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幸せに感謝して
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「俺は、どうしてもお前が欲しい。 だから早く婚約したい。」
レイサスがようやく腕の力を抜き、唇を離した頃には、真っ赤な顔を両手で隠したフローレンスにまともな返事をする余裕などなかった。
フローレンスは、荒くなった呼吸と激しすぎる心拍数を落ち着かせると、レイサスに自分達姉弟が置かれていた環境。その為にジルドナに協力をお願いしたこと。シオンを間違いなく侯爵家の当主にしたい旨を簡単に説明した。
「しばらく時間がほしいと両親にもお願いしてきたの・・・。それに、もしレイとの婚約が決まったりしたら・・・もしかしたら、またうちの母が暴走して、シオンを差し置いて私に侯爵家を継がせるとか言い出す可能性があって・・・。」
「・・・お前、フーバート侯爵と血縁関係にないんだろう?なら、何故そんな話になるんだ。血の繋がった息子がいるんだから普通はそうならないだろう・・・。どうなってるんだ?」
「あー・・・ねぇー・・・。本当にねぇー・・・。」
本当は、義父が後妻である自分の母親の言いなりだなんて、あまりにも言いにくい。どう説明したものかと頭を悩ませたが、結局、レイサスは意味がわからないと再三文句を言った後、「仕方がないから待つ。」と、ふて腐れながらも受け入れてくれたのだった。
「レイ、ごめんね・・・。話を聞いてくれてありがとう。」
立ち上がったフローレンスが、レイサスの赤い髪に指を滑り込ませて優しく頭を撫でると、レイサスは眩しそうに目を細めてフローレンスの腰に手を回した。
「フローレンスの好きな人は俺?」
レイサスが少し甘えたようにフローレンスを見上げて囁くと、フローレンスは、にっこり微笑んだ。
「うん。」
「どれくらい好き?」
「うーん・・・。たくさん?」
「元婚約者より好き?」
「うん。」
「・・・じゃあ、弟は?」
突然出て来たシオンの話に、何の関係があるのか首を傾げそうになるフローレンスだったが、チラッと見たレイサスの顔は怖い程真剣だったので、素直な気持ちを言うことにした。
「シオン? シオンは好きよ?大切な弟だわ。」
「・・・それは駄目だ!」
「は!? いえいえ、駄目とか言われても・・・。弟だし。」
「駄目だ!!」
「レイ・・・だから、弟―――」
「駄目だっ!!」
せっかくの甘い空気が、レイサスの怒鳴り声で木端微塵に砕け散ってしまい、しばしの沈黙の後、静かな図書室には、どちらの者ともつかない溜息が一つ聞こえてくるのだった。
それからのフローレンスは、毎日が楽しく過ぎていった。ルーナとキャシーとの友情も日々深まっていき、三人で寮の部屋に集まり遅くまでおしゃべりを楽しんだり、休日には一緒に街に出かけたり、ピクニックに行ったりもした。レイサスと放課後の図書室関係も、相変わらず続いていた。無表情で一言も話さない過去のレイサスとはまるで別人かと思うほど、今のレイサスはよくしゃべり、よく怒り、そしてよく笑っていた。
「だから、ただのクラスメイトよ。」
「じゃあ、なんであんなに楽しそうに笑ってたんだ!」
「だって、彼の後ろからこっそり忍び寄って来たキャシーが、いきなりわっと驚かしたら、まるで女の子みたいにきゃあー!って叫んで尻もちついたのよ!? 笑うわよ!!」
「ぶっ・・・・。」
「ほら! レイだって!」
「ふっ・・・そうか。楽しそうだな。」
「ええ。楽しいわ!誰かに話しかけて貰えるって、幸せなことね!今まで一人の時間ばかりだったから、今は毎日とっても嬉しいわ。こうしてレイも毎日会ってくれるし。これでも私、いっぱい感謝してるのよ?」
フローレンスに素直に感謝を述べられて、レイサスも悪い気はしなかった。
「ははっ、そうか。」
「レイは?」
「ん?」
「毎日楽しい?」
「・・・ああ。楽しい。」
「レイも感謝してる?」
「ああ。」
レイサスは満足そうに少し口角を上げているが、そんなことなど、どうでもいいかのように本を取るとページをめくり始めた。
「誰に?」
「・・・・・・・。」
「だ・れ・に!?」
「・・・教えない。」
「・・・チッ!」
「舌打ち禁止だ!」
すると、ふて腐れたフローレンスは、口を尖らせて隣のレイサスの腕を押した。
「なんだ。」
「近い。離れて。あっち行って。」
「やだ。」
「・・・チッ!」
「舌打ち!!」
人気のない静かな図書室に、レイサスとフローレンスの笑い声が響いていた。
レイサスがようやく腕の力を抜き、唇を離した頃には、真っ赤な顔を両手で隠したフローレンスにまともな返事をする余裕などなかった。
フローレンスは、荒くなった呼吸と激しすぎる心拍数を落ち着かせると、レイサスに自分達姉弟が置かれていた環境。その為にジルドナに協力をお願いしたこと。シオンを間違いなく侯爵家の当主にしたい旨を簡単に説明した。
「しばらく時間がほしいと両親にもお願いしてきたの・・・。それに、もしレイとの婚約が決まったりしたら・・・もしかしたら、またうちの母が暴走して、シオンを差し置いて私に侯爵家を継がせるとか言い出す可能性があって・・・。」
「・・・お前、フーバート侯爵と血縁関係にないんだろう?なら、何故そんな話になるんだ。血の繋がった息子がいるんだから普通はそうならないだろう・・・。どうなってるんだ?」
「あー・・・ねぇー・・・。本当にねぇー・・・。」
本当は、義父が後妻である自分の母親の言いなりだなんて、あまりにも言いにくい。どう説明したものかと頭を悩ませたが、結局、レイサスは意味がわからないと再三文句を言った後、「仕方がないから待つ。」と、ふて腐れながらも受け入れてくれたのだった。
「レイ、ごめんね・・・。話を聞いてくれてありがとう。」
立ち上がったフローレンスが、レイサスの赤い髪に指を滑り込ませて優しく頭を撫でると、レイサスは眩しそうに目を細めてフローレンスの腰に手を回した。
「フローレンスの好きな人は俺?」
レイサスが少し甘えたようにフローレンスを見上げて囁くと、フローレンスは、にっこり微笑んだ。
「うん。」
「どれくらい好き?」
「うーん・・・。たくさん?」
「元婚約者より好き?」
「うん。」
「・・・じゃあ、弟は?」
突然出て来たシオンの話に、何の関係があるのか首を傾げそうになるフローレンスだったが、チラッと見たレイサスの顔は怖い程真剣だったので、素直な気持ちを言うことにした。
「シオン? シオンは好きよ?大切な弟だわ。」
「・・・それは駄目だ!」
「は!? いえいえ、駄目とか言われても・・・。弟だし。」
「駄目だ!!」
「レイ・・・だから、弟―――」
「駄目だっ!!」
せっかくの甘い空気が、レイサスの怒鳴り声で木端微塵に砕け散ってしまい、しばしの沈黙の後、静かな図書室には、どちらの者ともつかない溜息が一つ聞こえてくるのだった。
それからのフローレンスは、毎日が楽しく過ぎていった。ルーナとキャシーとの友情も日々深まっていき、三人で寮の部屋に集まり遅くまでおしゃべりを楽しんだり、休日には一緒に街に出かけたり、ピクニックに行ったりもした。レイサスと放課後の図書室関係も、相変わらず続いていた。無表情で一言も話さない過去のレイサスとはまるで別人かと思うほど、今のレイサスはよくしゃべり、よく怒り、そしてよく笑っていた。
「だから、ただのクラスメイトよ。」
「じゃあ、なんであんなに楽しそうに笑ってたんだ!」
「だって、彼の後ろからこっそり忍び寄って来たキャシーが、いきなりわっと驚かしたら、まるで女の子みたいにきゃあー!って叫んで尻もちついたのよ!? 笑うわよ!!」
「ぶっ・・・・。」
「ほら! レイだって!」
「ふっ・・・そうか。楽しそうだな。」
「ええ。楽しいわ!誰かに話しかけて貰えるって、幸せなことね!今まで一人の時間ばかりだったから、今は毎日とっても嬉しいわ。こうしてレイも毎日会ってくれるし。これでも私、いっぱい感謝してるのよ?」
フローレンスに素直に感謝を述べられて、レイサスも悪い気はしなかった。
「ははっ、そうか。」
「レイは?」
「ん?」
「毎日楽しい?」
「・・・ああ。楽しい。」
「レイも感謝してる?」
「ああ。」
レイサスは満足そうに少し口角を上げているが、そんなことなど、どうでもいいかのように本を取るとページをめくり始めた。
「誰に?」
「・・・・・・・。」
「だ・れ・に!?」
「・・・教えない。」
「・・・チッ!」
「舌打ち禁止だ!」
すると、ふて腐れたフローレンスは、口を尖らせて隣のレイサスの腕を押した。
「なんだ。」
「近い。離れて。あっち行って。」
「やだ。」
「・・・チッ!」
「舌打ち!!」
人気のない静かな図書室に、レイサスとフローレンスの笑い声が響いていた。
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