OUTBuddys

うつじま

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ようこそ、ノーザンピーク高校

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【ノーザンピーク高校、学生寮】


朝7時。寝癖でくちゃくちゃの頭をわしゃわしゃと掻きむしりながら、レックスは目を覚ました。けたたましく鳴り響く目覚まし時計にグーパンチを決めて止めると、針は午前7時ピッタリを指していた。学校は8時から、つまりあと1時間。早くしないと新学期早々遅刻になってしまう。


「起きろーっ」

同部屋の親友はまだ夢の中。狭そうにしながらも気持ちよさそうに寝入っている。大声で起こそうと声を掛けても、揺すっても全く起きる気配がない。しっぽで腹の辺りをべちんと叩いても、一瞬不快そうにしたあと寝返りをうって無視された。

「だめだ起きない、しょうがない最終手段使うか…」

ドスン!!
最終手段、布団ダイブ。レックスが誰かを起こす時の最終手段。全体重を相手に掛け、とにかく何も考えずに全身で体当たりをかます。おばのティナにも小さい頃からよくこれをやっては朝から怒鳴られていたもんだ。

「うおっ?!なんだなんだ、何事だ?!」

最終手段によって叩き起されたディーは突然の激痛の重みと負荷に耐えきれずしばらく手足をバタバタさせてそれを紛らわそうとしている。

「おっはよ、今日から学校だよーん!」

「テンション高ぇなぁおい…」

「だって今日から高校生だもーん!!」

「お前はな。俺は2年生最初っからやり直し」

「うぇーい留年~」

「うっせぇ、家庭の事情なんだよ」

「家庭の事情ねー…」

「てかさ、あんまし関係ない話なんだけどさ、俺達学年違うのになんで同じ部屋なんだ?昨日思ったんだけど寝ちまったから聞けなかったんだけど」

「寮がほぼパンパンだからさ、学年ごっちゃにしないと部屋が足らなかったんだって」

「なるほどな…」

「アレ、今何分?」

「あー、15分」

「まだ大丈夫だねー」

「あ、いや…これガチで大丈夫か?学校まで何分よ?」

「15分」

「あと30分しかねぇぞ時間!移動時間考えたらほぼ遅刻!!」

「え、急ご?!ヤバいって!!」


あまり時間が無い事に気付いた2人はドタドタと騒がしく動き始めた。着替え、朝食…は取っている余裕がないので動きながら、散らかった部屋を更に散らかしながら、登校準備を済ませる。廊下に出ると、寮内は既にがらんとしており、ほとんどの生徒はもう登校してしまったようだった。


Eh-oh…あちゃー

「すっからかん、だな」

「ま、まあ急げば大丈夫だし?」

「はぁ?今何分だと思ってんだ?45分だぞ!!レクシーお前がゴーグル変なとこに置くから!!探すのに何分掛かった?!」

「ディーだってずーーーっと髪の毛弄ってたじゃん!!鏡とにらめっこしてた!!」

「アホ毛が酷かったんだよ!!ぐっちゃぐちゃであんなんで外出れるか!!」

「あーあー、ストップ。喧嘩してたら余計時間使っちゃう。んじゃあさ、学校まで競走しない??」

「いいぜ、かかって来いよ。勝負事ならいつでも大歓迎だぜ」


寮の玄関に並び、学校までの徒競走対決が始まる。
スタートへのカウントはどんどん減っていく。

「スリー、トゥー…ワン、GO!!」

カウントが終わると、2人同時に駆け出した。ロサンゼルスの街中を朝から疾走する。2人とも身体能力は高い方、横並び状態が続く。


「げー横並びぃ?!んじゃオレ本気出しちゃうもんね!!」

レックスがそう言うと、急に立ち止まって、再スタートした。

「本気??バカ言うなよ、止まっても遅れるだけだぜ!」

「へへへ…ラプトルの脚力舐めんなや!」

「おまっ、ズルすんな!!」

いつの間にかレックスの足が恐竜のように変化していた。靴は半開きになったリュックにねじ込まれている。

「キメラの特権使うのはズルだろおい!!このクソラプトル!!」

「へへーん、オレの得意技だもんねーっ」


こうして半分口喧嘩になりつつも、結果的にはレックスが勝った。それと同時に、学校に到着。学年が違うので一旦別れ、教室に入る。新学期の始まりだ。






☆☆☆




【1年教室】

「おはよーございまーす!!」

ガラッとドアを開け教室に入るレックス、しかし他の生徒はみんな彼を凝視する。

「え、えっなに?何?!」

ザワザワと教室が騒がしくなる。一応時計を確認すると、7時58分。ギリギリ遅刻では無い。よく見ると、他の生徒たちは全員普通の人間。人間ではない別種やキメラはレックスひとりだけ。

「何あれ…しっぽ?」

「口裂けてるじゃん、痛そう」

「キメラだ、初めて見た」

ヒソヒソと小声で話すクラスメイトたち、好奇の目に晒されるレックス。

(なんかぁ…居心地わる…)

とりあえず席に着くも、しっぽが邪魔で座りずらい。まとめようとしても散らかしてしまうので、そのままだらんと垂らしたままにしておいた。チャイムが鳴り、授業が始まる。
しかし初日とはいえ、彼の高校生生活1日目は大変なものであった。授業中巡回する先生にしっぽを踏まれ、クラスメイトやすれ違う生徒たちには好奇の視線を嫌という程浴びる。そしてクラス環境もハチャメチャで、授業中でも後ろで話を聞かずふざけたり、スマホを弄っていたり、周りはお構い無しにメイクをしたり…

(あれ…??この高校、案外、いやめちゃくちゃ治安悪い…??)

レックスはふとそう思った。数ヶ月前、学校見学で来た時は、よくある公立高校といった雰囲気で、特に問題は無さそうだった。キメラの生徒も数名見かけたが、自身がこんなに極端なマイノリティになるとは思ってもいなかった。雰囲気の良い楽しそうな学校、そんなイメージだったのに。


(なんか残念、かなぁ…)


数時間後、やっと午前の授業が終わりランチタイム。クタクタのレックスはカフェテリアの隅っこの席でへたり込んでいた。


「よ、レクシー。だいぶヘタってんな?どした?」

「ディ~~~!!もうね、最悪なんだよぉ!!」

「その感じだと嫌な事あったんだな」

「あったってレベルじゃないよ!めちゃくちゃあった!!」

「んで、何されたよ」

「からかわれたし、めちゃくちゃジロジロ見られた!そんでせんせーにしっぽ踏まれるし、紙くちゃくちゃにしたやつ投げられたし!!」

「うぇぇ…最悪じゃねぇかよ。んだよ悪趣味だなぁ、キメラ差別か?」

「キメラ差別??そんなんあるの??」

「あるだろこんな原種と違ぇ人類が居るんだから。簡単に説明すっと、原種ってのはほら、なんもねぇ…んと、人間。キメラはその…ああ、30年前?から出てきた人間に他の生き物足して混ぜたみたいな連中。まぁ訳分からん治験の薬のせいだけどな。ほんで、急にひょこっと出てきたキメラたちに理解が追いつかなくて、差別する連中が出てきたって訳。」

「でも元はどっちも同じじゃんか」

「そこがめんどくせぇんだよ。差別するやつはキメラが人間じゃないって思ってる奴がほとんど」

「じゃディーは?」

「しねぇよ、キメラには慣れてるし、てかキメラじゃなくてガチで人間じゃねぇの見た事あるし」

「どゆこと…」

「あー…ジジイから教えて貰った話なんだけどな?人類に紛れて生きてるバケモンどもが居るんだと。」

「へー」

「ま、お前はそのうち上手くやってけんだろ」

「でもさぁ、なんか思ってたんと違うの残念」

「は?何言ってんだよお前」

「だって見学で来た時もうちょい平和だったもん」

「はぁぁぁぁぁ??ノーザンピークはクソ治安悪ぃ不良校で有名だぜ?俺も暴れる目的でここにしたし」

「え、マジで?」

「おう、大マジ」

「ウギャァァァァァァァァァァァ!!」

「うるっせ!!騒ぐなアホラプトル!!声帯恐竜になってんぞ?!」

「ごめん」

「てか飯取りに行こうぜ」

「うん」


雑談を切り上げ、昼食を取ろうと列に並ぶと、ありえない光景が広がった。

「おえぇ…ナニコレ…」

思わず2人揃ってそう言ってしまった原因、それはディスプレイの中に置かれていた料理である。いや、これを料理と言っていいのだろうか?とにかく、印象としては『不味そう』、そして『多分これは人間の食べ物ではない』。煮込まれすぎてグダグダになった野菜らしき緑のなにか、明らかに冷凍食品の癖になぜか焦げている揚げ物たち、いかにも腐っていそうな乳製品、見ただけでわかる砂糖の塊っぽい菓子類。このラインナップに健康もクソもないことは一目瞭然、味は2…いや5の次、というか期待してはいけない。

「うっげなんじゃこりゃ!!ムショの臭ぇメシよりヒデェじゃねぇかよ!!」

「え?刑務所のゴハンなんで知ってんの?」

「知り合いにムショとシャバ出入りしてるオッサンがいるんだよ、そいつから聞いた」

「やば」

「俺は絶対食わん」

「ウーンオレも同意見」

「ジジイが言ってた昔のソ連軍の飯の方がよっぽどマシだぜ」

「どんなの…なんか、ロクなのに思えないんだけど」

「ドロッドロのカーシャ」

「なにそれ」

「麦粥、そんでもって皿に盛ってひっくり返しても落ちてこないし味しねぇ」

「そっちのほうが良さそう」

「もうなんだよこの飯~!!飯だけペテルブルクに帰りたい、もしくは日本でもいい!!あ~ボルシチとペリメニが恋しい!!いや、ラーメンとか…あーもう美味そうならなんでもいい!!」

「クレイジー・インザアメリカだね…」


そんなこんなで、新学期初日から2人とも割と酷い目に遭った。そしてナメられたらとことん仕返しすること、昼食は持参することの2つを決めた。後で判明したことなのだが、2人のスクールカーストはもはやランク外。理由としては、レックスはキメラだから、ディーはとにかく恐ろしすぎる不良だから、ということらしい。帰り道、今日あったことをお互い話す中で2年の間で流れている噂を聞いたレックスが恐る恐る質問した。


「…ディーなにしたの、なんか噂になってるけど」

「何って、別にぃ??アジア人弄りしてきたやつにほんのちょっと喝を入れてやっただけ。あと母語で捲し立てた。『黙れこの犬のフン以下のクソ野郎、俺は中国人じゃねぇロシア人だ!!次そんなこと言ったら細切れにしてドン川に捨ててやんよ!!それかその汚ねぇケツの穴にAK-47突っ込んでやろうか?!』ってな」

「おもくそ喧嘩じゃんか…。しかも脅しまでしてる……」

「今どき差別とかダセェっての。キメラでもハーフでもなんでも括りとしちゃ人類なんだからよ、なーんでそんなクソめんどくせぇことすんのかね…」

「それにしてもさっきの言い過ぎだよ…ちょっと物騒すぎるって」

「大丈夫大丈夫、喧嘩は負けたことねぇし。……ジジイには負けてるけど。んで中学んときは学校で1番銃組み立てるの早かったんだぜ、俺」

「え、なにその授業、怖!」

「私立中だったし、国防は必修だったぜ?あーあと国保キャンプも参加したことあるな。退役軍人のオッサンたちが先公になって実践訓練するやつ。ま、ドンパチやることになったら任せとけよ」

「ええ……もう治安カオスだよこのあたり……あとオレの親友あまりにも危険人物」


ハチャメチャな初日にクタクタのレックス、対照的に暴れ足りないと言いたげなディー。まっすぐ寮に帰るかと思いきや、そんなことは無かった。


「嫌な事あった日は気晴らししねぇと気がすまねぇよな!」

「え、寮帰るんじゃないの??」

「まだ門限まであるじゃんか、遊んでこうぜ!ほら、ゲーセン、映画館、レンタルショップになんか色々飲食店!遊び放題だろこんなの!!最高じゃねぇかロス!!ペテルブルクはこんな楽しそうなとこ早々ねぇんだけど??」

「いいの?!」

「いいって事よ、金は心配すんな、ジジイからたんまり貰ってる」

こうして悪ガキコンビは、昼下がりの街に消えていった。もちろん帰る頃には門限に間に合わず、寮母のおばさんに叱られるのを回避するためにこっそり帰ったし、借りてきたホラー映画を夜中に見て絶叫爆笑の大騒ぎもしたし、ゲームセンターで取れた戦利品を並べてみたりもした。ちょっと問題アリだけど、最高に楽しい新学期の幕が開けたのだった。





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