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楽しい時間
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ジルドナの協力もあり、それからのシオンの生活は、目に見えて良くなっていった。あんなにシオンを目の敵にしていた母親ですらも、フローレンスの 「恋劇場」 を日々、目の当たりにすると、娘に婿を取らせて跡継ぎになどとは、さすがにもう言えないようだった。それほどフローレンスは、「ジルドナに恋する乙女」を演じきっていたし、実際、ジルドナが来た時は傍にピッタリ張り付いて一時も離れようとしなかった。
「お母様、私はお母様が心配です。私はジルドナ様に嫁ぎますが、お母様はどうなるのですか?このままいけばシオンは侯爵家の当主になるでしょう?お義父様に何かあったらどうするのです?もう、シオンと仲良くしましょう?今からでも遅くはありません。今後、シオンに面倒を見てもらうという意味でも、もっと関係を良くしましょうよ。私はジルドナ様のためにもシオンと仲良くやっていこうと思っていますよ?だって、シオンは、フーバート侯爵家の当主になるんですもの。」
母親を心配する振りをして、二人で話す機会を見つける度にフローレンスは説得を試みた。
自分勝手で冷酷な母親のことなど、正直どうでもいいのが本音だが、フローレンスは、来年に迫っている学園生活を心配していたのだった。
学園に入ってしまうとフローレンスは寮生活になってしまう。そうなると一つ年下のシオンが入学するまで、この邸に一人残される形になる。フローレンスの目の届かない所で、今までのようにシオンに危害が及ぶのではないかと恐れていたのだ。シオンは相変わらず、継母と義姉に虐げられる役をやっているが、フローレンスの説得により母親の考え方も最近やっと変わってきたようで、シオンが静かにさえしていれば今までのような理不尽な怒りをぶつけてくることもなくなってきた。
一方、ジルドナの役どころは、興味のない婚約者の愛情を本当は迷惑に感じているが、家の為に渋々付き合っている。という感じだろうか・・・。纏わりつくフローレンスに対し、冷たくあしらったり、ほとんどしゃべらず無表情でいることが多い。常に迷惑そうに振舞っているのだが、親や使用人が居なくなると、すっと表情を柔らかくし、フローレンスやシオンと親し気に笑い合う仲になっていた。
フローレンスとシオンは定期的にスコット伯爵邸へ向かい、ジルドナと弟のルーベルトと一緒に四人でよく勉強をしていた。フローレンスに比べると二つ下にも関わらずルーベルトは優秀だった。だが、ジルドナとシオンは更にその上をいっていた為、フローレンスは二人の難しい会話に全く着いていくことが出来なかった。
二人が難しい話で盛り上がっているときは、フローレンスとルーベルトはこっそり二人で勉強をサボってお菓子を食べたり、楽しく会話して小声で笑い合ったりしていた。婚約者探しのお茶会で悪印象を与えていたフローレンスだったが、元々面倒見の良い裏表のない性格の上、ずっとシオンの相手をしていたせいもあり、少し頼りない印象を持つルーベルトとも上手く話を合わせることができた。今では、本当の姉弟のように仲良く会話するほどになっていた。
「それでね、兄さんが何もないまっ平なところでいきなり転んだんだ。そしたら、それを見ていた庭師のおじいさんが、いきなり立ち上がって、凄い急ぎ足で木の影に隠れたんだよ。」
「ふふっ、それで? なんで隠れたの?」
「うん、だから僕ね、どうしたのかなって、こっそり見に行ったんだ。そしたらね、庭師のおじいさん、お腹を抱えて涙を流しながら笑ってたんだよ。」
「あははっ、やだ、だから隠れたの!? ふふふふ。私も見たかったわ! くくくっ」
「兄さんってば、凄い澄ました顔して歩いてたからね。 こんな風に格好つけてさっ。」
「やっ、ちょっと、ルー!やめて!! あはは・・・・無理無理、笑っちゃうから、あははは―――」
「おいっ!!! その話はそんなに楽しいのか!?」
「ひっ・・・・・・・ジル・・・・。」
「に、兄さん・・・・・・・・・・。」
目の前には、青筋を立てた怒りの炎のようなジルドナと、氷のような冷気を放つシオンが勉強をサボって馬鹿笑いしている二人を睨みつけていた。
「ルー!! 二人が怖い!!助けて!!」
「いや、無理無理!フローレンスがなんとかしてよ!」
フローレンスは、ルーベルトの後ろに隠れようとするが、ルーベルトはそれを拒む。二人でモタモタ揉み合っていると、シオンの冷たい声が響く。
「・・・・・・・・姉さん。」
「はいっ、・・・・すみません・・・・。ちゃんと勉強します・・・・。」
次に、ジルドナの怒声。
「ルーベルト!!」
「はいっ!! うん、さあ、僕も勉強しよっかな!!」
楽しい日々はこうして、あっという間に過ぎて行くのだった。
「お母様、私はお母様が心配です。私はジルドナ様に嫁ぎますが、お母様はどうなるのですか?このままいけばシオンは侯爵家の当主になるでしょう?お義父様に何かあったらどうするのです?もう、シオンと仲良くしましょう?今からでも遅くはありません。今後、シオンに面倒を見てもらうという意味でも、もっと関係を良くしましょうよ。私はジルドナ様のためにもシオンと仲良くやっていこうと思っていますよ?だって、シオンは、フーバート侯爵家の当主になるんですもの。」
母親を心配する振りをして、二人で話す機会を見つける度にフローレンスは説得を試みた。
自分勝手で冷酷な母親のことなど、正直どうでもいいのが本音だが、フローレンスは、来年に迫っている学園生活を心配していたのだった。
学園に入ってしまうとフローレンスは寮生活になってしまう。そうなると一つ年下のシオンが入学するまで、この邸に一人残される形になる。フローレンスの目の届かない所で、今までのようにシオンに危害が及ぶのではないかと恐れていたのだ。シオンは相変わらず、継母と義姉に虐げられる役をやっているが、フローレンスの説得により母親の考え方も最近やっと変わってきたようで、シオンが静かにさえしていれば今までのような理不尽な怒りをぶつけてくることもなくなってきた。
一方、ジルドナの役どころは、興味のない婚約者の愛情を本当は迷惑に感じているが、家の為に渋々付き合っている。という感じだろうか・・・。纏わりつくフローレンスに対し、冷たくあしらったり、ほとんどしゃべらず無表情でいることが多い。常に迷惑そうに振舞っているのだが、親や使用人が居なくなると、すっと表情を柔らかくし、フローレンスやシオンと親し気に笑い合う仲になっていた。
フローレンスとシオンは定期的にスコット伯爵邸へ向かい、ジルドナと弟のルーベルトと一緒に四人でよく勉強をしていた。フローレンスに比べると二つ下にも関わらずルーベルトは優秀だった。だが、ジルドナとシオンは更にその上をいっていた為、フローレンスは二人の難しい会話に全く着いていくことが出来なかった。
二人が難しい話で盛り上がっているときは、フローレンスとルーベルトはこっそり二人で勉強をサボってお菓子を食べたり、楽しく会話して小声で笑い合ったりしていた。婚約者探しのお茶会で悪印象を与えていたフローレンスだったが、元々面倒見の良い裏表のない性格の上、ずっとシオンの相手をしていたせいもあり、少し頼りない印象を持つルーベルトとも上手く話を合わせることができた。今では、本当の姉弟のように仲良く会話するほどになっていた。
「それでね、兄さんが何もないまっ平なところでいきなり転んだんだ。そしたら、それを見ていた庭師のおじいさんが、いきなり立ち上がって、凄い急ぎ足で木の影に隠れたんだよ。」
「ふふっ、それで? なんで隠れたの?」
「うん、だから僕ね、どうしたのかなって、こっそり見に行ったんだ。そしたらね、庭師のおじいさん、お腹を抱えて涙を流しながら笑ってたんだよ。」
「あははっ、やだ、だから隠れたの!? ふふふふ。私も見たかったわ! くくくっ」
「兄さんってば、凄い澄ました顔して歩いてたからね。 こんな風に格好つけてさっ。」
「やっ、ちょっと、ルー!やめて!! あはは・・・・無理無理、笑っちゃうから、あははは―――」
「おいっ!!! その話はそんなに楽しいのか!?」
「ひっ・・・・・・・ジル・・・・。」
「に、兄さん・・・・・・・・・・。」
目の前には、青筋を立てた怒りの炎のようなジルドナと、氷のような冷気を放つシオンが勉強をサボって馬鹿笑いしている二人を睨みつけていた。
「ルー!! 二人が怖い!!助けて!!」
「いや、無理無理!フローレンスがなんとかしてよ!」
フローレンスは、ルーベルトの後ろに隠れようとするが、ルーベルトはそれを拒む。二人でモタモタ揉み合っていると、シオンの冷たい声が響く。
「・・・・・・・・姉さん。」
「はいっ、・・・・すみません・・・・。ちゃんと勉強します・・・・。」
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