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3 至って至生
至って至生4
しおりを挟む別にプリントを提出することなんて、なんてことない。ファイルに突っ込んで聖人に全部渡してしまえばいい。これで減点は防げる。
ミニテストも何となく重要にみえる点を繰り返せばなんとかなる。人文系なら渡されたプリントを見て、教科書や副読本を繰り返し読めばいい。
問題は数学や英語の定期考査だ。今まで放置し過ぎた。
家庭教師の先生がきた。
聖人の学校の後輩らしい。
家庭教師の先生は聖人と該当箇所を打ち合わせ済みなのか、数学と英語は教科書の最初からやらされた。
家に出入りする関係者はたいてい聖人よりも年上。この家では俺が一番の年少者だった。
家庭教師の先生は聖人より若く、学校にいる生徒よりも年上。若いし、顔も普通よりかっこよく垢抜けて見えた。
同年代は口元に薄毛が生えたままだったり、汗臭かったり、寝癖が酷かったり、脂ぎってぎとぎとだったり、制服がテカテカになってるやつや、ズボンが埃で白っぽく変色してるやつもいた。男子校で近くに女子が居ないからか洗練されておらず妙にガキっぽかった。
先生の横に並んで座ると整髪料なのかほんのり男性用の化粧品の匂いがする。口元も青くなく、カレー臭もなく、埃の匂いもしない。振る舞いも、しゃべり方もがさつな同級生とは違う、これが大人の身だしなみなのか。
説明をしてくれるが、変に感心してしまってさっぱり頭に入らない。思わず教科書の該当箇所をなぞる手入れをされた指を見入ってしまう。
爪はキレイに切りそろえられていた。爪に垢が溜まる状況じゃない。隣の席の吉川なんて園芸でもやってるのか爪の中が真っ黒だ。よく授業中シャープペンの芯でほじくっている。
爪の手入れが行き届いている男は彼女がいる可能性が高いとネットで見たことがある。
性行為の際に相手の柔らかい粘膜を傷つけてしまうことがあるからだという。
この先生はこの手入れの行き届いたこの指で誰の粘膜に触れているのか。
そう思うとなんだかどきどきしてきた。別に好きって訳じゃないけど、知らない格好い人ってやたら意識しちゃうだろ。
途中から俺が先生の事をじいっと見出したので先生自体が顔を赤らめて照れだしまった。自分のことを意識しだしてしまった先生。
自分がこの状況を引き起こしていると思うとなんとなく楽しくなってきた。質問にかこつけてわざと身体をすり寄せてみる。
最近はやたらまーちゃんに聖人のことで当て擦りを言われること多いので俺は大いに憤慨していた。
わざとまーちゃんの使う浴室に行ってなんちゃらオーガニックとか書いてある高そうなシャンプーを容赦なく使う。どばどばと。
俺の席の隣の柴田は俺のシャンプーの芳香に気がつくと女の子の匂いだーと言って俺の頭にかじりついてくる。柴田は女子のいる共学志望だったのに、母親に女好きな点を危ぶまれ男の園に放り込まれたらしい。今の状況を考えると、それって逆効果じゃないのか?
先生も俺のまーちゃん印のオーガニックシャンプーの匂いに戸惑って居るみたいだった。
結局、初めての家庭教師を性的に意識してしまった上、先生を照れさせてしまった。授業の内容はそっちのけで全く頭に入らなかった。
聖人に授業の感想を聞かれたので、指のことや先生が照れていたことを言ったら、次回から家庭教師の先生の姿は見えなくなった。
結局、これからは聖人が教えることになってしまった。反応が面白かったのに、ちぇっ。
まーちゃんには、「聖人が勉強をみるんだって、何かやらかしたの?」と問われた。まーちゃんは耳が早い。怖い怖い。
「何もしてないよ」
その場では素知らぬふりをしてやり過ごしたが、聖人の都合がつかない時にはまーちゃんが俺の勉強をみることになったらしい。凄い怖い。
「なんで、こんなのが分からないわけ。ここに線がみえるでしょ」
幾何の立体図形、俺には見えない線がまーちゃんには瞬時に見えるらしい。ボロクソに言うけどまーちゃんはやるべきことはやる。
見るべきポイントを繰り返し仕込まれると何となく線が浮かび上がって来るような気がしてくるのが不思議だ。
「まーちゃん、見えたよ! 補助線が見えた!」
長い航海の末、ハリケーンも、水兵の反乱も、食料の確保も私掠船に襲われる危機も乗り越えてやっとたどり着いた未知の大陸、そんな感じの補助線の発見だった。
「よし。よくできた。じゃあ、次。この二次関数これ中学でやる内容じゃないか。なんで間違えてるんだ?」
その未知の大陸には他国の軍船が居て、補給も出来ないまま更なる大海に追いやられた気分だ。俺の今までの航海はなんだったんだ。
俺の代数のミニテストを見てまーちゃんがぶつぶつ言い出した。スパルタなサイクロンになりそうで怖い。
まーちゃんに教わるより聖人がよかった。仕事で遠方に行っている聖人の早い帰宅を心底願った。
でも、きっと聖人も怖い。勉強はできるだけ自分一人でさっさと進めて、二人の関与を減らそう。それが俺の出した結論だった。
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