彼氏が完璧すぎるから別れたい

しおだだ

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その週末、月奈が気になっていたビアガーデン風の店の一画を貸し切り、互いの友人を交えて集まることになった。

皓の友人たちはさすがいい男揃いだ。

あわよくば皓の目移りを願って、月奈も友人たちにおめかしをお願いしておいたので華やかな集団となっている。まるでお見合いパーティーね、と満足げな月奈の傍らで、やっと恋人をお披露目できると皓も喜んでいた。


「さすが皓の彼女。とてもおきれいな方ですね」

「本当、美男美女って感じ!!」


ほめそやされて満更でもない。
互いの友人たちを紹介し合い、そこここで会話が盛り上がる中、誰かが言った。


「それで?二人はいつ結婚するの?」

「え?」


月奈が頓狂な声を上げれば「あ、婚約が先?」と首を傾げられる。


「え、ちょっと、あの……」

「ちょっと、オレにはオレのやり方があるんだから邪魔しないでよ。まだいろいろこれからなんだって」


戸惑う月奈に皓が割って入って、周囲は「おお!」とにやにやしはじめる。そこには月奈の同僚兼友人もいたが、彼女は「そりゃそうよね」と肩を竦めた。


「まだこれから、まだ……ま、まだ早いってことよね!」


皓が否定しなかったことに囃し声が上がる中――月奈は必死に自分を誤魔化していた。



***
「めずらしい。ちょっと飲みすぎちゃった?」


けれどどんなに誤魔化しても誤魔化しきれず、月奈は酒のペースを乱してしまった。
月奈がしたたかに酔っぱらってしまったので場はお開きとなり、友人たちは各々気の合った相手と二件目に向かった。図らずも月奈のお見合いパーティーは成功していた。

タクシーに乗せられ、皓の部屋に連れ帰られた月奈は、よそいきのワンピースのままどさりとソファーに倒れ込むように座る。


「待ってて。お水持ってくるね」

「皓、待って」


酔いと恥ずかしさで目を潤ませ頬を染め、月奈は「あのあの」と言い淀む。その間に皓はさっとウォーターサーバーから水を注ぎ、月奈の手に握らせてくる。


「ん?」


やさしく促されて、冷たい水をこくりと一口飲むと月奈は口を開いた。


「さっきのことだけど…。こ、婚約とか、結婚、とか」


そのキーワードに「あー」と皓も照れたように笑う。


「順序だてて進めようと思ってたんだよ。だからまずはいっしょに住むところからはじめようと思ったんだけど、月奈ちゃんには断られちゃったね」

「う、う、うん…。そうだね」


断っちゃった、と月奈が呟いていると「ねえ」と皓がソファーの上で身を寄せてくる。


「聞いてもいい?どうしてオレ、同棲断られたの?月奈ちゃんはいつも『まだ早い』って言うけど、それ以外にも理由あるよね?」

「そ、れは……」


きれいな顔を寄せられて月奈はきゅっと手を握る。


「だって、皓のこと、好きじゃないんだもん」

「は?」


イケメンが大きく目を見開いて固まる。
だってだって、と月奈はもじもじした。


「皓はかっこいいし、やさしいし、いっしょにいて楽しいから好きだけど、でも完璧なんだもん」

「んん?」


月奈の言い分に皓は怪訝に首を傾げる。


「皓、王子様って呼ばれてるの知ってる?」

「…まあ、うん」

「王子様って呼ばれるくらいイケメンでやさしくて紳士なんだよ?どんなこじらせた性癖してるかと思えば、結構ふつうだし」

「えっと?」

「しかもさ、おっきな会社に勤めてて、高収入で高学歴、ご実家も立派じゃん?そんなのどっか嘘ついてるか、裏があると思うじゃん」

「嘘もついてないし、裏もないけど」

「そうなんだよ!嘘も裏もケチもついてないんだよ!そんなの本物じゃん!だめじゃん!」

「よくわかんないけど、それじゃだめなの?」

「だめだよお。そうしたら、皓、完璧じゃん……」

「んー?さっきからそう言ってるけど、完璧って悪いこと?」

「悪いことだよおお!」
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