[完結]君は所詮彩り

balsamico

文字の大きさ
17 / 33
3 至って至生

至って至生8

しおりを挟む

ついにヒートが来た。少しふわふわする感じと鼓動が速まる感じ。普段感じない悪寒が少しだけする。これはヒートで体温があがっているから。抑制剤を飲んでいるから症状としてはこんなもん。


前回のヒートは自慰をしてみようとうきうき浮わついていた。すごく楽しみで、あれは実際、愉しかったんだ。


今は抑制剤を飲んでいるから、落ち着いている。自分的に全然苦しくはないし、普通にしていれば加害されることはないだろう。


昼休みに追加分を飲まなくてはならないが、あの上級生と一緒にいたら飲むことを邪魔されてしまうだろう。もし、夕方にでも抑制剤が切れたら。匂いで見つかり何かされてしまいそうだ。


昨日は触られただけで済んだ。予鈴のメロディが聞こえ、相手が聖人じゃないと気づいたとたん、俺自身が絶対値を習った時のように瞬間冷却された。素晴らしい冷めっぷり。授業中に催してしまった時にでも使おうと思ったほど。


予鈴がなったと言い捨て俺は逃げ出した。予鈴様々だった。


今日は念のため持っていく抑制剤を増やした。学ランの裏ポッケ、カバンの内ポケット、そしてズボンの尻ポケット。抑制剤を小分けにして持ち歩く。


よし、今日さえ乗り越えれば月曜日休みの三連休だ。でも、またあの先輩に何かされちゃうんだろうな。


俺には先輩に何かされても仕方ないような気がしていた。もっと抵抗すれば良いのに、実際、弱々しい抵抗しかしていなかった。


俺自身、何となく投げやりになっていた。原因は自分でも分かっていた。あの聖人のシールだ。定期考査に対してもらえるご褒美シール。


どう頑張っても、英語、幾何、代数でたった3枚。しかも1学期に中間、期末と最大6枚。


俺、勉強を頑張って取ったよ、中間で3枚。でも次は期末まで期間が空いているんだ。
頑張って全部集まったとしても、来年度以降だ。俺そんなに……頑張れないよ。


俺、聖人に相応しくないんじゃないかな。馬鹿だし、根性ないし。


あの先輩は俺のこと可愛いとか、好みとか言ってくる。
実際やってることは緩やかな脅しで、強引で不快だけど、そのうちやったら愛着がわくのかもしれない。あんなに強く俺を求めてくるのだから。
それにヒートになって催したらきっと誰でもよくなっちゃうんだ。
こんな風に妥協してカップルって出来てるんだろうなと思った。


最初、信じていた運命のつがいという概念も、今では都市伝説のような気がしていた。子供にだけ見える妖精みたいみたいなもので、きっと信じる人には見えるんだ。


薬をしまうのに時間がかかっていたら、送ってくれる聖人にせかされてしまった。ヒートの時は念のため車での送迎をお願いしている。

「最近、何か浮かない顔をされてますね」

「ヒートだからね」

運転中の聖人に言われた。やっぱり浮かない顔をしていたのか。俺は自分の中の投げやりを心の奧にしまった。そして、今朝ぼんやりと考えていたことを聞いてみた。

「聖人は運命の番の話、信じてる?」

しばらく黙った後、聖人は答えた。

「俺は信じていません。運命なんて後付けの言い訳です。運命の番は自分でこの人だと胸を張れる人を選べばいいんです」

聖人がこんな風に考えていたと、初めて知った気がする。

「それに愛情は、運命だからといって簡単に湧いてくるものではありません。愛情は自力で手に入れるものです」

ちょうど学校に近い路地についた。学校前には生徒が多数いるため、普段から少し離れた処で下ろしてもらっていた。

「じゃあ、ここで下りるわ、ありがとうな、聖人」

「帰りは終わり頃、校門近くで待ってますよ」

「わかった。ありがとう」

後部座席のドアを閉め、俺は校門に向かって走り出した。


聖人は運命なんて信じていないって言っていた。愛情は自力で勝ち取るものだって。


俺と聖人はやっぱり運命の番じゃないんだろうな。二人とも信じていなかったし。


でも、俺は勉強以外で聖人の愛情を勝ち取る努力をしていたのだろうか。校門に吸い込まれる生徒たちを見ながら自問していた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

処理中です...