顔バレしたらワケあり王子様に好かれました。

らら

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5話

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お昼を食べ終わってから、リリィはレヴィアと待ち合わせをしていた図書館へ向かった。早く着きすぎたリリィは、図書館の隅っこで静かに本を読んでいて、気がついた時には、彼は目の前に座っていた。昨日のことがあってから、男の人が近くにいるだけで心臓の鼓動が早くなってしまう。どうやら小さなトラウマになってしまったみたいだ。
「殿下これ昨日貸していただいたジャケットです」
「返してくれなくてもよかったのに」
「いえ、そういう訳にもいかないです。助けても貰いましたし」
「そっか、じゃあその感謝の印ってことで何か一つ君の初めてがほしいな」
まさか恩返しを求められるとは思っていなかったけれど、仕方がない。私が何があるだろうと少し悩んでいると「キスは?」とレヴィアが言ってきた。
「したことないです」
「俺とキスするの嫌?」
「ファーストキスは大切にしていて…」
いきなりこの人は何を言い出してるの?確かに昨日助けて貰ったけど、やっぱりそんな事を求めるなんて、彼は噂通り、生粋女好きに違いないだわ。でも、彼に助けて貰ったんだから返さなきゃ行けないのもリリィはきちんと分かっている。

「俺とキスできるって言ったら、普通の女の子ならみんな照れて喜ぶのに」
とんだナルシストである。 

「ところで、レヴィア様はロザリー様とお付き合いされているのではないんですか?こんな所で私なんかに時間割いていて宜しいのですか?」
「別に付き合ってないけど」
「そうですか」
どうやら勘違いだったらしい。じゃあ、あのロザリー様のあの言い回しはなに?それにレヴィア様の素っ気ない言い方も気になる。これ以上踏み込んで来るなという意味だろうか。

「リリィの初めて貰わないと、俺誰かにあのこと言っちゃうかもなぁ」
レヴィアはチラッと横目で私をみた。

「そもそもどうして初めてが欲しいんですか?」
はぁとため息をついてから言った。

「初めてって何事も大切でしょ?それを奪いんたいからだよ」
その答えを聞いてリリィは、なんて大人気のない人だと思った。いくら感謝しているとはいえ、人の大切なものを奪い取りたいだけだなんて。 

「幻滅した?」
「はい、助けていただいたので良い人だと思ったんですが勘違いでした」
「正直でいいね。そういうとこ俺、嫌いじゃないよ」
そうですかと、リリィは軽い返事をした。

幼い頃から1人だったリリィは、ファーストキスだけは自分を愛し、自分が愛している人としたいと思っていたが、今思えばそんな現実はきっとこの先現れない。そもそもこんな私を愛してくれる人がいるはずないのだ。せいぜい政略結婚で嫁いだ人に奪われるのがオチなのだろう。それなら、もう誰だって変わらないのかもしれないと思い始めた。  

「んで、どうするの?する?しない?キスがダメならもっと激しいことお願いするけど?」
レヴィアは肩肘を机に着きながら言った。

「します」
リリィは即答した。ただ、キスされるのを待つだけじゃ、この王子に負けたような気がして、覚悟を決めると、レヴィアに近づいて自分から軽く口付けをした。
さっきまで感じていた男性に対する恐怖の心臓の鼓動とはまた違う鼓動が何故かリリィの身体全身を打っていた。

キスの離れ際にリリィはレヴィアに頭を捕まえられて、そのまま彼の口にもう一度押し付けられた。リリィの長い前髪も彼の手で避けられてしまって、顔が丸見えになっている。
「や、やめてください…!」
精一杯の力を出して、リリィは彼から離れた。

「何震えてるんだよ。それに俺はもうお前の顔みたんだから隠さなくたっていいだろ?」

「そういうことじゃなくて…貴方はこの顔が気持ち悪くないんですか?それと、あんなキスするなんて聞いてないです…」

「まぁ、キスの件はいいだろ。それとリリィの顔が気持ち悪いって、それ本当に言ってるのか?」

「だって、私の顔は見るに堪えないから。いつも隠しなさいって…継母様いつも言われていて…」 

「それでずっと顔を隠してた?」

「はい、その顔を他の人に晒したら家を追い出すと言われて」

「はぁ…そういうことか」
レヴィアが何かを察したかののうに小さくそう呟いた。
「でも、俺は君の顔好みだから、隠さないでよ」
「それは本当ですか?」
「嘘言ってどうすんだよ」
「もしかして殿下はB専なんですか?」
「さぁ、どうだろう。それと殿下じゃなくてレヴィアって呼んでよ」
「分かりました…レヴィア様」
「様はいらない」
「王族の方にそんな口の利き方できません」
「じゃあ、2人だけの時だけでいいから」
「…レヴィア」
「はい、よく言えました」
そういうと、彼は私の頭を片手で撫でながら今度はリリィに優しいキスをした。

私は子どもじゃないんだけれどと、思ったけれど、レヴィアがしてくれたこのキスは嫌じゃなかった。
レヴィア様は第二王子という立場ではあるが、彼はフランクな人で、話しているとつい彼が王族だと言う事を忘れてしまいそうになる。リリィは彼と話しているのが何だかんだ楽しいと感じていた。

「それとさ、もうひとつ言い忘れてたけど、昨日のスライム。形なんて見なくても何のスライムか分かってたんだよね」
いやー昨日はからかってごめんと、おちゃらけだ様子でレヴィアは話した。リリィはそれを聞くとすぐに顔が真っ赤になった。
「なっ!私がどんな思いだったか!」
「許してって、もう1回キスしてあげるからさ」
「結構です!」
その後リリィはレヴィアに対して、もう揶揄うのはやめてくださいと、少し怒りながらお願いをしたのであった。

その後、リリィは昨日借りた本に付け加えて、スライム専門の事典を図書館で借りて帰ったのであった。
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