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二章 古の化身
接吻
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子供同士の口付けというには、あまりに官能的なそれはひどく艶かしかった。舌を深く絡ませ、唇を吸い、息を荒げる。
「う……みがみ……さ、ま」
勘助は途切れ途切れに言霊を放り、手元にあった丸石をぎりりと握った。イチは聴こえているやら、いないやら、勘助を食らうように接吻を繰り返す。
紗英の中で、何かが音を立て、血管が開いたように全身が熱くなった。見てはいけないとわかっているのに、楔でもうたれたかのように、紗英は身じろぎひとつ出来ず、勘助とイチの事の成り行きを見守るしかない。
「勘助……」
額同士をぶつけ、手のひらで勘助の頬を、包んだイチは
「少し痛むやもしれぬが…堪えてくれ」厳しい口調とは裏腹に、耳元に優しく言った。
未だ興奮冷めやらぬのか、肩で息をしながら勘助は目を潤ませて二度頷く。
すると、イチは、もう一度、勘助の唇を吸いあげた。ちゅうちゅうと唇が湿った音を、鳴らしていたかと思うと
「ん……んんっ!!」勘助が突然苦しげな声をあげた。
紗英が見れば、口もとからぽたぽたと、一筋の血が流れ落ちている。赤い雫は石を濡らし、そして海水に溶けていく。その様が紗英には、震えるほど恐ろしく、そして水に咲く赤い蝋のように美しく見えた。
イチは勘助のうめき声など構うことなく接吻を続け、時おり、その喉は、こくりと動いた。
「血を……飲んでるの?」
ふいに紗英が発した言葉に、イチの肩が反応した。彼女は勘助の唇を離すと、あごについた血を拭いながら、紗英の方に目をこらした。紗英は肩を震わせる。
イチは様子を伺うように、じっとこちらを見つめていた。先程まで全く気づく気配はなかったのに、どうしたことだろう。
「海……神様、どうしただ」
「ヌシ、何か聞こえぬか」
「いや……なんも」
勘助が呟くとイチは
「そうか……そういうことか」と、息を漏らして笑いながら
「儀式が進んだ故、私にはもののけの声が、聞こえるようになったらしい」独り言のようにそう言った。
そして静かにイチは、まっすぐに紗英を見据え
「誰ぞ知らぬが儀式の最中だ……」
そして、勢いよく言い放った。
「去ね!」
その瞬間、何か得体の知れない力が、全身を突き抜けたかのような衝撃を感じると、紗英は、崩れ落ちて膝をついた。足元の丸石は容赦なく、紗英のひざっこぞうの白い皮膚をむく。
痛みを感じる……辺りの景色がぐるぐると円を描く。紗英はまたも、あっけなく意識を手放した。
しかし、その瞬間のイチの激しい眼差しと、幹太とよく似た勘助の優しい顔立ちは、紗英の目にしっかりと焼き付いた。
「う……みがみ……さ、ま」
勘助は途切れ途切れに言霊を放り、手元にあった丸石をぎりりと握った。イチは聴こえているやら、いないやら、勘助を食らうように接吻を繰り返す。
紗英の中で、何かが音を立て、血管が開いたように全身が熱くなった。見てはいけないとわかっているのに、楔でもうたれたかのように、紗英は身じろぎひとつ出来ず、勘助とイチの事の成り行きを見守るしかない。
「勘助……」
額同士をぶつけ、手のひらで勘助の頬を、包んだイチは
「少し痛むやもしれぬが…堪えてくれ」厳しい口調とは裏腹に、耳元に優しく言った。
未だ興奮冷めやらぬのか、肩で息をしながら勘助は目を潤ませて二度頷く。
すると、イチは、もう一度、勘助の唇を吸いあげた。ちゅうちゅうと唇が湿った音を、鳴らしていたかと思うと
「ん……んんっ!!」勘助が突然苦しげな声をあげた。
紗英が見れば、口もとからぽたぽたと、一筋の血が流れ落ちている。赤い雫は石を濡らし、そして海水に溶けていく。その様が紗英には、震えるほど恐ろしく、そして水に咲く赤い蝋のように美しく見えた。
イチは勘助のうめき声など構うことなく接吻を続け、時おり、その喉は、こくりと動いた。
「血を……飲んでるの?」
ふいに紗英が発した言葉に、イチの肩が反応した。彼女は勘助の唇を離すと、あごについた血を拭いながら、紗英の方に目をこらした。紗英は肩を震わせる。
イチは様子を伺うように、じっとこちらを見つめていた。先程まで全く気づく気配はなかったのに、どうしたことだろう。
「海……神様、どうしただ」
「ヌシ、何か聞こえぬか」
「いや……なんも」
勘助が呟くとイチは
「そうか……そういうことか」と、息を漏らして笑いながら
「儀式が進んだ故、私にはもののけの声が、聞こえるようになったらしい」独り言のようにそう言った。
そして静かにイチは、まっすぐに紗英を見据え
「誰ぞ知らぬが儀式の最中だ……」
そして、勢いよく言い放った。
「去ね!」
その瞬間、何か得体の知れない力が、全身を突き抜けたかのような衝撃を感じると、紗英は、崩れ落ちて膝をついた。足元の丸石は容赦なく、紗英のひざっこぞうの白い皮膚をむく。
痛みを感じる……辺りの景色がぐるぐると円を描く。紗英はまたも、あっけなく意識を手放した。
しかし、その瞬間のイチの激しい眼差しと、幹太とよく似た勘助の優しい顔立ちは、紗英の目にしっかりと焼き付いた。
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