僕は隣国王子に恋をする

泡沫の泡

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第5章 僕は求婚されるなんて考えてもいなかった

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雪姉さまから手紙を受け取った。
ルークとノアさんからだった。二人は元気にしているだろうか。

ノアはどうやらテディと上手くいっている様子だった。
ふたりは、一から関係をやり直すつもりらしく、まだ手をつなぐところから先はできていないとのこと。
ノアさんのプラトニックな恋愛は想像がつかない。
でも、テディをとても大切にしているようで微笑ましかった。
誰かが撮ったのであろう、テーマパークで楽しそうに笑い合う写真が、手紙には挟まっていた。

つづいて、ルークからの手紙を開封してみる。
手紙には、近況報告や体調を崩してないかといった心配のほか、いかに僕を大切に思っているか、好いているかがたくさん綴ってあった。
友達に送る文にしては、かなり熱烈だ。
可笑しくなって、うふふと吹き出した。
封筒には、まだなにか挟まっている。
取り出してみると、たんぽぽの小さな花が顔を出した。
嬉しくなって、それを手に持って眺める。
彼の香りがした気がした。







ここはどこだろうか。
だいぶ奥まで入ってきてしまった。
誰かに道を尋ねようにも、人があまり通らない道のようで、辺りは静まり返っている。
旅行で日輪の国に来たものの、ついに道に迷ってしまった。

四方を見渡すが各家の出入り口がそもそも見当たらない。

「……うふふ」

ふと、小さく笑う可愛らしい声が聞こえた。
そちらにあるのは蔦で覆われた塀だ。
中に誰かいるのだろうか。
掻き分けて覗き込むと、開け広げになった障子の向こうで、銀髪の青年が何かを読んで笑っているのが見えた。

「……なぁ、君!」

少し声を張った。
なんとか声は届いたようで、青年がこっちによってくる。
しろい、しろい少年のような見目であった。

「……どうかしましたか」

純真無垢な笑顔。
綺麗な姿。
優しげな鈴を転がしたような声。
近くで見て、より一層興味が湧いた。
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