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腕の中
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「おれは別に怒ってないです。そして、今でもあなたの事が好きです。好きっていうのはどういうことかというとですね――幸せを願ってるんですよ」
カウンターを回り込んで、虎豪さんに肉薄する。頭一つ高い虎豪さんを見上げ、安心させるように笑みを作る。視界を埋める巨大な虎はとても扇情的で、願わくば触ってしまいたいとも思っている。
自分の中の好きという気持ちを再確認して、おれはお願いを一つしようと思う。
もう迷うことはない。もっと虎豪さんとお近づきになる作戦を決行するのみだ。
「おれをこのお店で働かせてください。虎豪さんがそんなに疲れてるのは、絶対人手が足りないからだと思うんです」
まさかそんな提案が来るとは思わなかったのだろう、屈強な上半身をはだけさせたまま、虎豪さんが目を丸くする。
狗守さんの口からだけど、好きでないと言われてしまった。だけど、おれはまだあきらめきれない。この人の役に立ちたいし、この人に愛されたい。そんな感情が、この提案をする。
「それはわかるが、本当にいいのか、店の現状は知ってるだろう?」
「構いません」
ずっと願い続けてきたんだ。もっと虎豪さんの近くに居たいと。この店で働きたいと。
「それじゃあ、罰にならないだろうがよ」
「いえ、虎豪さんはこれから頑張って、おれを雇えるくらいお店を繁盛させる義務ができます」
「はんっ、物は言い様だな」
それだけ言いきって、虎豪さんは口をつむぐ。逡巡が無音に響き、おれは緊張して店主の採択を待つ。
ややあって虎の口がため息を吐き、しょうがないと言わんばかりに頭を掻きむしった。だんだんと黒を重くする室内だったけど、その溜息はすこし軽かった気がした。
「それがお前の答えなら、謹んで受け入れよう」
そして、巨体の腰を折り、深く一礼。
「すまなかった。こんな俺でも許してくれるなら、ぜひ、ここで働いてくれ」
「本当ですか!」
「本当も何も、事実人手は足りないからな」
その口調はさっきまでとは全然違う、いつも通りの虎豪さんだ。なんだかそれが、とてもうれしい。いつも通りの不機嫌そうな顔で、いつも通り腕を組んでいる。上半身裸はいつも通りじゃないけれど、目の保養になるので全然オーケー。
「あの、虎豪さん」
「あん? なんだよ」
重い雰囲気はどこにもない、軽い返事が返ってきた。
何も言わず、少しの明かりで綺麗に光る白い腹毛に向かい飛び込んだ。まわりきらない両手を全力で伸ばし、虎豪さんを包もうと努力する。
「……なんだよ急に」
振り払うでもなく、嫌がるでもなく。虎豪さんは聞いてくる。
初めて抱きついた腹は柔らかな毛皮と硬い筋肉の感覚を伝えてきて、脳が歓喜に湧き踊る。頬で感じる虎豪さんの体温はとても熱く、このまま抱きしめてほしいと強く思った。
「好きです」
「知ってる」
「だから、甘えてきてくれていいんです。虎豪さん、疲れてるじゃないですか」
わずかの間虎豪さんは何も言わなかったけど、大きな手をおれの頭にぽんっとのせてくれた。
ずっと欲しかった感覚。固いけど優しい掌。おれが好きな人の手。
「甘えてるよ。今だって十分甘えてる」
「おれは全然大丈夫ですから。もっときてくれていいくらいです」
「それに甘えてんだよ」
もう夜が来てしまった。明かりのない店内はとても暗いけど、猫科の虎豪さんには見えているんだろう。おれはただの人間だし月明かりだけではとても心もとないけど、虎豪さんがいてくれれば大丈夫。
「……見られたくなかったんだ」
そんな月明かりの世界で、虎豪さんのつぶやきが夜を震わせる。
「お前に見てほしくなかった。あんな姿を、俺があんなことをしているところなんて。でも、お前に見つかって、それで罵倒されれば、俺が罰を受けた気になってすっきりするのもわかっていた。それが自分で許せなかった」
おれの頭をなでながら、その心が吐露される。自分を許せない虎豪さんはその罪に見合うだけの罰をずっと考えたいたのだろう。心が疲弊していくのも構うことなく、ずっと謝る方法を考えていた。
「お前のことが恋愛的な意味で好きじゃないのは本当だ。でも、会いたくなかったわけじゃねえんだ。俺が弱いばっかりに向き合うことができなくて、本当にすまなかった」
ようやく虎豪さんの胃の中にわだかまっていた重い感情が薄まったようだ。縞模様の肩が力を抜いて、いかつさを減らす。
「正直な話、こうしてお前に抱き着かれても、嫌な気はしないんだ。お前を受け入れる準備ができてねえだけなのかもしれん」
虎豪さんの中でも整理できない感情が、困惑を持って喉を震わせた。同性からのアプローチなんて困惑しても当然で、だからこそ、拒否ではないだけで嬉しいのだ。
「準備ができたら受け入れてくれるんですか?」
「さあな……ここんとこずっと店の事しか考えてなかったから、お前の事をどう思ってるのか自分でもわからん」
髪の上を滑る手はどこまでも優しく、それだけでおれは幸せな気持ちになれるんだ。
「ただ、いなくなると困る」
その言葉だけで、胸が詰まってしまう自分は安い男なのだろう。まわした腕に力を込め、一つになりたいと望む。
そして、ふと見上げると虎豪さんと目があった。薄明かりには、おれの知らない虎豪さんがそこにいた。
「こ、ごうさん……?」
見たこともない柔らかい笑顔におれは目を疑った。
肉食を思わせる牙も、眼光も。その時ばかりは恐ろしくなんてなかった。細められた目は緩やかに弧を描き、うっすらと上がる口角は優しい笑顔に他ならない。
黒に溺れたこの場所に春が来たようだ。心地よい熱がおれの体を包み込むのを感じる。
「いなくなると、困るんだ」
その笑顔のまま、虎は言う。紡がれた言葉はどんな砂糖より甘くおれの耳をくすぐり、どんな名言より心に刻まれる。
ああ、ああ、見えているのだろうか。頬が赤らんだこんな顔を。おれという軽い男がいとも簡単に誑かされてしまったこの醜態が。猫科のあなたには、見えているのだろうか。
今まで好きだと何度も謳ってきたけれど、こんなに実感したのは初めてだ。心臓のなんとやかましいこと。心地よかった熱が胸を焦がすまでになり、春を超えた温度におれはなすすべもなく焼かれてしまう。
おれにできるのはこれ以上の摂取を止めることだけで、見ないように顔をうずめるだけで精いっぱいだった。
「まあ、お前には料理とかいろいろ教わってるし。まだまだ習うこともあるしな」
照れ隠しのように付け足された言葉が降ってくるけれど、顔を上げることなんて到底不可能だ。どうしよう、ドキドキが止まらない。
「だから、そういうことで、甘えてんだよな」
たとえ虎豪さんに好きと言われなくても、おれはこんなに幸せになれるんだと気付いてしまった。幸せを願っていると言った自分の言葉が嘘じゃないことを改めて確認する。
どれだけ虎豪さんを独占していたのかわからないけど、そろそろしびれを切らしてきたようだ。夜は時間の流れを遅くするが、虎豪さんはそれ以上に短気だから。
「で、お前はいつまで引っ付いってんだよ」
いつも通りの声音に戻った虎豪さんが不満を述べるけど、こんな顔で相対できるわけもない。もうちょっと、もうちょっと待ってください。
「虎豪さんは甘えるの下手じゃないですか。だから、虎豪さんが甘えるまでこうしてるんです」
それっぽいことを言ってごまかす作戦を実行。だけど、一聴する価値はあったらしい。
「そうか……そうだな、確かに疲れてるのかもな」
その声には、確かな実感がこもっていた。
兄として弟の残した喫茶店を継ぎ、慣れない作業に振り回され続けてきた。それに加え、おれとのいざこざがあって、だいぶ神経をすり減らしていたに違いない。
猫柳が持ってきた写真で、死んだような目をした虎豪さんは結構ぎりぎりのところだったのだろう。もしあのまま事が進んでいたら、おれはこうして虎豪さんに抱き着けなかったし、虎豪さんもホッとしたような表情を浮かべなかった。それだけは確信できる。
「ありがとな」
そして、虎豪さんはおれを抱き返してくれた。
「え、え?」
これにはおれの方がびっくりだ。虎豪さんの大きな体はおれの事をすっぽりと収めるくらいで、果てしない安心感がそこにはあった。
少し落ち着いたと思ったら、また心臓が暴れだす。今離されたら、その場にへたり込んでしまいそうだ。
「少しばかりこうさせてくれ……人に抱き着くなんて久しぶりだ」
そこには哀愁がにじみ出ていて、虎豪さんが癒やしに飢えていたことを物語っている。一人でお店を守ろうと奮闘していたせいで、人肌からだいぶ遠ざかっていたのかもしれない。
虎豪さんは強い大人だけど、だからと言ってずっと戦い続けられるわけじゃない。たまにはこうして甘えることも必要だ。でも、虎豪さんは不器用だからなあ。
「ずっとこうしていてもいいんですよ?」
「嫌だね暑苦しい」
それに素直じゃない。まだ腕を回したまま言うセリフじゃないと思います。
のしかかる巨漢の体重はそのまま虎豪さんの重み。それを支えることができる大人に少しは近づいたのだろうか。もしそうなら、とてもうれしい。
いまだほどかれない腕は虎豪さんの疲れを表しているようで、ずっと一人で立ってきた反動が来ているのかもしれない。おれは思い人の腕の中、その温かさに浸っている。
月明かりがほのかに差し込む喫茶店で、おれは虎豪さんが満足するまで抱かれていた。
カウンターを回り込んで、虎豪さんに肉薄する。頭一つ高い虎豪さんを見上げ、安心させるように笑みを作る。視界を埋める巨大な虎はとても扇情的で、願わくば触ってしまいたいとも思っている。
自分の中の好きという気持ちを再確認して、おれはお願いを一つしようと思う。
もう迷うことはない。もっと虎豪さんとお近づきになる作戦を決行するのみだ。
「おれをこのお店で働かせてください。虎豪さんがそんなに疲れてるのは、絶対人手が足りないからだと思うんです」
まさかそんな提案が来るとは思わなかったのだろう、屈強な上半身をはだけさせたまま、虎豪さんが目を丸くする。
狗守さんの口からだけど、好きでないと言われてしまった。だけど、おれはまだあきらめきれない。この人の役に立ちたいし、この人に愛されたい。そんな感情が、この提案をする。
「それはわかるが、本当にいいのか、店の現状は知ってるだろう?」
「構いません」
ずっと願い続けてきたんだ。もっと虎豪さんの近くに居たいと。この店で働きたいと。
「それじゃあ、罰にならないだろうがよ」
「いえ、虎豪さんはこれから頑張って、おれを雇えるくらいお店を繁盛させる義務ができます」
「はんっ、物は言い様だな」
それだけ言いきって、虎豪さんは口をつむぐ。逡巡が無音に響き、おれは緊張して店主の採択を待つ。
ややあって虎の口がため息を吐き、しょうがないと言わんばかりに頭を掻きむしった。だんだんと黒を重くする室内だったけど、その溜息はすこし軽かった気がした。
「それがお前の答えなら、謹んで受け入れよう」
そして、巨体の腰を折り、深く一礼。
「すまなかった。こんな俺でも許してくれるなら、ぜひ、ここで働いてくれ」
「本当ですか!」
「本当も何も、事実人手は足りないからな」
その口調はさっきまでとは全然違う、いつも通りの虎豪さんだ。なんだかそれが、とてもうれしい。いつも通りの不機嫌そうな顔で、いつも通り腕を組んでいる。上半身裸はいつも通りじゃないけれど、目の保養になるので全然オーケー。
「あの、虎豪さん」
「あん? なんだよ」
重い雰囲気はどこにもない、軽い返事が返ってきた。
何も言わず、少しの明かりで綺麗に光る白い腹毛に向かい飛び込んだ。まわりきらない両手を全力で伸ばし、虎豪さんを包もうと努力する。
「……なんだよ急に」
振り払うでもなく、嫌がるでもなく。虎豪さんは聞いてくる。
初めて抱きついた腹は柔らかな毛皮と硬い筋肉の感覚を伝えてきて、脳が歓喜に湧き踊る。頬で感じる虎豪さんの体温はとても熱く、このまま抱きしめてほしいと強く思った。
「好きです」
「知ってる」
「だから、甘えてきてくれていいんです。虎豪さん、疲れてるじゃないですか」
わずかの間虎豪さんは何も言わなかったけど、大きな手をおれの頭にぽんっとのせてくれた。
ずっと欲しかった感覚。固いけど優しい掌。おれが好きな人の手。
「甘えてるよ。今だって十分甘えてる」
「おれは全然大丈夫ですから。もっときてくれていいくらいです」
「それに甘えてんだよ」
もう夜が来てしまった。明かりのない店内はとても暗いけど、猫科の虎豪さんには見えているんだろう。おれはただの人間だし月明かりだけではとても心もとないけど、虎豪さんがいてくれれば大丈夫。
「……見られたくなかったんだ」
そんな月明かりの世界で、虎豪さんのつぶやきが夜を震わせる。
「お前に見てほしくなかった。あんな姿を、俺があんなことをしているところなんて。でも、お前に見つかって、それで罵倒されれば、俺が罰を受けた気になってすっきりするのもわかっていた。それが自分で許せなかった」
おれの頭をなでながら、その心が吐露される。自分を許せない虎豪さんはその罪に見合うだけの罰をずっと考えたいたのだろう。心が疲弊していくのも構うことなく、ずっと謝る方法を考えていた。
「お前のことが恋愛的な意味で好きじゃないのは本当だ。でも、会いたくなかったわけじゃねえんだ。俺が弱いばっかりに向き合うことができなくて、本当にすまなかった」
ようやく虎豪さんの胃の中にわだかまっていた重い感情が薄まったようだ。縞模様の肩が力を抜いて、いかつさを減らす。
「正直な話、こうしてお前に抱き着かれても、嫌な気はしないんだ。お前を受け入れる準備ができてねえだけなのかもしれん」
虎豪さんの中でも整理できない感情が、困惑を持って喉を震わせた。同性からのアプローチなんて困惑しても当然で、だからこそ、拒否ではないだけで嬉しいのだ。
「準備ができたら受け入れてくれるんですか?」
「さあな……ここんとこずっと店の事しか考えてなかったから、お前の事をどう思ってるのか自分でもわからん」
髪の上を滑る手はどこまでも優しく、それだけでおれは幸せな気持ちになれるんだ。
「ただ、いなくなると困る」
その言葉だけで、胸が詰まってしまう自分は安い男なのだろう。まわした腕に力を込め、一つになりたいと望む。
そして、ふと見上げると虎豪さんと目があった。薄明かりには、おれの知らない虎豪さんがそこにいた。
「こ、ごうさん……?」
見たこともない柔らかい笑顔におれは目を疑った。
肉食を思わせる牙も、眼光も。その時ばかりは恐ろしくなんてなかった。細められた目は緩やかに弧を描き、うっすらと上がる口角は優しい笑顔に他ならない。
黒に溺れたこの場所に春が来たようだ。心地よい熱がおれの体を包み込むのを感じる。
「いなくなると、困るんだ」
その笑顔のまま、虎は言う。紡がれた言葉はどんな砂糖より甘くおれの耳をくすぐり、どんな名言より心に刻まれる。
ああ、ああ、見えているのだろうか。頬が赤らんだこんな顔を。おれという軽い男がいとも簡単に誑かされてしまったこの醜態が。猫科のあなたには、見えているのだろうか。
今まで好きだと何度も謳ってきたけれど、こんなに実感したのは初めてだ。心臓のなんとやかましいこと。心地よかった熱が胸を焦がすまでになり、春を超えた温度におれはなすすべもなく焼かれてしまう。
おれにできるのはこれ以上の摂取を止めることだけで、見ないように顔をうずめるだけで精いっぱいだった。
「まあ、お前には料理とかいろいろ教わってるし。まだまだ習うこともあるしな」
照れ隠しのように付け足された言葉が降ってくるけれど、顔を上げることなんて到底不可能だ。どうしよう、ドキドキが止まらない。
「だから、そういうことで、甘えてんだよな」
たとえ虎豪さんに好きと言われなくても、おれはこんなに幸せになれるんだと気付いてしまった。幸せを願っていると言った自分の言葉が嘘じゃないことを改めて確認する。
どれだけ虎豪さんを独占していたのかわからないけど、そろそろしびれを切らしてきたようだ。夜は時間の流れを遅くするが、虎豪さんはそれ以上に短気だから。
「で、お前はいつまで引っ付いってんだよ」
いつも通りの声音に戻った虎豪さんが不満を述べるけど、こんな顔で相対できるわけもない。もうちょっと、もうちょっと待ってください。
「虎豪さんは甘えるの下手じゃないですか。だから、虎豪さんが甘えるまでこうしてるんです」
それっぽいことを言ってごまかす作戦を実行。だけど、一聴する価値はあったらしい。
「そうか……そうだな、確かに疲れてるのかもな」
その声には、確かな実感がこもっていた。
兄として弟の残した喫茶店を継ぎ、慣れない作業に振り回され続けてきた。それに加え、おれとのいざこざがあって、だいぶ神経をすり減らしていたに違いない。
猫柳が持ってきた写真で、死んだような目をした虎豪さんは結構ぎりぎりのところだったのだろう。もしあのまま事が進んでいたら、おれはこうして虎豪さんに抱き着けなかったし、虎豪さんもホッとしたような表情を浮かべなかった。それだけは確信できる。
「ありがとな」
そして、虎豪さんはおれを抱き返してくれた。
「え、え?」
これにはおれの方がびっくりだ。虎豪さんの大きな体はおれの事をすっぽりと収めるくらいで、果てしない安心感がそこにはあった。
少し落ち着いたと思ったら、また心臓が暴れだす。今離されたら、その場にへたり込んでしまいそうだ。
「少しばかりこうさせてくれ……人に抱き着くなんて久しぶりだ」
そこには哀愁がにじみ出ていて、虎豪さんが癒やしに飢えていたことを物語っている。一人でお店を守ろうと奮闘していたせいで、人肌からだいぶ遠ざかっていたのかもしれない。
虎豪さんは強い大人だけど、だからと言ってずっと戦い続けられるわけじゃない。たまにはこうして甘えることも必要だ。でも、虎豪さんは不器用だからなあ。
「ずっとこうしていてもいいんですよ?」
「嫌だね暑苦しい」
それに素直じゃない。まだ腕を回したまま言うセリフじゃないと思います。
のしかかる巨漢の体重はそのまま虎豪さんの重み。それを支えることができる大人に少しは近づいたのだろうか。もしそうなら、とてもうれしい。
いまだほどかれない腕は虎豪さんの疲れを表しているようで、ずっと一人で立ってきた反動が来ているのかもしれない。おれは思い人の腕の中、その温かさに浸っている。
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