[完結]君は所詮彩り

balsamico

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3 至って至生

至って至生5

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ふふふ。今日のミニテスト2教科満点。シールも2枚。遂にシールが20枚溜まった。俺にシールを渡す聖人はいやそうな顔をしている。そりゃ聖人の貞操の危機? だからだろうな。


シールは5枚単位でイベントが来るようになっている。
5枚目は目を見つめ合う。なんじゃそれ。俺たちは大正時代の女学生か。


真面目に真正面から向きあって見た聖人の顔は変にかしこまっていて笑ってしまう。俺がぶっーっと吹き出すと顔に唾がかかった聖人は手で拭いながら静かに怒っていた。

「何だよ。この変なメニュー聖人が自分で決めたんだろ」
 
「違いますよ。真砂まさごさんです」

改めて見ると趣味がわるい。
大正時代から現代の男女交際を網羅して一気に風俗まで駆け抜けたみたいだ。45枚目なんて素股だって。憮然としている聖人に聞いてみる。

「俺、よくわからないんだけど。素股ってなに?」




10枚目は手をつなぐ。15枚目は一緒にお食事、20枚目は映画館にデート。

きっとまーちゃんは、この間に文通とか交換日記とかやらせたかったに違いない。本当いつの時代だよ。


同じ家に暮らしてるんだし、食事なんていつも大体一緒だし、映画なんて配信で見れるし。成人映画館にでも行けってか。そっちの方が、やばすぎるって。




シール獲得のペースの速さに見直しが入った。ミニテストの点数については今後考慮しないとのこと。ふざけんな。途中でルールを変えやがって。後出しジャンケンじゃんか。


シールの加点は数学や英語の定期考査だけになった。モチベーションは落ちまくる。急降下。


それでも俺は何となく習慣化してしまった勉強を惰性で続けていた。なんだかんだ26枚まで溜まったシール。でも、そこから先には進まなくなってしまった。


聖人が欲しくてたまらないのはヒート時だ。次のヒートまで期間があった俺は溜まらないシールを放置してしまった。







ヒートが近づきつつある気がする。あの独特の、どんどんと脈うつ感じが身体の中で高まってくる。


早めに抑制剤を飲む。もう以前みたいにΩってばれて学校でエロ物扱いされるのは嫌だ。ヒートが近づくと俺は存在を隠すように控えめになりおとなしくなる。


匂いがばれないよう、調子が悪い振りをして、できるだけ一人行動する。


みんなで囲む弁当。さっさと片づけて中庭に続く廊下のベンチで休憩時間を過ごす。


校内は携帯端末の持ち込み禁止。仕方なく文庫を広げるが、薬の作用かあまり集中出来ない。読んでいる振りをする。この集中出来なさ振りでよく入学試験に通ったなと思う。


背後からガサガサする。見知らぬ人がいた。同じフロアで見かけたことがない。きっと上の学年だ。

「ここ、いい?」

ベンチの空いている反対側を指さしていた。

「どうぞ」

荷物をよけ隙間を広げた。その人はベンチに座ると腕を抱えて目をつぶってしまった。昼寝でもしにきたようだ。


俺も本に目を落とすが全く文が目に入らない。


それよりも隣の男が気になった。本を見る振りをして横目で観察をする。少し長めの髪に身体のサイズにあったズボンとシャツ。それだけで校内では垢抜けた印象を与えた。


1年生は成長を見越して上のサイズの制服を親に着させられる。だからだぼだぼ。上履きのカラーは学年毎に違う。彼は緑色で2学年上の学年であることを表していた。


腕時計を見るとそろそろ教室に戻る時間だ。ベンチを離れると背後で男も動いた気がした。



翌日も昼休みで同じ男にあった。
昨日とは違うベンチ。また、横のスペースに相席していいか聞いてきた。断る理由も無かったから頷いた。


ただ違うことは教室に戻る際に突然話しかけられた。

「きたさと? きたごう?」

「いや、きたさと」

上履きの名前を見られていたみたいだ。相手の名前も見てやろうと見返すが、かかとを踏みつぶされた上履きには名前の記載がなかった。


急に手を引っ張られた。
体勢を崩して引き寄せられた耳元で囁かれた。

「……甘い香りがするね」


背中をぶわりと何かが走り抜けた。俺は手を振りほどいて一目散に教室に駆け出していた。

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