彼氏が完璧すぎるから別れたい

しおだだ

文字の大きさ
5 / 10

5

しおりを挟む
その週末、月奈が気になっていたビアガーデン風の店の一画を貸し切り、互いの友人を交えて集まることになった。

皓の友人たちはさすがいい男揃いだ。

あわよくば皓の目移りを願って、月奈も友人たちにおめかしをお願いしておいたので華やかな集団となっている。まるでお見合いパーティーね、と満足げな月奈の傍らで、やっと恋人をお披露目できると皓も喜んでいた。


「さすが皓の彼女。とてもおきれいな方ですね」

「本当、美男美女って感じ!!」


ほめそやされて満更でもない。
互いの友人たちを紹介し合い、そこここで会話が盛り上がる中、誰かが言った。


「それで?二人はいつ結婚するの?」

「え?」


月奈が頓狂な声を上げれば「あ、婚約が先?」と首を傾げられる。


「え、ちょっと、あの……」

「ちょっと、オレにはオレのやり方があるんだから邪魔しないでよ。まだいろいろこれからなんだって」


戸惑う月奈に皓が割って入って、周囲は「おお!」とにやにやしはじめる。そこには月奈の同僚兼友人もいたが、彼女は「そりゃそうよね」と肩を竦めた。


「まだこれから、まだ……ま、まだ早いってことよね!」


皓が否定しなかったことに囃し声が上がる中――月奈は必死に自分を誤魔化していた。



***
「めずらしい。ちょっと飲みすぎちゃった?」


けれどどんなに誤魔化しても誤魔化しきれず、月奈は酒のペースを乱してしまった。
月奈がしたたかに酔っぱらってしまったので場はお開きとなり、友人たちは各々気の合った相手と二件目に向かった。図らずも月奈のお見合いパーティーは成功していた。

タクシーに乗せられ、皓の部屋に連れ帰られた月奈は、よそいきのワンピースのままどさりとソファーに倒れ込むように座る。


「待ってて。お水持ってくるね」

「皓、待って」


酔いと恥ずかしさで目を潤ませ頬を染め、月奈は「あのあの」と言い淀む。その間に皓はさっとウォーターサーバーから水を注ぎ、月奈の手に握らせてくる。


「ん?」


やさしく促されて、冷たい水をこくりと一口飲むと月奈は口を開いた。


「さっきのことだけど…。こ、婚約とか、結婚、とか」


そのキーワードに「あー」と皓も照れたように笑う。


「順序だてて進めようと思ってたんだよ。だからまずはいっしょに住むところからはじめようと思ったんだけど、月奈ちゃんには断られちゃったね」

「う、う、うん…。そうだね」


断っちゃった、と月奈が呟いていると「ねえ」と皓がソファーの上で身を寄せてくる。


「聞いてもいい?どうしてオレ、同棲断られたの?月奈ちゃんはいつも『まだ早い』って言うけど、それ以外にも理由あるよね?」

「そ、れは……」


きれいな顔を寄せられて月奈はきゅっと手を握る。


「だって、皓のこと、好きじゃないんだもん」

「は?」


イケメンが大きく目を見開いて固まる。
だってだって、と月奈はもじもじした。


「皓はかっこいいし、やさしいし、いっしょにいて楽しいから好きだけど、でも完璧なんだもん」

「んん?」


月奈の言い分に皓は怪訝に首を傾げる。


「皓、王子様って呼ばれてるの知ってる?」

「…まあ、うん」

「王子様って呼ばれるくらいイケメンでやさしくて紳士なんだよ?どんなこじらせた性癖してるかと思えば、結構ふつうだし」

「えっと?」

「しかもさ、おっきな会社に勤めてて、高収入で高学歴、ご実家も立派じゃん?そんなのどっか嘘ついてるか、裏があると思うじゃん」

「嘘もついてないし、裏もないけど」

「そうなんだよ!嘘も裏もケチもついてないんだよ!そんなの本物じゃん!だめじゃん!」

「よくわかんないけど、それじゃだめなの?」

「だめだよお。そうしたら、皓、完璧じゃん……」

「んー?さっきからそう言ってるけど、完璧って悪いこと?」

「悪いことだよおお!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Melty romance 〜甘S彼氏の執着愛〜

yuzu
恋愛
 人数合わせで強引に参加させられた合コンに現れたのは、高校生の頃に少しだけ付き合って別れた元カレの佐野充希。適当にその場をやり過ごして帰るつもりだった堀沢真乃は充希に捕まりキスされて…… 「オレを好きになるまで離してやんない。」

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

ヤクザは喋れない彼女に愛される

九竜ツバサ
恋愛
ヤクザが喋れない女と出会い、胃袋を掴まれ、恋に落ちる。

龍の腕に咲く華

沙夜
恋愛
どうして私ばかり、いつも変な人に絡まれるんだろう。 そんな毎日から抜け出したくて貼った、たった一枚のタトゥーシール。それが、本物の獣を呼び寄せてしまった。 彼の名前は、檜山湊。極道の若頭。 恐怖から始まったのは、200万円の借金のカタとして課せられた「添い寝」という奇妙な契約。 支配的なのに、時折見せる不器用な優しさ。恐怖と安らぎの間で揺れ動く心。これはただの気まぐれか、それとも――。 一度は逃げ出したはずの豪華な鳥籠へ、なぜ私は再び戻ろうとするのか。 偽りの強さを捨てた少女が、自らの意志で愛に生きる覚悟を決めるまでの、危険で甘いラブストーリー。

胃袋掴んだら御曹司にプロポーズされちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
胃袋掴んだら御曹司にプロポーズされちゃいました

罰ゲームで告白されたはずなのに、再会した元カレがヤンデレ化していたのですが

星咲ユキノ
恋愛
三原菜々香(25)は、初恋相手に罰ゲームで告白されたトラウマのせいで、恋愛に消極的になっていた。ある日、職場の先輩に連れていかれた合コンで、その初恋相手の吉川遥希(25)と再会するが、何故かヤンデレ化していて…。 1話完結です。 遥希視点、追記しました。(2025.1.20) ムーンライトノベルズにも掲載しています。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

処理中です...