39 / 55
劣等感
しおりを挟む
レイサスは、物心がついた時から常に優秀な兄と比べられてきた。見目も良く、社交的で人当たりの良い兄は、人の心を掴むのも上手だった。大きくなるにつれ両親はもちろん、たくさんの令嬢達が兄に夢中になるのを見てきた。どの令嬢も、兄の前では美しく着飾り、可愛らしく頬を染めていたが、それが弟のレイサスに向けられることはなかった。決して家族からの愛情がなかった訳ではない。しかし、兄に対し見えない劣等感は常に抱いていたのだ。そんなレイサスだったが、高い運動能力と剣術の才脳だけは幼い頃より兄を上回っていた。それは、レイサスにとって唯一誇れるものだったし、いつか騎士になりたいという将来の夢の為に、毎日剣の修行に励んでいた。
そんな中、一人の少女がレイサスの前に現れた。レイサスに話しかけ、ニコニコと微笑み、レイサスの剣の腕前を褒めてくれたのだ。自分に優しく接してくれる少女に、まだ子供だったレイサスは直ぐに心を奪われた。ワクワクしながら彼女が再び訪れるのを待つ日々は、レイサスにとって心がくすぐられる思いだった。兄ではなく自分を選んでくれたことが、とても嬉しかったのだ。しかし、無情にも少女の本心を知ってしまうまでに、それほど時間はかからなかった。結局少女の目当ても兄だったのだ。質の悪いことに、弟のレイサスを利用して兄に近づこうとする、一番最悪な女の子だった。
事実を知ったレイサスは、酷く落ち込み、自信を失った。元々少なかった口数が更に減り人と話をしなくなると、次第に他人に対しての興味も失っていった。家族以外誰も愛せないし、誰も信じることができなかった。誰の前でも、常に仮面のような無表情のレイサスを心配して、両親が数人の令嬢との縁談話を持ってきたのだが、怖そうな外見と何も話さないレイサス相手に、どの令嬢も尻込みしてしまい、まともな会話にすらならなかった。
常に一人だったレイサスは、剣を振る以外の時間は、よく本を読んで時間をつぶしていた。他にすることもなかったから最初は渋々読んでいた記憶があるが、毎日なんとなくページを開くようになると、次第に本の世界に引き込まれていくようになった。そんなレイサスも学園に入る頃にはすっかり本を読むことが日課になっていた。
学園の図書室。この静かな空間が好きだった。誰も気付かないような場所に、ひっそりと置かれた机。そこに窮屈そうに並べられた三脚の椅子。窓から外の景色が見えるこの場所がレイサスのお気に入りだった。時間を見つけてはここに通って本を読んだ。昼食もここへ来て一人で食べていた。放課後の騎士科の鍛練後も、真っ直ぐ部屋には戻らないで、この場所で夕日に照らされながら本を読んで帰るようになった。レイサスにとって、この場所は、やかましい学園生活の中で、唯一心の休まる居心地の良い場所になっていた。
そんな大切なこの場所に、ある日フローレンスはいきなり現れたのだ。
そんな中、一人の少女がレイサスの前に現れた。レイサスに話しかけ、ニコニコと微笑み、レイサスの剣の腕前を褒めてくれたのだ。自分に優しく接してくれる少女に、まだ子供だったレイサスは直ぐに心を奪われた。ワクワクしながら彼女が再び訪れるのを待つ日々は、レイサスにとって心がくすぐられる思いだった。兄ではなく自分を選んでくれたことが、とても嬉しかったのだ。しかし、無情にも少女の本心を知ってしまうまでに、それほど時間はかからなかった。結局少女の目当ても兄だったのだ。質の悪いことに、弟のレイサスを利用して兄に近づこうとする、一番最悪な女の子だった。
事実を知ったレイサスは、酷く落ち込み、自信を失った。元々少なかった口数が更に減り人と話をしなくなると、次第に他人に対しての興味も失っていった。家族以外誰も愛せないし、誰も信じることができなかった。誰の前でも、常に仮面のような無表情のレイサスを心配して、両親が数人の令嬢との縁談話を持ってきたのだが、怖そうな外見と何も話さないレイサス相手に、どの令嬢も尻込みしてしまい、まともな会話にすらならなかった。
常に一人だったレイサスは、剣を振る以外の時間は、よく本を読んで時間をつぶしていた。他にすることもなかったから最初は渋々読んでいた記憶があるが、毎日なんとなくページを開くようになると、次第に本の世界に引き込まれていくようになった。そんなレイサスも学園に入る頃にはすっかり本を読むことが日課になっていた。
学園の図書室。この静かな空間が好きだった。誰も気付かないような場所に、ひっそりと置かれた机。そこに窮屈そうに並べられた三脚の椅子。窓から外の景色が見えるこの場所がレイサスのお気に入りだった。時間を見つけてはここに通って本を読んだ。昼食もここへ来て一人で食べていた。放課後の騎士科の鍛練後も、真っ直ぐ部屋には戻らないで、この場所で夕日に照らされながら本を読んで帰るようになった。レイサスにとって、この場所は、やかましい学園生活の中で、唯一心の休まる居心地の良い場所になっていた。
そんな大切なこの場所に、ある日フローレンスはいきなり現れたのだ。
1
あなたにおすすめの小説
チョイス伯爵家のお嬢さま
cyaru
恋愛
チョイス伯爵家のご令嬢には迂闊に人に言えない加護があります。
ポンタ王国はその昔、精霊に愛されし加護の国と呼ばれておりましたがそれももう昔の話。
今では普通の王国ですが、伯爵家に生まれたご令嬢は数百年ぶりに加護持ちでした。
産まれた時は誰にも気が付かなかった【営んだ相手がタグとなって確認できる】トンデモナイ加護でした。
4歳で決まった侯爵令息との婚約は苦痛ばかり。
そんな時、令嬢の言葉が引き金になって令嬢の両親である伯爵夫妻は離婚。
婚約も解消となってしまいます。
元伯爵夫人は娘を連れて実家のある領地に引きこもりました。
5年後、王太子殿下の側近となった元婚約者の侯爵令息は視察に来た伯爵領でご令嬢とと再会します。
さて・・・どうなる?
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
【完結】小公爵様の裏の顔をわたしだけが知っている
おのまとぺ
恋愛
公爵令息ルシアン・ド・ラ・パウルはいつだって王国の令嬢たちの噂の的。見目麗しさもさることながら、その立ち居振る舞いの上品さ、物腰の穏やかさに女たちは熱い眼差しを向ける。
しかし、彼の裏の顔を知る者は居ない。
男爵家の次女マリベルを除いて。
◇素直になれない男女のすったもんだ
◇腐った令嬢が登場したりします
◇50話完結予定
2025.2.14
タイトルを変更しました。(完結済みなのにすみません、ずっとモヤモヤしていたので……!)
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
蝋燭
悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。
それは、祝福の鐘だ。
今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。
カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。
彼女は勇者の恋人だった。
あの日、勇者が記憶を失うまでは……
妹の身代わりに殺戮の王太子に嫁がされた忌み子王女、実は妖精の愛し子でした。嫁ぎ先でじゃがいもを育てていたら、殿下の溺愛が始まりました・長編版
まほりろ
恋愛
国王の愛人の娘であるアリアベルタは、母親の死後、王宮内で放置されていた。
食事は一日に一回、カビたパンやまふ腐った果物、生のじゃがいもなどが届くだけだった。
しかしアリアベルタはそれでもなんとか暮らしていた。
アリアベルタの母親は妖精の村の出身で、彼女には妖精がついていたのだ。
その妖精はアリアベルタに引き継がれ、彼女に加護の力を与えてくれていた。
ある日、数年ぶりに国王に呼び出されたアリアベルタは、異母妹の代わりに殺戮の王子と二つ名のある隣国の王太子に嫁ぐことになり……。
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。
※中編を大幅に改稿し、長編化しました。2025年1月20日
※長編版と差し替えました。2025年7月2日
※コミカライズ化が決定しました。商業化した際はアルファポリス版は非公開に致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる