ…そういうことか」
レヴィアが何かを察したかののうに小さくそう呟いた。
「でも、俺は君の顔好みだから、隠さないでよ」
「それは本当ですか?」
「嘘言ってどうすんだよ」
「もしかして殿下はB専なんですか?」
「さぁ、どうだろう。それと殿下じゃなくてレヴィアって呼んでよ」
「分かりました…レヴィア様」
「様はいらない」
「王族の方にそんな口の利き方できません」
「じゃあ、2人だけの時だけでいいから」
「…レヴィア」
「はい、よく言えました」
そういうと、彼は私の頭を片手で撫でながら今度はリリィに優しいキスをした。
私は子どもじゃないんだけれどと、思ったけれど、レヴィアがしてくれたこのキスは嫌じゃなかった。
レヴィア様は第二王子という立場ではあるが、彼はフランクな人で、話しているとつい彼が王族だと言う事を忘れてしまいそうになる。リリィは彼と話しているのが何だかんだ楽しいと感じていた。
「それとさ、もうひとつ言い忘れてたけど、昨日のスライム。形なんて見なくても何のスライムか分かってたんだよね」
いやー昨日はからかってごめんと、おちゃらけだ様子でレヴィアは話した。リリィはそれを聞くとすぐに顔が真っ赤になった。
「なっ!私がどんな思いだったか!」
「許してって、もう1回キスしてあげるからさ」
「結構です!」
その後リリィはレヴィアに対して、もう揶揄うのはやめてくださいと、少し怒りながらお願いをしたのであった。
その後、リリィは昨日借りた本に付け加えて、スライム専門の事典を図書館で借りて帰ったのであった。
「殿下これ昨日貸していただいたジャケットです」
「返してくれなくてもよかったのに」
「いえ、そういう訳にもいかないです。助けても貰いましたし」
「そっか、じゃあその感謝の印ってことで何か一つ君の初めてがほしいな」
まさか恩返しを求められるとは思っていなかったけれど、仕方がない。私が何があるだろうと少し悩んでいると「キスは?」とレヴィアが言ってきた。
「したことないです」
「俺とキスするの嫌?」
「ファーストキスは大切にしていて…」
いきなりこの人は何を言い出してるの?確かに昨日助けて貰ったけど、やっぱりそんな事を求めるなんて、彼は噂通り、生粋女好きに違いないだわ。でも、彼に助けて貰ったんだから返さなきゃ行けないのもリリィはきちんと分かっている。
「俺とキスできるって言ったら、普通の女の子ならみんな照れて喜ぶのに」
とんだナルシストである。
「ところで、レヴィア様はロザリー様とお付き合いされているのではないんですか?こんな所で私なんかに時間割いていて宜しいのですか?」
「別に付き合ってないけど」
「そうですか」
どうやら勘違いだったらしい。じゃあ、あのロザリー様のあの言い回しはなに?それにレヴィア様の素っ気ない言い方も気になる。これ以上踏み込んで来るなという意味だろうか。
「リリィの初めて貰わないと、俺誰かにあのこと言っちゃうかもなぁ」
レヴィアはチラッと横目で私をみた。
「そもそもどうして初めてが欲しいんですか?」
はぁとため息をついてから言った。
「初めてって何事も大切でしょ?それを奪いんたいからだよ」
その答えを聞いてリリィは、なんて大人気のない人だと思った。いくら感謝しているとはいえ、人の大切なものを奪い取りたいだけだなんて。
「幻滅した?」
「はい、助けていただいたので良い人だと思ったんですが勘違いでした」
「正直でいいね。そういうとこ俺、嫌いじゃないよ」
そうですかと、リリィは軽い返事をした。
幼い頃から1人だったリリィは、ファーストキスだけは自分を愛し、自分が愛している人としたいと思っていたが、今思えばそんな現実はきっとこの先現れない。そもそもこんな私を愛してくれる人がいるはずないのだ。せいぜい政略結婚で嫁いだ人に奪われるのがオチなのだろう。それなら、もう誰だって変わらないのかもしれないと思い始めた。
「んで、どうするの?する?しない?キスがダメならもっと激しいことお願いするけど?」
レヴィアは肩肘を机に着きながら言った。
「します」
リリィは即答した。ただ、キスされるのを待つだけじゃ、この王子に負けたような気がして、覚悟を決めると、レヴィアに近づいて自分から軽く口付けをした。
さっきまで感じていた男性に対する恐怖の心臓の鼓動とはまた違う鼓動が何故かリリィの身体全身を打っていた。
キスの離れ際にリリィはレヴィアに頭を捕まえられて、そのまま彼の口にもう一度押し付けられた。リリィの長い前髪も彼の手で避けられてしまって、顔が丸見えになっている。
「や、やめてください…!」
精一杯の力を出して、リリィは彼から離れた。
「何震えてるんだよ。それに俺はもうお前の顔みたんだから隠さなくたっていいだろ?」
「そういうことじゃなくて…貴方はこの顔が気持ち悪くないんですか?それと、あんなキスするなんて聞いてないです…」
「まぁ、キスの件はいいだろ。それとリリィの顔が気持ち悪いって、それ本当に言ってるのか?」
「だって、私の顔は見るに堪えないから。いつも隠しなさいって…継母様いつも言われていて…」
「それでずっと顔を隠してた?」
「はい、その顔を他の人に晒したら家を追い出すと言われて」
「はぁ…そういうことか」
レヴィアが何かを察したかののうに小さくそう呟いた。
「でも、俺は君の顔好みだから、隠さないでよ」
「それは本当ですか?」
「嘘言ってどうすんだよ」
「もしかして殿下はB専なんですか?」
「さぁ、どうだろう。それと殿下じゃなくてレヴィアって呼んでよ」
「分かりました…レヴィア様」
「様はいらない」
「王族の方にそんな口の利き方できません」
「じゃあ、2人だけの時だけでいいから」
「…レヴィア」
「はい、よく言えました」
そういうと、彼は私の頭を片手で撫でながら今度はリリィに優しいキスをした。
私は子どもじゃないんだけれどと、思ったけれど、レヴィアがしてくれたこのキスは嫌じゃなかった。
レヴィア様は第二王子という立場ではあるが、彼はフランクな人で、話しているとつい彼が王族だと言う事を忘れてしまいそうになる。リリィは彼と話しているのが何だかんだ楽しいと感じていた。
「それとさ、もうひとつ言い忘れてたけど、昨日のスライム。形なんて見なくても何のスライムか分かってたんだよね」
いやー昨日はからかってごめんと、おちゃらけだ様子でレヴィアは話した。リリィはそれを聞くとすぐに顔が真っ赤になった。
「なっ!私がどんな思いだったか!」
「許してって、もう1回キスしてあげるからさ」
「結構です!」
その後リリィはレヴィアに対して、もう揶揄うのはやめてくださいと、少し怒りながらお願いをしたのであった。
その後、リリィは昨日借りた本に付け加えて、スライム専門の事典を図書館で借りて帰ったのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる