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学院生活────

第36話 授業 2

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少しの休憩時間の後、2限目体術の授業が始まるチャイムがなり、同時に先生が教室に入ってくきた。
先生は男の体格のいい先生でいかにも武人という雰囲気を出している。

「体術を教える、イサクだ。あと10分で体操着に着替えてグラウンドに来るように。男子、女子更衣室はグラウンドの左にある建物だ。急げよー」

私達はそれを聞くと、椅子から立ち上がりグラウンド近くにある更衣室へと向かった。




体操着に着替え終わると、グラウンドで待っているイクサ先生の元へと急いで走る。

「俺の授業は最初の2ヶ月間はずっと、基礎トレをして貰う。その後から色々武術を叩き込む。例え、武術で入学してきたやつも、みんなと同じように受けてもらうぞ」
「じゃあ、最初に各自で準備運動をしろ、終わったものからグラウンドを走れ。無理に達したら一旦休憩をとり、走れそうになったらまた走れ。以上だ」

うん。なんだかとてもアバウトすぎる。
とりあえず、今は言われた事をするしかないみたいだ。私は準備運動を軽く済ませ、これは持久力を増やす為の授業だと思うから軽く走りつつ、少しずつペースを上げていこう。
他のみんなは全速力で走っているけれど…

走り続けて30分ぐらいたった時、徐々に魔法メインで入ったきた生徒達が脱落していった。今残っている人達も最初から全速力で走っていたからどんどんペースが落ちていってたが、反対に私はどんどんとペースが上がっていった。

さらに30分たって、残りの授業の時間があと20分となったとき、イサク先生が声を上げた

「そこまでーーー!!」
「残りの20分間は鬼ごっこをしてもらう。魔法を使うのは禁止だ。鬼は俺だ。1回捕まったやつは、残りの時間まで腕立て伏せしてろー。敷地内はこのグラウンド内だ」

鬼ごっこかー!久しぶりだな。楽しみだなぁ。
因みに、走れば走る程体力は伸びるから、その結果だめしって言うわけで鬼ごっこをしているらしい。走れば走るほど、その日でもステータスの体力が増えるっていうところが異世界っぽさを更に感じる。

「よーし、じゃあ始めるぞ。321…」
カウントを数えはじめと、一斉に先生から逃げる。
けれど、開始30秒で5人程捕まってしまう。
これじゃ、授業時間終わるまで鬼ごっこなんて、到底続かない…。それにあの先生のスピードが尋常じゃない。まるで、野を走り回るチーターみたいな俊敏な動きをしている。
これも異世界だからこそなのだろうけどね…

開始5分…ほとんどの生徒が捕まった。
私は運がいいのか何なのか一回も追いかけられていない。
私、もしかしたら凄く影が薄いのかもしれない!と心配になってしまったぐらいだ。
今残っているのは水衣と私、ルイチェの3人と武器メインで入ってきた2人の5人だ。ルイチェは元々獣族だから運動神経に優れているからだと思う。

「ここまで残ったのは、たったの5人…まだ授業が終わるまで15分あるぞ?全滅しないといいな」
イクサ先生は私達を眺めながら、まぁあせいぜい頑張れよ。というように言う。この言葉を聞いた私達はプレッシャーや不安が一気に押し寄せてくる。
5分でクラスメイトの5/6しか残っていない。今残っている5人でも、結構な体力を消費しているはず。本当に残り15分持ちこたえられるのか…何かいい案は無いのかと、必死に思考を巡らす。

「あ!」
そうだ。体力を温存しつつ鬼に捕まらない方法。私はステータス状武術が計測不可能(Error)になっているから自身は無いけれどイクサ先生が私に触れようとする時とっさにそれを交わせばいいのだと。それの方法でどれくらい体力を保存できるかは分からないけれど、無駄に走って捕まるよりはマシでしょうと考えた。

更に5分経ち、授業が残り10分となった。残っているの人数は私含め4人。その中にルイチェ、水衣は含まれている。

「お前達中々やるなぁあ。だけど、これから俺は本気を出すぞ?いいか?これからあと1分でお前ら全員を捕まえるからな…」
そんな時、イクサ先生が唸り声を出すような低い声を発する。

なんていう、威圧なんだっっ…。本気モードって何?!チーターから何になると言うの?
私達が、どうしようと迷っているのもつかの間、ルイチェの背後にイサク先生がまるで、瞬間移動でもしたのかのように、現れる。
ルイチェが後ろを向こうとするが、その前にイサク先生の手がルイチェの肩に触れる。
その後、武器メインで入ってきた一人もあっという間に脱落し、開始10分にして残るは私と水衣のみ…。

どうしよう。次は絶対に私が狙われる気がする…

ん。まてよ。何か気配が…
私は急いで体を反転させる。
その時見えたのは、ルイチェの時と同じように背後を狙おうとしていたイサク先生の姿だった
「っ…!」
本当に来たぞ。どうするよチェリー!

「ほぉ…この気配に気付きすぐにかわすとは、流石今年入学トップの実力なだけあるな。本当は1番最後に取っておきたがったが…っ」
イサク先生は話していると同時に大きく前に踏み出し、私に触れようとする。
それを私は上手くかわす。
早い!だけど…『見える!』
イサク先生は何発も腕を差し伸ばす。その度に私はそれを華麗に避ける。イサク先生は腕だけでは…と思ったのだろうか?足と手を使い私にタッチしようとする。
おいおい!足OKなんですかっ!?と思ったけれど、私は後ろにクルリと宙に一回転をして避けた。
その戦いが5分以上と続いた。
そろそろ私の体力の限界っ…確かに私は体術才能には優れているけれど、体力がある訳では無い、それが致命傷になってしまったみたいだ。私はその場に力を失い放心状態なり、その場に倒れ込んだ。そこをイサク先生がタッチし、「惜しかったな。体力付けろよ」と私の状態を確認した後、声を掛けた…。


まぁあ、そりゃね。大人のあの人みたいに、いままで体力なんて付けようとしてなかったんだから、負けて当然だよなぁ…。でもそれが悔しい。あの言葉が本当ならば、体力さえあれば私はあの人に勝てたという事だ。これから体力付けて、いつかあの人に勝ちたい!心からそう思った。




鬼ごっこから脱落した後、魔法を使い体力を回復させる。
これから、鬼ごっこの決勝戦が始まる。
イクサ先生 VS 水衣
どちらが、勝つのかクラスの中でも話題になっている。

「水衣。いくぞ」

「はい。いつでも、どうぞ」

イクサ先生は私とルイチェの時のように、また水衣の背後に現れ、それに水衣が当然のように反応するが!!
イクサ先生はそこからすぐに、姿を消し水衣の膝元ぐらいに身を隠しながら、すっーと現れ、水衣の膝をトンっと叩いた。

「水衣。お前はもっと、予測しろ」

「はい…」

そうして、決勝はどこか悲しく終わり、それと同時に2時間目が終わる。


私達はまた、グラウンドの左側にある更衣室で制服に着替えた。
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